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異世界ギルドは当然歩合制  作者: Whale
一切れのケーキ
11/20

雨の日の朝

ーーーーー生憎の雨だ、今日でカレンがギルドに入ってから三日目、僕が入ってから四日目だ、幸運にも先の事件のおかげでお金には困ってはいないが退屈でしかない、近くの体育館は雨のせいで子供たちの遊び場になっていた、そのおかげで僕らも易々と異能を使えないから仕方なく部屋で自主練をしたりおしゃべりしたりしていた。


コンコン


珍しく早起きして異能の特訓をしているとドアがノックされる、朝に弱いカレンが小鳥のさえずり、雨のせいで最近は聞いていないが、すらも聞こえない時間に起きてくるはずもない、だとするとジェームズが遊びに来たのか?雨のせいで仕事がないと嘆いていたし。もっともガリルは今この街にはいない、今日の昼前に帰ってくるらしく昼ご飯はレストランで食べようと約束していた。


コンコンコン


「今出るよ。」


ああ、ジェームズ、そんなに急かすな、分かったから


コンコンコンコン


だからどうし…


「動くな坊主、動いたらその首から上が消し飛ぶぞ」


ドアを開けるとそこには、この宿「梟の止まり木」の女主人エルザさんと三人の明らかに堅気の人間じゃないような、手から何かを出している、恐らく異能者たちが佇む。ああ、これは強盗だろう、ここは三階だし二階の人たちはすでに人質として他の仲間が見張っている、そんなところだろう。


僕は精一杯非力な人間を演じる。昔から世の常として、疑心暗鬼の集団じゃ、強いやつから除け者にされていく、この世界のマイノリティの異能者を先に消した方が彼らも楽だ、だから僕は非力な一般人を演じる。


「は、はい!えーと、あの、い、命だけは…」


「いいからとっとと出て来い、腕を頭の上に置け、変なまねしたら……この俺様が直々に送ってやんよ」


恐らくこいつはリーダーじゃない、精々ナンバーツーだ、恐らくこの二倍は居るであろう集団をこんなやつがまとめられるはずがない。そう確信した僕はリーダーを探し、仕留めなんとかこの状況を打破するため一時的に従うことにした。


ーー新しく階段を登ってきた男に両の腕をつかまれながら食堂に連れて行かれる、そこにはすでに宿の従業員と客が合わせて十人以上部屋の真ん中に座り込んでいた。恐らく机と椅子は玄関のバリケードにでもつかっているのだろう。


「座ってろ餓鬼が」

「は、はいっ。」


時計回りにこっそりあたりを見渡す、そこに居るのは、まず窓際に三人、入口に二人、壁際には誰も居ない。厨房前には一人、それとさっきの男と途中ですれ違った男、それにあの三人を合わせて十人、若しくはそれ以上だ。


その大半は異能者だと考えられる。現在人口の一割強は異能者だとガリルが教えてくれた。わざわざ悪事を働くために集められた奴らが全員異能者でも有り得なくはない。


この数はまず無理だ……


恐らくこの宿に居るのは三十人ほど。その内戦力になるのが、僕とカレンを含めて精々四人居ればいいだろう。


四人対十人でしかも顔見知りでもない奴らが連携をとって制圧できるだろうか、いやできない。ここはしばらく待つしか無いな。


ーー体感で十分ほどたつ。この部屋には大きな掛け時計があったのだが強盗たちが外したのだろう、というか強盗なのか?あの人数なら寝静まった僕らをすぐさまに殺しきることだってできたろうに、いったい何者なんだ……?


カレンがこの部屋にやってくる。怖くて震えているのだろうか、こちらに近寄ってくる。


「ね、ねえ、トオ、ル、あの、ね、あの、」

「大丈夫だから落ち着け、な?」


この天候が功を奏す、小声ならこの会話は奴らには届かない。


「あ、あのね、さっきね…目があったの……。」

考えてみれば、少なくとも集団で犯罪を犯している彼らに何の理由も無いと考える方が不自然だろう。特に人質を集めて立て籠もりか何かなのか?こんな状況になるのは決まって目的があるときだ。


「何が見えた?」

「この人たちね…この国のやり方に満足してないらしいの…それでね…」


ああ、そう言うことか、いつの時代もこういう奴らか必ず現れる、国に不満を持った奴らだ。大抵は失敗するがその時人質が全員無事とは限らない、まずい。かなりまずい。


しかもこいつらは異能者だ、武装しているようなもんだ、頭に突きつけてある銃の引き金を引くだけなら素人でも出来る、こいつらを、刺激するのは危険すぎる。


ーーさっきの三人のうち二人以外はこの部屋に集まる、恐らく見張り役か何かだろう。だが彼らにとっては幸い、悲鳴を上げるものも反抗するものも居なかったためこの街はいつも通りの夜明けを迎える準備をしていた。  


「おい、お前らよく聞け」 


リーダー格の男が強まった雨音を掻き消すように大声で話し始める。


「俺たちは反国家同盟、レガウスだ。この宿は俺たちが占拠した。命が欲しくば、おとなしくしてやがれ。」


そう言うと左手から何か液体を生み出す。その、空中に漂う、一滴の半透明な液体は重力に則って床に落ちる…


さっきまで木板の床があった場所には穴が開いていた、強酸性の液体だ、触れたら無事じゃあすまないだろう。横に居るカレンの震えがまた始まる。


「大丈夫、大丈夫、落ち着いて?」 

「う、うん。」


本当に落ち着きたいのは僕の方だ。これじゃあ、誰も抵抗できない。


「俺が本気を出せば人の一人や二人簡単に消せるんだよ?分かったな?」


ーーあれから日が昇り、本来なら朝食を食べているような時間になった。いつもなら慌ただしく生活音が鳴り響くこの宿で聞こえるのはすすり泣く声や絶望にうちひしがれた人間の溜息ていどだ。


「ねえ、ねえ、トオル」


カレンが小声で話し掛けてくる。


「どうしたの?」

「異能者…見つけたの二人。」

「そりゃそうだろ。こんな子としてくる奴らの中にいない方が……」

「違う、私たちの側に…さっき目が合ったときに見えたの…」

「どういうことだ?」

「その人ね、異能者であること隠してるの…そこの、筋肉がすごい人…それとね、そこのめがねかけてる…人」


それにしても隠してるってどういうことなんだ?


「隠してるってどういうことだ?」

「断片的にしか、見えなかったんだけど、昔…大事な人を…その力で救えなかったらしいの…」

「もう一人は?」

「その能力のせいで昔裁判にかけられたらしいの…」


なるほど、協力を仰げるだろうか、難しそうだが、頼んでみる価値はある、ウィリアムスさん見たいな強力な能力ならばこの状況を…打破できる!!











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