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幸運と不運

ーー「それでだな、話というのは君たちのランクのことだ。」


今僕たちがいるのはギルマスの部屋、そこに座って話を聞いている。


ランクというのはEから始まりD、C、B、A、Sという風に上がっていき、その人の強さを表す、他にもAランク以上限定のクエストなんかもあったりして、このランクを上げることがギルドに属するものたちの目標だ。


「ガリルは既にBランクだが、君たちの三人はEだろ?その上今まで一度も依頼を達成していない。しかしそれが訳ありと言うことも知っているし、今日の件もある、よって君らのランクを引き上げたいのだが、良いかね?」

「もちろんです!」「はっ、はい!」「お、おなじく!」

「それでは早速Cランクまで上げさせてもらおう。なんならガリル、君もAランクに上げようか?」

「俺はいい、こいつらと一緒な時にAになろうと思っている。」


ガリル…やっぱり良いやつだな…。

それにカレンも僕のことを気遣って一日連れ回してくれたし、フレッドも二、三度会っただけの人を助けることに協力もしてくれたし。僕の周りに居るやつは良いやつ過ぎる。


それに…ガリルがA…?そんなの僕たちといるよりソロの方が効率良いだろうに、明日からはじゃんじゃん依頼を受けてガリルに追いつかないとな。


だが、イージスのメンバーがまだこれから先も当分依頼を達成することは無いのは言うまでもない。


「あーそれと、助かった、君らの知識のおかげだ。」

「"ら"じゃなくて、トオルの知識だ、なあ?トオル。」

「え、ええ、まあたまたま知っていただけです。」

「そうか、それはすごいのお、ガハハ」

「それじゃあ、マスター、失礼します。」

「おうおう、明日こそは依頼を達成してくれよな。」


ーー「あー腹減ったー」

僕らは宿まで帰ってきた。昼を食べそこねた僕たちはしばらくそれどころじゃなかったので空腹を忘れていたが、いったん落ち着くとそれらの波が一気に押し寄せてきた。


「おばちゃーん、晩飯四つー」

「あいよー。」


「ところでさー僕たちってさ、ホントに依頼を受けてないじゃん?明日こそさ行こうぜ?」

「ああ、もちろんだ。」

「ええ、そのつもりですわ。」

「だな?」 


だが生憎、僕たちはしばらくの間まともにクエストを受けることが出来なくなるなんて、この時はまだ思いもしなかった。


ーーー「ん〜朝だ〜」

僕の目が自然に覚めると外では小鳥たちがさえずっていた。時間からして朝ごはんには一時間近くあるだろう。自主練のでもするしかない。


「うーん上手く出来ないな…」


僕は今、所謂新技を開発していた。その中でも有用だったものをいくつか紹介する。


まず、野球作戦、バッドとボールを作って一人で打つ。結果から言えば、飛距離は今のところ断トツだが、実用性は皆無だった。ボールがまっすぐとばない。


次に矢と弓、これは、まともに矢を使える人しか使いこなせないのを忘れて試しただけに終わった。


まだこれらは良い方でほかは軒なみひどいものだった。


ーー「トオルーー起きてるー?ご飯だへにいこー」


この声はフレッド。今日が初任務なので緊張の反面楽しみでもあるらしい。


「おっす。トオル。」

「おはよ。ガリル、フレッド。」

「おはよう!」

「カレンは?」

「先に下行った」

「おう。」


僕らは階段を下りもはや見慣れたいつもの食堂へとたどり着く、そこには既にカレンが座って待っていた。例の事件以降、机の配置が変わってから、もはや指定席の、四列のうち右側の奥側四席、そこがイージスの早朝作戦会議の場だった。


「早く座りなさいよ。」

「おう、おっす。」


今日の朝ごはんは焼き魚のようだ。いつも通りの安定感。


「それでさー今日は何する?採集?討伐?」

「ん、なんだ、トオルはてっきり討伐やりたがると思ってたんだが。」

「いや、まあ、さ?」

「私も討伐で良いわよ。」

「ああ、俺もだ。」


賛成するカレンとフレッド、流れでそのまま討伐依頼を受けることになった。


その日の天気は快晴、十月上旬としてはそれなりに暖かかった。きっと地球で言う赤道に近い位置にこの街があるか、たまたまか、どちらかだろう。


ーー「うそぉ…」

「いや、これは、なんとも…」

「ああ、これは、ひどい…」

「なんでなの?」


昨日と同じくらいの時間にギルドにやってくると、そこには一枚の立て札があった。


「只今改修工事中、しばらく休業いたします」


「いや、これは、どうするべきなの?ガリル。」

「俺が聞きてぇよ。」

「ねぇ!フレッド!中見てきてよ!」

「そうよ!それが良いわ!」

「いやいやいや、だめでし……はい、見てきます。」


三つの視線によって半ば無理矢理押し込められたフレッドは数度の瞬きよりも早く帰ってきた、


「これは、しばらく無理っぽい。」

「え?どうなってたんだよ」

「何もない……」

「え?」


カレンはその声を発しながら中を覗き込む、そこはただの空虚な空間が広がっているだけで、何もなかった。


「こうなったら、自主的に何かするか?」

「狩りに行こうよ」

「俺も賛成」

「私も〜」


僕らはその足でそこから一番近い門へと歩を進める。


「なんだこれ…?」

その門の周りでは兵士、一部には騎士も見受けられる、が忙しなく走りまわっていた。


これが三日間にも及ぶ壮絶な日々の始まりだなんて、誰一人として予想することが出来なかった。


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