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episode38-1『ナガレ』

episode38-1

『ナガレ』



[part1]


喫茶店Point nemoに帰還し、再び各自が休息タイムに入る。その中でソラは自室のゲーミングチェアーに座り、3枚のモニターに囲まれながら、SNS『WHITE』を閲覧している(ネットは更新してない為、アーカイブのみ)。


オススメ欄に載ったのはダブルチーズバーガーの写真と一言のポスト。


『っぱダブチよ』


いいねが2200以上はついている。このポスト主のアカウント名は『カプチーノ』。

ソラは検索ボックスに『カプチーノ ダブチ』と入力する。するとカプチーノと言うアカウントに対してのコメントが浮かび上がる。


『カプチーノさんって絶対『おじ』だよな』


『わかる(笑)絶対早死にするわ』


『カプチーノさんはイケメンに決まってるだろ!なぁ?そう言ってくれよ!』


『あいつV豚やろ……』


そんなコメントを流し見しているととあるアカウントのコメントが。



『カプチーノって奴なんでこんなに有名人なの?私なんか毎日投稿してるのに伸びない……』



そのアカウント名は『yuki|ていねいな暮らしを発信中!』


ソラは特にプロフィールへは進まなかった。


ソラはパソコンを落として部屋を出る。廊下に6部屋が用意されてるが……現在は1部屋、ウミしかいない。ツカサもナギも、もういない。


階段で1階店内に向かうとnullが……スマホを弄っていた。


ソラ「え?」


ソラは一瞬、光景に戸惑った。普段、nullはコーヒーを飲む以外は何もしないからだ。


nullがボソボソ呟く。


null「20xx-5より先、つまり20xxまでのおいしい情報がごっそり消えている……」


ソラは反応。


ソラ「それって原因わかります?」


null「不明、ただ情報がない」


null「『しあわせさま』や『祝福の天使』に関するポストや情報があるかなと思ったケド……流石にネットは汚染でダメになってるのかも」


nullはスマホの画面を消す。


null「そう都合よくいかないか……」


ソラ「…………」


ソラは黙っている。すると。


null「あ、そうそうフィードってあるじゃん」


ソラ「フィード……ですか?」


null「うん。そ。あれなんなの?特定のアルゴリズムに反応してポストに載るんだけど……」


null「正直、刺激を誘発させるコンテンツ……ドーパミン中毒、いわばドパガキのポストしかないんだけど……」


ソラは考える。


ソラ「それがフィードに載りやすいからじゃないですか?」


null「じゃあフィードに載るアルゴリズムなら?例えば『あ』とか『い』とか『う』とかで載るの?ロジカルじゃない」


ソラ「null君には向いてないですよ」


null「だろうね……」


nullとソラが話していると階段からウミが降りてくる。


ウミ「なんの話だよ……」


null「フィードの話」


ウミ「SNSか?あんなの見る必要ねーよ。まあ昔は見てたが……」


null「でも一応情報じゃん……」


するとウミはテーブル席に座り語り始める。


ウミ「アイツらは承認欲求オバケか商業の臭いがするポストしかないよ……見てもストレス溜まる一方だわ!」


null「OK。見る価値無しっと」


ソラ「あー……面白い人もいますよ!面白い人!」


null「でもフィードに載らないでしょ?それじゃ観測してないのと同じ……」


ソラ「それは……」


null「フィードって神様みたいだね……その気まぐれで人の声を選別できるんだから」


それに対してウミは反論。


ウミ「SNSなんか所詮人間が作ってる……そんな神とか高尚なモンじゃねーよ……」


null「ほう……」


nullは納得した。




そして次の日。


喫茶店に集まるいつもの面子。recefiaは厨房の掃除をしているようだ。


null「様々なDDは回収してるとはいえ、しあわせさまへの情報が少ない。だから今回はちゃんと探索をしようと思う」


ウミ「最近は迷い人達で精一杯だったからな……」


ソラ「…………」


nullがソラとウミに1つ忠告をした。


null「迷い人を助けるのは僕達の仕事、いわば君達の性能を強化できるきっかけなので勿論助けるに越したことないけど……本命は……君達を脱出、しあわせさまの阻止、人類の再建ということを最優先事項だからね」


ウミ「……わかってる……流石にもう何回も経験してるから……な」


ソラは震えている。


ソラ「…………null君は……」


null「?」


ソラ「私達以外は……優先度が……低いんですか?」


null「…………」


ソラ「平等……は……難しい……ですよね?」


null「……トリアージって言葉があるからね。ま、君達がホームレスになるなら別に店の存続を無視してもいいけど」


ウミ「確かに……無理だな」


ウミは複雑な表情を迎えた。


コーヒーブレイクを終えるといよいよ外の世界の探索へと向かった。



[part2]


『深度1・夜の集合住宅(マンション等)エリア』



null達3人は高層マンションが密集するマンションの中庭に佇んでいた。時間帯は夜だが街灯が多く、オレンジ色で暖かい印象を受ける。マンションの照明もオレンジ色で統一、宝石のように輝いている。

しかし、人影らしいものはいなかった。


ウミ「何階建てだろう……10階以上はあるな」


ソラはこの光景を写真に写した。nullが前と歩く。


ウミ「ちょっとよ……?まさかこの建物群の部屋全部見るってか?」


null「できれば見たいけど……まぁ黒いノイズの痕跡がある所だけでいいんじゃない……?」


ソラ「DD(ダークデータ)ですね……」


3人は中庭の公園を探索する。池やベンチ等の休憩場やテニスコートなどを発見したが特に情報などはない……しかし。


ソラ「……あれ?……あれなんです?」


ソラが上空に指を差した。


漆黒の空に白い小さな点が浮遊している。動いている様子はない。nullも確認。


null「UFOじゃない?」


ウミ「はぁ……こんな世界でもいるのかよ……」


null「冗談だけど」


ウミ「わかってる」


とりあえずその点を無視してマンションのA棟へ侵入。エントランスを抜けてソファーのあるラウンジへと進む。照明はついている。

null達はエレベーターのボタンを確認。20階に黒いノイズの痕跡。


ウミ「エレベーターって良いイメージねー」


文句を呟くウミ。


null「確かに……」


エレベーター内に入り、20階へと上昇。問題なく廊下へとたどり着いた。

廊下は奥行きがかなりある。null達は黒いノイズの痕跡を頼りに部屋を選別。怪しいのは2014号室。


null「開けるよ?」


ガチャン。


複数の部屋があらわになる。そこそこ裕福な家の間取りともいえた。


null「相場1億超え……かな?」


ウミ「いい家じゃん、間取りはどーでもいいけど」


ウミの言う通り、一般的なLDKの間取りに更にパーティールームやシアタールームなど娯楽施設が多い。


ソラ「すごいですね……リビングから夜景がこんなに……」


nullは窓ガラスに近づく。辺りはかなり都会で夜景が一望できる絶景スポットだった。


null「エモいじゃなくて……なんて言うんだっけ?」


ソラ「チルい……です」


null「あーそうそう」


ウミも夜景をじっと見つめるが……。

夜空に白い点が2つに増えていた。


ウミ「UFO……2つになってんぞ?」


nullも確認。


null「ホントだ」


ソラ「……なんでしょうね……」


警戒しながら部屋を探索。黒いノイズの痕跡は浴室に向かっている。



「ソラさん、ソラさん」



寝室から若い男性の声。


ソラ「!?」


その声はドア越しに聞こえる。ソラとウミは硬直。nullは寝室付近へ近づく。


null「ウミ……このドア……開けるけど。どうする?」


ウミ「……よくない」


ソラ「?」


ウミ「俺達は離れる……null……確認できないか?」


null「おー人柱……」


ソラとウミは一旦、リビングへ待機。窓から夜景と夜空を眺めていたら……


夜空に浮かぶ白い点が3つになっていた。


nullは少し寝室から距離を取り、黒い手を生み出し、ドアを少し開けた。


ドアの隙間から『宇宙』が見えた。nullはすぐに閉める。

リビングに向かいソラ達と合流。


ソラ「大丈夫ですか?」


null「寝室に宇宙が発生していた」


ウミ「は?」


null「本当なんだからしょうがない……アベンド『声かけ』だね」


ウミ「まーた新種かよ……で対策は?」


null「声に反応せず、開けないだけ」


ウミ「わかった」



そして今度こそ浴室に向かった。


浴室は真っ暗。いやロウソクが数本、床に立ててあった。そして薄っすら見える赤い文字。


ウミ「この赤……ペンキとかじゃねぇ……」


ウミ「……血だ」


ソラは少し不安げになる。


ソラ「血文字……」


nullがライトを生み出し、血文字を確認。明かりで照らすと血文字というか何かの記号であった。


null「五芒星……」


血で描かれた星印のマーク。そしてロウソク。星印はかなり分厚く描かれており、血は壁や浴槽にも付着している。


null「これ、致死量を超えてる量だね……」


ウミ「マジかよ」


ソラが五芒星を撮影すると……。


ソラ「黒いノイズが見えますね……」


null「それ、DD」



DD

『犠牲と降臨』

伝承型、画像ファイル

・ケーキと豪華な食事が並ぶダイニングテーブルで家族が笑い合っている写真

・父親、母親、娘の中で『父親』に赤丸がついている

・浴室の赤い血で描かれた五芒星が写る写真、写真の裏面に文字

『祝福のために』

『降臨』



null「あー……赤丸はそういう意味……」


ウミが頭に手を当てて考察を始める。


ウミ「『祝福の天使』って奴に人類が崇拝してる絵画(episode26参照)があったはずだ……それと関係が……」


null「降臨……犠牲……降臨の為に……人柱……?お父さん大黒柱なのにね……」


ソラ「『しあわせさま』の降臨……人類を笑顔にする……『祝福の天使』……人類が崇拝……似てますよね……」


null達は再びリビングへと戻り、考察を始める。


null「『小規模汚染』(20xx-5)、

小規模汚染に抵抗できるデマ『ひとりかくれんぼ』(20xx-3)、

人類を精神疾患へと貶めた『ばいばい病』、

ばいばい病を紛らわせる飴『キャンディスペース』、

人類が崇拝した『祝福の天使』、

そして人類を滅亡させた『しあわせさま』」


ソラ、ウミ「…………」


null「しあわせさまによって滅亡した人類の思念がDDSに流れて……大量のDD、大量のアベンドで飽和……


そしてDDを構成するグリッチ因子が過去の時代、つまり20xx-5に放流されて人々がグリッチ因子所持者になる……


それらが迷い人としてDDSに囚われる……その迷い人達がツカサやナギ……」



ソラとウミはリビングのソファーに座り、nullの話を黙って聞いている。


null「つまり、最初の起点は『小規模汚染』……汚染による心臓麻痺兼、表情は笑顔」


ソラ「『しあわせさま』も人類を笑顔にして、人類滅亡させたんですよね?」


nullは頷く。


ソラ「やっぱり、小規模汚染としあわせさまの降臨は同一の存在……だと思います」


null「その可能性が高い」


ウミは足を組んで長考。


ウミ「しあわせさまが降臨する前の前兆が小規模汚染だろうな……そっから全てが狂った」


ソラは手を組んで首をウミに向ける。


ソラ「『祝福の天使』、祝福への崇拝ってなんでしょう……?」


ウミはソラの質問につまづく。小難しい表情だ。


ウミ「……ちょくちょく……しあわせさまが人類から見えてたんじゃね?んで見た目があの絵画通りなら……天使って呼ぶだろうよ」


nullは1つの推測を提案する。


null「つまり、小規模汚染に怯えた人類がしあわせさまを確認したことで『得体の知れない天使』の信仰を始めたってこと?命乞いみたいな?」


ウミ「まあ、そーゆー考察もできる」


null「じゃあ、行き過ぎた信仰で今回のDD(犠牲)みたいな事を人間が発生させたって意味?」


ウミ「…………」


ウミは険しい顔になる。nullは少し間をあけて呟く。


null「信仰ってなんだろうね……」


ウミ「俺が知るかよ」


ソラは少し俯く。


ソラ「20xx、私達の時代は……みんな何を考えていたのでしょう……?」


ウミ「ああ、そこが大事かもな」


考察を終えてリビングを離れ、玄関を開けた一行。オレンジ色の廊下に遭遇した時、変な違和感を感じた。


ウミ「同じ、廊下?」


最初に違和感を感じたのはウミ。そこからソラやnullも同様。ソラは周囲の、特に部屋のプレートを確認。


ソラ「!?15203号室!!?」


確かに『15203』『15204』『15205』と次々と数奇な数字が並んでいた。


ウミ「いやいやいや!これじゃ152階ってことじゃん!!」


null「え?ドバイタワー?」


ウミ「タワマンだぞ!?」


少し呆れたウミ。null達は廊下内(建物の中心部に廊下がある)である為、外観がわからない。


null「とりあえずドアを……(ドアノブを回す)……開かない」


ソラもウミも手当たり次第ドアノブに手をかけるが開かない。


ソラ「これ、どうやって建物から出ますか!?」


null「…………」


ウミ「いや、まだある」


nullとソラはウミが指を差した方向を見る。


null「屋上……」


ウミ「屋上……ビル風大丈夫か?」


null「まあ現世じゃないし……」


null達は階段で屋上へ向かった。



[part3]


屋上。その高さ、地上から約575m。不思議と風は無風。夜景は網目状に輝いている。ソラは興味津々に撮影。


ソラ「ヘリコプターで見下ろす感じですね……」


ウミ「……え?」


ソラはウミの反応を瞬時に理解して慌てて話を濁す。


ソラ「あー!あー!!テレビで見た光景ですよ!!?」


ソラとウミのトークを無視してnullが上空を見上げた。


null「白い点が……5つ」


ソラ「え?」


null「増えてる」


3人は上空を見つめ続けた。すると漆黒の闇の空に白い点と点に白い線が結ばれた。線の向きは斜め。


null「……?」


ついにウミが痺れを切らす。


ウミ「やっぱヤベー奴じゃね?解析してくれ」


nullは面倒くさそうに解析を始めた。


null「レセプション(解析)。

観察行動……白い点が徐々に増える。更に線が追加」


null「次に交流行動。まあ無理」


null「洞察行動……時間経過で何かを形成?してる……?」


すると白い線が更に空に描かれる。今度も点と点を結ぶように。形にはV字を45度傾けたような白い線。


null「……わかった」


ソラ「null君?」


null「これ最後、線が全て結ばれて五芒星になる」


ウミ「五芒星……星の形か?」


null「うん……ウミ……一旦、直感を研ぎ澄まして?」


ウミは目をつぶる。すると鳥肌が立つような感覚に襲われた。


ウミ「寒気がする……!まずい!」


nullは淡々と話を進める。


null「解析結果。非実体型アベンド『五芒星の印』。この五芒星が完成すると……」



null「『このエリアごと破壊される』」



ソラ、ウミ「!!?」


null「不可侵領域で耐えられるけど、その場合、五芒星は一からやり直し……そして再び完成すれば……」


ウミ「なるほど……」


null「思い残した事はある?このエリアに……」


ウミ「全然あるわ!」


nullは頷き、屋上から下へ続く階段へと進む。


null「まさか、情報のトリアージが発生するとは……」


nullがぶつぶつと呟く。ソラはカメラを構えて痕跡などを確認する。


ソラ「(撮影)階段に痕跡、これ人の痕跡!?」


ウミ「人!?誰が!?」


null「……あ、それ新たにDDSに落ちた人、迷い人」


ウミ「迷い人!?なら!すぐに!」


null「…………」


nullは黙り込んでいる。どこか長考をしているが決断をする。


null「人命救助をしよう」




episode38-2に続く

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