episode21『8月31日』
episode21
『8月31日』
[part1]
『深度1・夏のひまわり畑』
翌日に早速、null、ソラ、ウミ、ナギの4人でDD回収や調査を始める。太陽は眩しく真夏のような陽気だ。しかし、彼ら魂+アベンドには新陳代謝はない為、汗をかかない。現在、深度1で地平線まで続くひまわり畑。季節が夏なのかセミが大合掌をしている。
ナギ「暑くないけどー帽子でも持ってくればよかった……」
ナギは困り顔で言う。
ソラ「私、知ってますよ?このシチュエーション。アレですよね?夏休みにしか会えない名無しのあの子(白いワンピースの少女)概念です!」
ウミ「それ、古いぞ?」
ウミは呆れながら言う。
null「ナニソレ?」
ウミ「どーでもいい話だ」
ウミは先頭になって進む。後ろにナギがべったりと張り付きながら歩く。
ナギ「ウミ君、足はやーい!ねぇ!ねぇ!その子に会えるといいね!あー!なんかはぐらかしてる?もしかしてそんな子が初恋だった?」
ウミは更に足を速めて歩く。
ソラ「ウミ君の初恋って……確かに気になりますねー」
するとnullが。
null「ハツコイって何?」
ウミ「いい加減からかうな!」
nullは面倒くさそうにそっぽを向く。
ひまわり畑は永遠を感じるほどに広大だ。
null「これ何かギミックがあるかもね」
ウミ「かもなー」
ナギ「運命の人に会うことが条件だったしてー?」
ナギはウミはチラチラと見つめる。
ウミ「なんだよ?」
ウミは目を細めた。
ナギ「ふーん。ウミ君はさ……こうやって」
ナギはウミの手を握り、繋ぐ。
ウミ「!!?」
ナギ「一緒に歩いた子が……初恋でしょ?」
ウミは体では現れなかったが内心、鳥肌が立っていた。彼の幼少期の初恋相手の状況をナギが推測、的中させたからだ。
ウミ「……さぁな」
ナギ「えー?私ってもしかしてウミ君の初恋相手に似てるとかー?」
ナギはイタズラに笑う。
ナギ「なーんて」
セミの鳴き声がやかましい。
ソラ「ウミ君のタイプは……華奢で背が低くて……髪が長くて……露出が少ない清楚なんですね……なるほど」
ウミ「なんも言ってねーぞ俺は……」
ソラ「あ!私は推すならnull君ですね……第二次性徴期を迎えてな……」
null「やっと見つかった」
ウミ「ん?」
nullが指を指すと民家……いや、昭和の香りが漂う2階建ての宿泊施設が顔を出した。
ナギ「これってホテル?」
ウミ「いや、旅館……民宿だな」
ソラ「奥を見てください!」
ソラが声を上げて全員が注目する。そこには澄んだ青い色の海が遥か彼方まで広がっていた。
ナギ「海だねー!」
null「ひまわり畑に民宿に海……夏要素が多いエリアだね」
一行は浜辺に足を入れる。海風が強く、ソラのロリィタ服のスカートやリボンが大きく揺れ動く。
ナギ「ソラちゃん!可愛いねー!」
ソラ「か、風強いですね……!」
nullは淡々と、ウミはソラから視線を逸らし、砂の上を歩き続ける。
ナギ「ウミ君?照れてない?ちょっと挙動が変だよ?」
ウミ「いちいち噛みつくなって……」
ソラはスカートを押さえながらウミにフォロー。
ソラ「一応、ドロワーズ履いてるので大丈夫ですよ?」
それに対してナギも反応。
ナギ「あ、私もレギンスだからー」
ウミ「そんなムッツリじゃねーよ!」
ソラ「ウミ君は硬派ですもんね!」
風は強く吹いてるが鳥などは見かけない。聞こえるのは波とセミの声だけだ。
ウミ「アベンドもいないな」
null「良いことだね」
ソラ「でも以前、水辺は危険でしたから用心はしたほうがいいですよ?」
ソラは水平線に広がる青い海を撮影。海の中は澄んでいてかつ海底が浅い。安全そうだ。
ソラ「良いですねぇ……この海だけ喫茶店の近くに欲しいです」
ウミ「そんなほのぼのした世界じゃないだろうよ……」
ナギ「ウミ君〜ノリ悪いよ〜!」
会話が弾む3人と1人取り残されるnull。nullは黙々と探索を続けている。
ウミ「null?大丈夫か?」
null「なにが?」
ウミ「いや、なんか……つまんなさそうじゃん」
nullは相変わらず無表情だ。
null「そう見える?君達同士のコミュニケーションは今後の生存戦略には有効だと思うけど」
ウミ「いやいや、お前は参加しなくていいのか?」
null「索敵が疎かになるからいい」
ウミ「あーそうかよ……」
null「あ、DDある」
nullは砂浜と海の境にある黒いノイズを採取。
DD
『祈り』
思念型、画像ファイル
・膝半身まで海浸かった人の集団が海に向かって祈りを捧げている
ソラ「これって何でしょう?亡くなった人達を[#ruby=弔_とむら#]っているんでしょうか?」
ウミ「灯籠流し的な?」
null「単純にそうならいいけど……」
nullは少し思考をする。
null「アベンド、DDの残滓に『祝福』という暗号……」
その言葉にウミは反応する。
ウミ「あーそれ(nullから)前に聞いた話か……」
ナギ「宗教かな?でもよくあるよね?幸福とか祝福とか?」
ソラ「ナギ君は知ってます?」
ナギは首を横に振る。
ナギ「知らない。君達で言う20xx-5の人だからー」
null「そう……それじゃ民宿に入ろうか」
[part2]
『深度1・海と民宿エリア』
民宿は家族経営だろうか。ともかく、築が古そうな建物だがホコリ1つもなく綺麗に手入れされている。
ウミ「こーゆー所さ、みんな泊まったことある?俺はある」
ソラ「無いです。家族旅行の際はいつもホテルでしたし」
ナギ「私もないかな……」
ウミ「無いのかよ……じゃあ話合わねーじゃん。マジで虫ばっか出るよ?ムカデとかクモとか」
ナギ「そんだけ?」
ウミ「え?」
ナギは続ける。
ナギ「でも値段も手ごろそうだし、何より温かそう……」
ダイニングキッチンへ向かった一行。nullは冷蔵庫を開ける。
null「あ、麦茶」
冷蔵庫の中は2L容器の麦茶のみが入っている。
ソラ「この場所も何かの記憶なんでしょうか?」
ウミ「現世じゃもうこーゆー所、閉業してるだろうな」
null「そもそも……いや、なんでもない」
ウミはnullの肩を軽く叩いた。ソラは目を泳がしながら呟く。
ソラ「別の所、行きましょう!」
居間、縁側、1階客間などを探索するが扇風機と風鈴ぐらいしかめぼしいものがない。一同は2階の客間に向かう。
客間のドアは引き戸だ。襖を開けた。
子供部屋だ。男の子だろうか。壁にカレンダーや飛行機のイラストが描かれた絵画……畳に黒のランドセル、布団、車のオモチャ……勉強机に絵日記、虫かごなどが置かれている。
ウミ「ザ・男の子の部屋って感じだな。昔の」
ナギ「…………」
ウミ「どうした?」
ナギ「こーゆー部屋って新鮮……」
ソラは質問をする。
ソラ「ナギ君の幼少期も女の子らしい部屋だったんですか?」
ナギ「うーん、人形とぬいぐるみとシールとチャームばっかりだったよー」
ソラ「女児服とか……着てました?」
ナギ「着てない……」
ナギは小さな声で呟くが……。
ナギ「(大きな声で)いや、着てた着てた!!可愛い服とかスカートとか!!着てたよ!?」
ソラ「そう……ですか」
nullは机の絵日記を調べる。
『絵日記』
・8月31日。
きょうは夏休みさいごの日。やることない。あそばないでしゅくだいやった。ギリギリおわった。そしたらもう夜。1日がみじかすぎ。あしたになりたくない!
null「クソガキだね」
ウミ「そりゃお前もな」
null「僕は良いんだよ」
ソラは窓越しに絵のような入道雲を見つめて、カメラに収めた。
ソラ「そうですよね……夏休み、ありました……」
ナギ「夏休みって今もあるよねー?」
ソラは俯いて押し黙る。首を傾げるナギ。するとウミがナギに声をかけた。
ウミ「詮索すんなや……」
ナギは複雑な表情になる。ウミはソラの[[rb:不登校 > 事情]]を知る故の行動だ。
ナギ「結構、大変なんだ……」
『大丈夫か!?』
突如、ソラとウミに聞こえる声。彼らは動揺する。
ナギ「どうしたの?」
ソラとウミは急にめまいと眠気が。nullが何かを呟いている。
ソラ「なんか……声が……」
『救急車!?』
『誰か電話を!』
ウミは頭を抱える。
ウミ「なんだ?……コレ?」
『大丈夫ですかー!?』
身体に触れる感触がした。ソラとウミは睡魔が限界を迎える。
ソラとウミは目を覚ます。そこは複数の人が心配そうにこちらを見つめていた。
ウミ「アレ?」
ソラとウミが意識を取り戻すと通行人が安堵の表情を迎えた。
通行人「よかった……!(周りに)救急車、大丈夫っぽい!」
ソラとウミは周囲を確認する。都会の公園の芝生内で辺り一面、ビルが建っている。遠くには電車が走っていた。
ソラとウミはお互いの顔を見つめる。なにがなんだか分からない状況だ。
通行人「急に倒れて……びっくりしたよ!?大丈夫!?」
ウミ「大丈夫……」
ウミは土を払って返答する。その時、自分達の服装の違和感に気づいた。私服なのだ。ウミはパーカー、ソラはワンピース服。
ウミ「コレって……」
ソラ「夢……ですか?……それとも」
ソラ「現実?」
episode21
END




