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episode34『彼岸』

episode34

『彼岸』



[part1]


『時は遡り、ツカサに出会う前のクモリの物語』



15歳程の女の子で黒髪ショート、黒いロングパーカー、ロングスカートという非常に地味な格好をしている彼女……クモリは神社と墓地、無数の彼岸花が咲いている不思議な場所で立っていた。


時間帯は深夜。周りは墓地だらけ……。


クモリ「はぁ……」


どこか疲れ切った表情をする。


クモリ「ここ……どこ?」


墓地辺りは街灯のみ。しかし、前方は神社が見えてそして……祭囃子が聞こえていた。


♪~♪~♪~


クモリは前方を注視するとかなり煌びやかに境内が光ってる。色はオレンジ。


クモリ「こんな時間に祭り?……苦情来ない?」


彼女は黙々と前と進む。そして境内へ侵入。


境内へ踏み込んだ途端、甘辛いソースの匂いと焦げた砂糖の香りが鼻をくすぐった。屋台が立ち並ぶ参道は煌々と提灯に照らされ、確かに祭りの賑わいを感じさせる。しかし、人の姿はどこにも見当たらない。

祭囃子はスピーカーから流れていると推測したクモリだが実際はもっと斜め上だった。


クモリ「上?……アレ?……アレから?」


上空に100mクラスの山車(だし)が宙に浮いて月夜がある空を泳いでいた。そしてその山車から祭囃子が聞こえてくる。


♪~♪~♪~


クモリ「でっか……」


思わず圧倒してしまったクモリ。それと同時に満月が空を明るくするほど輝いていた。


♪~♪~♪~


山車が地上付近まで接近してきたが、やはり人はいなかった。


クモリ「勝手に動いてるんだ……」 


しばらくするとまた空高くへと飛び立つ山車。


ヒューン!バァーン!


突如花火が始まった。カラフルなスターマインが夜空を彩る。クモリはぼっーと花火を眺める。そして長考。


クモリ「私は……何者……?」


誰もいない神社で自分自身を見つめ始めた。


クモリ「そもそも……人?……それとも……」 


彼女は自分の身体を調べる。


クモリ「身体がノイズ……実体がない……」


「アベンド〜」


クモリは首を傾げた。上空を見つめ直すと黒い小柄のうさぎが楽しそうに泳いでいた。先程の発言の主だ。


クモリは思わず話しかけるが……無視されてしまった。


クモリ「愛想悪……」


クモリは一通り屋台を吟味する。焼きそば屋、たこ焼き屋、カステラ屋、金魚すくい、りんご飴、綿あめ、フランクフルト、焼きとうもろこし……全てのれんでしか表記がなく肝心の食材は一切ない。


クモリ「匂いはするけど食べ物ないじゃない……」


ぶつぶつと文句を呟く。花火の低い音が身体の芯に響く。


「成れ果て……」


やけに渋い声が下から聞こえた。


クモリ「ん?」


その正体な黒猫が参道の隅から呟いた言葉だった。


クモリは猫の視点までしゃがんで声をかける。


クモリ「何か知ってる……?」


黒猫「…………記憶の成れ果て」


クモリ「……?私が……?」


黒猫はどこかへ去ってしまった。


クモリ「はぁ……」


どいつもこいつも……という感情を抱きながら周囲を見渡すとやはりあちらこちらに彼岸花が咲いている。


♪~♪~♪~


祭囃子が楽しげに響いてくる。ここが楽園のように。

クモリは屋台地帯を後にして境内の奥へ侵入する。地面に汚れたカレンダーが落ちている。


クモリ「9月……今日、十五夜……?」


月が輝いて見えるのも納得するクモリ。そして彼岸の時期。


「ハッハッハッ!!」


どこか息遣いの荒い声が聞こえる。人の声ではない。

……正体はすぐに判明。黒い大型犬だ。よだれを垂らしながらクモリに近づく。


「ハッハッハッ!」


クモリに飛びかかる大型犬。めちゃくちゃテンションが高い。クモリは適当に躱してやり過ごすが……諦めて大型犬の頭を撫でた。


クモリ「…………」


大型犬は満足してまた闇に消えてしまった。


花火はまだ終わりそうにない。


クモリ「神社の建物……社殿だっけ?入るか……」


彼女は御神体があるであろう本殿へ向かった。



[part2]


予想はしていたが……予想通り。とにかく神聖な物が祀られている。


クモリ「私、神社とかよくわからないんだよねぇ」


どこか諦念のような様子を見せるクモリ。しかし、本殿から一際、特徴的な物を見つける。


クモリ「え?……仏像?……なんで?」


金色の仏像が安置されている。


クモリ「なんでここだけ日本ぽくないんだろう……?」


クモリは手に触れる。仏像は温かい。


すると……。クモリの視界が本殿から病室のような部屋へと変貌する。


クモリ「なに?」


簡素な病室というより、清潔かつ掃除が行き届いたシックな部屋、もっと言えば誰かの個室にも見えた。

そして無数の黒いノイズ。ベッドやベッドに置かれたスケッチブック、ドア付近、テーブル付近とその近くのオモチャ。

1つずつクモリは調べに行く。


DD

『ここが世界の全て』

思念型、動画ファイル

・ベッドの上にポツンと座る白いワンピースの金髪少女

・あまり健康そうには見えない

・少女は虚ろの表情

・少女は呟く。

少女「この部屋で最期を迎えるの……?」



クモリ「この子は……?」


次はスケッチブック。



DD

『四季巡る』

思念型、画像ファイル

・スケッチブックの中身、ページは大きな木のイラスト。

桜の木であり、春は花が咲き誇り、夏は緑、秋は赤く染まり、冬は枝に雪が乗っている。

……そんなイラストを延々と描き続けてある

・スケッチブックの端にはカウント数が刻まれている。

『あと5回』

ページをめくると、

『あと4回』、『3回』、『2回』、『1回』

・最後のページ

イラストはなく文字だけが……。

『死にたくない』

・スケッチブックの裏面には名前が

『小鳥遊(たかなし) 司(つかさ)』




クモリ「ツカサ……」


クモリはこめかみに手を当てて考える。


クモリ「小鳥遊 司……どこか身に覚え……名家の深窓の令嬢……」


クモリ「小鳥遊家……資産家で日本本土から離れた絶海の孤島……この場所は島の洋館?」


彼女は自分自身の記憶について疑問視をする。


クモリ「なんで……ツカサのことを……知ってる?私はなんなの……?」


しばらく長考をしたが再び探索を始めた。ドア付近のノイズを調べる。



DD

『お見舞い』

有害型、テキストファイル

・以下、小鳥遊の親族、分家達の声

声A『本当に残念ね。まさか跡継ぎの一人娘が病気だなんて……』

声C『10歳の頃から持病が悪化してねぇ……小鳥遊家の本家(直系)はどうなるのかしら……』

声B『(ひそひそ)実は……もう候補は決まってるのと……葬式の手配はできてるのよ』

声C『(ひそひそ)代々の終焉なら島……いや本家まるごと……』

声A『ほーら!早くお見舞いのバームクーヘン……渡さないと!』



クモリ「……死ぬの待ち……ってコト……?」


クモリは複雑な表情をする。次に調べたのはテーブル付近……そこには皿とオモチャ。クモリは皿を調べる。



DD

『バームクーヘン』

有害型、画像ファイル

・上品な皿に乗せられたバームクーヘン

・断面の層が茶色と黄色でとても美しい



クモリ「ふーん、結構高そう……小鳥遊家専属のシェフでもいんのかな?」


その時、クモリは違和感を感じた。その写真の端に……赤文字でこう書かれていた。



・『断層部分に遅発性の毒が含まれている』



クモリ「…………」


彼女はしばらく思考が固まる。


クモリ「どういう……こと?バームクーヘンの中に毒って……」


クモリ「親族とシェフ……まさか医者までグル……?」



『15歳は迎えられないかもしれません』

『15歳……までには……』


突如クモリの脳内に医者の声がよぎる。


クモリ「はぁ……?」


クモリ「クソしか……いない……じゃん……」


更に。


ツカサ『知ってた……気づいてた……でも誰も……わたしを信じない……それでも……食べるしかなかった……』


ツカサ『わたしは……弱かった……から』


ツカサの声の幻聴。


クモリはもう一度辺りを見渡す。病室のような個室。テーブル付近のオモチャの所のノイズ……更にベッドには白いワンピースを着た金髪の少女が座っていた。

……黒い三角帽子を被って。


クモリ「ツカサ……」


ツカサ『だから……手に入れた……力を……重力を……支配できる力を……15歳に……!』


ツカサ『まさか誕生日の次の日に……』



すると窓から今度はハムスターが佇んでいた。


「グリッチ因子〜」


ハムスターはすぐに姿を消した。


クモリ「…………支配される側から……支配する側に……」


クモリはオモチャとソレにまとわりつくノイズに触れる。オモチャは太陽をモチーフにした魔法少女のステッキ。



DD

『夢』

思念型、テキストファイル

・将来の夢は苦しむ人を救う魔法少女になること!



クモリはその記憶を覗いていると一瞬だけ……映像が浮かんだ。



『先程の親族達が床にへばりついて苦しむ姿を……その先で不敵に笑うツカサ……格好は黒い三角帽子に黒いドレスの姿』



クモリ「ツカサ……変わったね……」



クモリは魔法少女のステッキをもう一度見つめるとその側のテーブルに殴り描きのように文字が浮かび上がった。



『魔女なんかになりたくなかった……』




気がつくと再び墓地に。周りは赤く埋め尽くす量の彼岸花。


その1つの墓標に黒いノイズが。


クモリ「…………」



DD

『裁く者』

忘却型、テキストファイル

・迷える善人を救いにやってきた魔法少女



クモリはその墓標をじっくりと眺めてると、周囲にうさぎや猫などの動物が潜んでいた。


「救って〜」


「救って〜?」


「「「救って〜?」」」


動物達の嘆きの声。


クモリ「……はぁ……うるさ」


すると再び幻聴。


ツカサ『親族……だけじゃなくて本家まで?……そう……ミンナ……裏切るの?』


ツカサ『……そう……わたくしを道具のように使って一族を支配する目論み?わたくしを騙すつもり?』


ツカサ『まったく、不遜ですわ……』


ツカサ『ミンナ……跪きなさい』



クモリ「あーあ」


ツカサの声の幻聴は続く。


ツカサ『もう、いいの……あの子さえ……いれば……それだけで……いい』


クモリ「あの子?」


クモリは先程のノイズがあるお墓をもう一度調べる。



DD

『誕生日プレゼント』

忘却型、音声ファイル

・以下、両親の声

『司!15歳の誕生日おめでとう!ホント、ホントにおめでとう……!』

『よかった!ケーキやバームクーヘンなんかじゃ物足りないな!』

『……ずっと……元気に……!生きてね!』

『誕生日プレゼントよ!』


『名前は……司が付けてね?大切に……大切に……幸せにさせなさい!』



記憶を見終わると……お墓が砕けて赤い血と彼岸花が大量に溢れ出す。



――――そして。


クモリ「…………!!?」


お墓の中には…………ひしゃげた籠が入っていた。


その籠にもノイズが。



DD

『クモリ』

忘却型、動画ファイル

・身体が崩れるように地面に倒れて、少女が泣き叫ぶ。

・『馬鹿野郎ォォォォォ!!!!』

『あぁぁぁぁぁあああああーーーー!!!』

『やめてぇよ!!お願いぃぃ!!…………いかないで……!!!?』

・少女は何かを手に抱えていた。ソレの何かはあまりにも小さすぎて……見えない


・少女は地面に手を押し付ける

『殺して……殺して!!!?わたしを殺してよーーー!!!』

『…………ゆるして…………!』


・少女の隣には『ひしゃげた鳥籠』が置かれていた。その鳥籠に何枚かの白い羽が散っている。




クモリは言葉を失い、震えだした。


クモリ「ああ…………!!」


彼女は壊れたお墓、墓石に刻まれた名前を確認する。





『クモリ』






♪~♪~♪~



上空には再び祭囃子が聞こえる巨大な山車が泳いでいる。


クモリは崩れるように膝を地面につけた。



クモリ「ああ……そうだった……」



クモリ「ここ……あの世だと思ってたケド……違うのね……」



クモリ「ここは私の空間……固有空間……私とツカサ先輩の記憶の空間……」



クモリ「私は裁く者…………アベンド………………そして」



クモリ「ツカサ先輩の…………大切な……命…………」



クモリ「…………だったもの」



クモリの手には彼岸花をモチーフにした魔法少女のステッキ。そして白い三角帽子を生み出し、それを被った。


クモリは笑みが溢れた。


クモリ「さーて、先輩はどこ……かな?」



episode34

END

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