episode31-2 『もう1人の自分』
episode31-2
『もう1人の自分』
[part2]
赤く黒く錆びた観覧車。しかし、ゆっくりとゴンドラは動いていた。
ウミ「入場料は?」
ナギ「んー?ハグ?」
ウミ「ざけんな」
ナギ「ジョーク!」
ナギは舌を出していたずらな笑みを浮かべる。
ナギ「『もしOKだったら〜どうしようかな〜』とか想像しちゃったよ〜」
ウミは無視して無理やりゴンドラのドアをスライドさせる。ギシギシと悲鳴を上げながらドアは開いた。中には赤いシートが2人分ある。ウミが先に乗り込み、ナギが後に続く。
ウミ「お前……そういうこと平然と言うよな……」
ナギ「なーにー?嫉妬した?」
ウミ「しない」
ナギ「つれないね〜」
ゴンドラはゆっくりと上昇。ウミ達は向かい合う形で座る。
ナギ「この観覧車……かなりゆっくり……20分は長居できるかも……」
ウミ「いざとなったら飛び降りるわ……」
ナギ「私もそうする」
ウミ「便乗するな」
ウミは呆れる。観覧車はノロノロと上昇していくが……。
ナギ「ウミ君!外見て!?」
ウミは窓から遊園地を一望する。見えるものは……。
ウミ「真っ暗で何も見えねぇ」
ナギ「そう、それ」
ナギはケラケラ笑う。やはりウミをからかっている。
更にナギは世間話をウミに振る。
ナギ「遊園地って行ったこと、あるー?」
ウミ「当たり前だろ」
ナギ「察し悪いねー。『好きな子』と……だよ?」
ウミ「…………」
ウミは窓を見つめて話さない。
ナギ「あーはいはい。あーごめんねー?」
ナギは何かを察する。それに対してウミが少し不機嫌になる。
ウミ「んじゃあお前は?」
ナギ「あーる。ある!10回ぐらいある!」
ウミは更に不機嫌に。
ウミ「じゃあ、モテモテだな……この話は終わり」
ウミはよりそっぽを向く。
すると対面に座っているナギがウミの隣に座る。
ウミ「おい……」
ナギ「……恋人になって……あげる……って言ったら……どうする?」
ウミ「…………」
ウミ「断る」
ナギはより顔を近づける。グレーのワンピース服がウミの身体に触れる。
ナギ「根拠、具体的に。容姿?性格?それとも……性別的に?」
ウミは頭を掻きながらゆっくり答える。観覧車のゴンドラは頂上を迎えたようだ。
ウミ「容姿は悪くない……」
ナギ「うん」
ウミ「全部性格」
ナギ「えー?」
ナギは自身の頭をウミの肩に乗せる。
ナギ「性別はいいんだー?男でもー?」
ウミ「性格が全て台無し……」
ウミははっきりと答えた。
観覧車のゴンドラはゆっくり降下していく。
ナギ「ああーーーっ!!」
ウミは突然のナギの声に驚愕する。
ウミ「なに!?」
ナギ「頂上……超えちゃったじゃん……」
ウミ「だからなんだよ?」
ナギ「あーあ」
不貞腐れるナギ。理不尽を感じたウミ。内心早くゴンドラから降りたいと思ったウミであった。
徐々に地面近づいていく中、ナギはウミに声をかける。
ナギ「ねえウミ君……」
ウミ「またなんだよ?」
ナギは含みをもたした口調で言う。
ナギ「…………どっちなの?」
ウミ「?なにが?」
ナギはじっとウミの目を見つめる。ナギのオレンジ色の瞳が不気味に輝く。ウミはナギの言いたいことがなんとなくわかった。
ウミ「……ねーよ」
ナギの不敵な表情は変わらない。そしてウミの耳元でささやくように呟く。
ナギ「…………嘘つくの……下手だね」
ガチャン。
ゴンドラが地上に戻り、ドアを開閉させる。
ウミ「結局、何もなかったな」
ナギ「いろいろあったじゃん……」
[part3]
今度は噴水エリアを探索する。水は残念ながら赤い液体で人型があちらこちらに浮いている。
ナギは黙々と先へ進んでいく。ウミは辺りを警戒しながら進む。
ウミ「なにが正解なのかわかんねーな」
ナギ「まあまあ」
ナギはニコニコと笑う。
ウミ「…………」
ナギ「…………」
ナギ「……えへへ」
ウミは相変わらず彼に距離を取る。その行動すらもナギは楽しんでいる。
ナギ「あのさー」
ウミ「ん?」
しゃがんで水面を見つめるウミとナギ。
ナギ「ぼ……私、null君みたいになりたい……」
ウミ「はあ?」
ナギ「好きな事を好きって言える存在になりたい」
水面から人型が横に流れてくる。ウミは人型から目を逸らす。
ウミ「やめとけ」
ナギ「ん?なんで?」
ウミ「あいつに良い所なんてないから」
ナギは顎に手を当てる。
ナギ「ふーん」
ナギは浮いている人型に触れて、軽く突き飛ばした。
ナギ「もったいない」
ウミ「は?」
ナギ「……ウミ君は……センスないね……地味」
ナギは背伸びをする。勿論、世界は闇で赤黒い。
ナギ「もう女の子に憧れてるのかよくわからないや」
ウミは前へ進む。
ウミ「俺が知るかよ……」
彼は続ける。
ウミ「ただ、俺は誰かに舵を取られる生き方ってのはシャクなんだ……俺が俺である内に生きて……死にたい」
ナギもウミの後ろにつく。
ナギ「……はぁ」
そしてナギは低いトーンで言う。
ナギ「私は……ウミ君には……なれないなぁ」
ナギ「何もかも……中途半端……」
ナギは足を止めて俯く。ウミは振り向かずに呟く。
ウミ「当たり前だ。人間なんだから」
ナギは顔を上げて、ゆっくりと歩む。
ナギ「……そうだね」
噴水エリアを抜ける2人。次は……。
ナギ「ジェットコースター……絶叫マシン乗らない?」
ウミ「あのなぁ……探索だって言ってるだろ?」
ナギ「勿論、そう思ってるよー」
[part4]
アトラクションエリアにある1番奥に設置された絶叫系コースター。
ナギ「このコースター、動くかなー?ねえねえ?」
ウミは無視してシールドに包まれたソラの容態を確認。傷は完治したみたいで今は眠っている。
ウミは安堵の表情を浮かべた。
2人は乗り物の椅子に座る。何も起きない。
ウミ「よし、降りよう!」
ウミがそさくさと立ち去ろうとするがナギが服を掴んだ。
ナギ「短気ー。もっと長い目で見よー?」
仕方がなく長い目で見るウミ。しかし、やはり乗り物が動くことはない。
ウミ「もういいだろ」
するのナギは……乗り物から降りて……レールを歩き始めた。
ウミ「おいおい!何やってるんだ?」
ナギ「だって、もう歩くしかないじゃん」
ウミ「発想が斜め上すぎるんよ!」
しかし、ナギは止まらない。
ナギ「ほら、ウミ君も早く」
ウミは大きくため息をする。そして、乗り物から降り、レールを歩き始めた。
2人はゆっくりとレールの上を歩く。意外と幅はあるので普通に歩くことができる。
ナギ「景色はー?いい?」
ウミは左右を見て首を振る。
ウミ「何も見えないな」
ナギは微笑む。
ナギ「それもそっかー」
赤く錆びたレールをギシギシと音を立てて先へ先へと進む。
この機会なのでウミは思ったことを質問する。
ウミ「さっきの暴走って……前からあったの?」
ナギ「…………」
ウミ「…………いや、やっぱり……」
ナギ「時々。自分が自分じゃなくなる……いや、どうかな?あっちが本音だったりしてー」
ナギはニコニコしている。
ウミはレールをしっかり見つめて歩く。幸い落ちても身体能力的には問題ない。
ウミ「なぁ?本当は過去の事も知ってるとかじゃ……ないよな?」
ナギは「うーん」の呟き、答える。
ナギ「私が『記憶を失っている』……て呟いたことを嘘っていいたいの?」
ウミは押し黙る。するとナギはどこか達観したような表情をする。
ナギ「まあ、嘘でも教えないケド。しょーもない過去だし」
ウミ「……そうか」
ナギ「……もっと……楽しい話しよーよ?こんな機会ないんだから……もうないかもしれないから……」
ウミ「あのなぁ……」
ウミはとりあえずその場しのぎの話を思いつく。
ウミ「お前って意外とガード固いよな……ワンピースにレギンスだし」
ナギ「レギンス?確かにー。あんまり肌を見せたくないから……」
ウミ「なんで?」
ナギ「え?……だって恥ずかしいし……」
ウミ「あー女装ってどこまで?下着も含めてか?」
ナギ「へ?!!」
ナギは激しく動揺する。あまりの動揺で足を滑らして滑落した。ウミはすぐにナギの手を掴んだ。
ウミ「おいバカ!落ちるなよ!」
ナギ「……ご、ごめん」
これ以上のレールでの移動は控える2人。
ナギ「う、ウミ君!急にびっくりさせないでよ!!あとさぁ!私……男だから……流石に完全に女装は無理!!」
ウミ「悪かったよ……でも急でびっくりしたぜ」
結局、地上へ戻る。
ウミ「……わかんねー」
ウミは脱出の正解を模索しているが……糸口が見つからない。
ナギ「今までどうやって探索してたの?」
ナギの純粋な質問。
ウミ「nullかソラのカメラでノイズの痕跡を探したり……てかDDすら見当たらないな」
ナギ「……いい情報が見つかるといいね」
ウミは頷いた。
探索から数十分。
遊園地を隅々まで探索しても赤黒い錆びた世界が広がっているだけ。めぼしいものは巨大な猫のぬいぐるみがベンチにもたれかかっていたり、売店の地面に挟まっているなどとシュールな光景を見かけたぐらい。
ウミ「コイツら動きそうだな」
ナギ「動くかなぁ〜?」
やはりvoidだけあって情報が殆ど見つからない。しかし、ナギが次の候補の場所に指を指す。
ナギ「『ミラーハウス』……おもしろそー」
ウミ「嫌な感じ……」
ウミが俯いているとナギは無理矢理ウミを連れて行く。
ウミ「おーい……またかよ……」
ナギ「危険な所は大体怪しい所……私の勘だけど」
ウミは機嫌が悪くなりながらナギの意見については肯定した。
ウミ「(はぁ……どっかの探偵被れを思い出すな……『危険な所に真実あり』ってな)」
episode31-3へ続く




