起きうることはいつか起きる
「くそやろう!帰ったらまたケーキ食べに行こうって一番楽しみにしてたじゃねーかよ!なんで…なんで…お前が…僕を庇って…。」
「そう落ち込まないで?トオル、彼は私たちのヒーローよ?彼が居なかったらトオルだけじゃなくて私だって……。」
そんな悲しい顔をするなよ、カレン、今度は僕が君を慰めないといけなくなるじゃないか、泣きたいのはこっちだって同じなんだよ!何で死んじゃうんだよ…クソやろう。
僕があんな依頼選ばなければ……。
ーーーーー朝食の後ギルドに向かう幸運にも晴れ渡ったの空はまるで僕らの心を表しているようだった。なんて言ったって、僕らの初陣なのだから、きっと戦国武将やどっかの皇帝も初陣はこんな気持ちだったのだろうか。
「おし、じゃあ、最初はやっぱり採集系だろ」
「なんでだよ?もっと派手な、討伐のクエストとか、ほらこれなんて!格好いいじゃん!依頼主…黒髪の白雪?なんだこれ偽名か?」
「怪しすぎるだろ?熟練者の俺に任せて最初は採集系をだな……。」
「せっかくの僕らの初陣だよ?どうせだしさ?」
しばらくの押し問答の後、ガリルが折れる形になってこの討伐依頼を受けることになった。報酬は金貨一枚、なので僕たちは一人銀貨二十枚ということだ。
やはり討伐系はそれなりの危険を伴うため報酬もそれなりに貰える。
「はい。では受理いたしました、お気をつけて。」
僕らはそのまま討伐対象のいる、ここから北に馬車で一時間、ヘルトスの森へと向かう、なんでもそこに住んでいる人からの依頼で狼を一頭退治をするだけの簡単な依頼だ、これで金貨一枚は破格というやつだ。
馬車に揺られて一時間、森の入り口に到着する、馬車の運転手にはここで待ってもらうよう伝える。交通費は依頼人から別途貰えることになっているので、さして急ぐ必要は無い。
念のため辺りを警戒しながら、道と言うべきかどうか悩むような場所を歩くこと五分、そこには開けた場所と一軒のロッジが有った。
「ごめんくださーい。ギルドのものです。」
ドアが開く、中から出てくるのは、黒髪の女性、そう言えばこの世界ではやっぱり黒髪は少ないらしい、実際カレンは茶髪でガリルとアレックスは金髪、フレッドはやや黒みかがった茶髪だ、全員地毛らしい。
「あーあなたが依頼主のかたで間違い有りませんか?」
「ええ、私が黒髪の白雪です、それより、ここでは何ですから、中へどうぞ。」
ガリルの話し方はいつもと違い、仕事モードになっていた。
ーー「なるほど、最近狼がこの家の裏の畑を荒らしているということですか…」
僕らは食卓の椅子に座りながらこの女性、おそらく二十代位の話を聞いていた。
「あ、そうだ!お茶もお出しせず。ごめんなさいね!」
そう言うとキッチンの方へ行き紅茶を淹れ恥始める。うわ、まじか、僕、紅茶飲めないんだよね。超苦手…。
「どうぞ。」
依頼主を含む六つのカップがテーブルに置かれる。どうも、なんていいながらすぐに口をつけるガリルとカレン。
「美味しいで……」
「飲むな……。」
そう言いながら二人は気を失う、まさか即効性の睡眠薬が入っているなど普通は想像しない。
「へぇ〜君たちは利口だね〜」
先ほどまでと女性の態度が一変する
「おい、おまえたちやっておしまい。」
奥の扉から三人の男たちが現れる、対して玄関からは四人、完全に逃げ道が消えた。
冷静に考えて見ればおかしいことに気づく、そもそも、狼討伐なんて五人で受ける依頼じゃない。それに報酬が金貨一枚なんて高すぎる、たった一頭の狼と釣り合うわけがない。それにこの家、なんで一人暮らしの女性の家に六人が座ってもまだ余る椅子があるんだよ、そもそも、森の奥にこんな若い女性が何のために……。
後悔の念が頭を駆けめぐる、自分がやりたいといったせいだ、ああ、どうする。
「アレックスさん!フレッド!」
「ああ、わかっているわい」「なんとかするしかないようですね」
僕は昨日会得した技、今までは球体だけだったが今では剣先の形にすることも出来る、それに四つなら十秒ほど維持できるようにもなった。
「くらぇっ!」
僕は四つの短刀を後方の四人に加える、二人にはよけられたが二人は倒した、追撃を加えれば行けるだろう。
フレッドはいつも通り姿を消し前方の三人のうちに一番左の背後に忍び寄る、そして刺す、彼は彼自身と彼の触れているものを消すことが出来る。そのため相手はすぐに刺されたことに気づかない、何故なら最初は出欠したことに気づかないから。
次にアレックス、彼は例の大盾を作り出しながら右側の男に突進する、彼の相当な量の筋肉によって創り出される突進は、攻撃は最大の防御、いや防御は最大の攻撃といった具合だ。
僕はそのまま第二波、今度は二つを消し、二つだけを残す、形を槍へとかえ、緩急をつけて突き刺す。なんとか当てることが出来、一人は完全に行動不能、一人は僕が自ら殴ってとどめをさした。
だが、これが最悪のミスだった。二人が完全に無防備な状態だった。戦いの中で距離はそれなりにとられていた僕らとその元依頼者の女の距離。しかし、女が遠距離攻撃系の異能者だったことにより、それは全くの無意味と化した
「ふんっ、そいつらは囮だよ!馬鹿め!」
彼女が床に倒れ込むと同時に彼女の手から、おそらく全力を注ぎ込んだ一筋、一筋のと言うにはあまりにも太い光線がたれる。僕の能力じゃ簡単に防げそうにない。少しでも近づく必要がある。
僕の能力は大きな弱点がある、それは、距離の制約が大きいことだ。本来遠距離攻撃系に分類されるだろう、この攻撃も精々十メートルが限界だ。それ以上離れれば一般人ですらよけれる。初速は速いが減速も速い、そんなところだ。なおかつ、一度高速で撃ち出したものを方向操作することは不可能に近い。
また形質変化させたときの性能、例えば切れ味や強度も距離によるとこが大きい。
だから僕は今出し切れる全力で倒れる覚悟で、二人を救う。直径はあの光線と同じ三十センチ、光線の発射前に動き出したことと、見た目ほど光線が速くないこと、眠らしたのはそのためだろう、実際幼児のある速度よりも遅い。僕はなんとか二人を庇う形で前に立ち、手のひらに密着させて、盾を作る。無理だと分かっていても。
「トオル、おまえにゃ無理だ。俺が止める。」
「そんな、いくら僕でもわかるよ!あの人はそれなりに強い!そんな人の全力を!」
「おまえらは俺のことを仲間って言ってくれた、だから俺はおまえたちを守んなけりゃなんねぇ、俺の大事な人の言葉だ……」
「アレックスーーー!!!」
アレックスの姿が見えなくなる…その骨を残して……。




