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episode22『日常』

episode22

『日常』


[part1]


ソラ「……現実?」


その言葉にウミは強く否定する。


ウミ「いやいや!なわけねーよ!」


するとソラは手に意識を集中する。


ソラ「…………」


何も起きない。


ソラ「カメラが生成できない……」


ウミ「グリッチ因子が……ない!?」


困惑する彼らの中、無機質に人々が動いている。丁度、通勤、通学時間あたりだろうか?


ウミ「どうなってる?」


するとウミはソラに対して謎の違和感を感じた。


ソラ「どうしましたか?」


現在、ソラの私服は水色の膝下丈ワンピースだ。そしてウミは初めてソラの私服を目にすることになる。


ウミ「お前……15……だよな?」


彼女の体つきが華奢でウミからは2、3歳は年下に見えた。ソラは恥ずかしそうにする。


ソラ「だから言ったじゃないですか!?私服似合わないんですよ!」


ウミ「まあまあ、今はそんなこと言ってる場合……じゃないな」




2人はしばらく街並みを歩いた。


ソラ「現世……なら、もう滅亡してるって……言ってましたよね?」


ウミ「アレが本当なら……ここは……」


ソラ「でもグリッチ因子、使えないですよ?」


ウミ「んじゃあ、俺達もし本当に人間に……?」


ウミは考える。そしてソラへの違和感に気づいた。



ウミ「…………」


違和感の正体はソラではなかった。ウミ、彼自身の心

のざわめき……ソラを初めて異性として見た自分自身であった。



ウミ「クソ……!」



ウミはふと過去の記憶を振り払う。ソレはあまりにも汚れて、決して忘れることはないが、同時に二度と思い出したくない記憶。




ソラ「ウミ君?」


ソラの声で我に返るウミ。


ウミ「ああ……なんだろう。なんかさ、本能が……心が人間寄りになったというか?」


ソラ「……何言ってるんですか?」


ソラは首を傾げる。どうやら彼の発言にピンと来ないようだ。ウミは何故か納得する。




街の交差点を2人は歩く。人々に笑顔はない……と言っても不自然というかこの時間(通勤、通学時)だからなのか。


ソラ「交番、行きましょう」


2人が向かったのは街の交番。しかし、中に警官はいない……。


ウミ「なんでだよ?」


ソラ「わかりませんよ」




そのあと、点々と交番や警察署に向かったが有益な情報は得られなかった。


ウミ「結局、俺達の存在はわからないか……」


ソラ「せめて、名前や苗字がわかれば……」


ウミは電柱や自身の肌を触る。


ウミ「やっぱり、夢じゃないな……」


すると近くでスマホに対して怒鳴り声を上げるサラリーマンが。その隣には外国人カップルがベタベタしながらスタスタと歩いている。


ウミはため息をする。


ウミ「終わってんな……」


ソラ「でも……本当にここが現世なら……」


ウミ「わかんねぇ」


ウミは頭を抱えながら続ける。


ウミ「本当ならnull達は全部嘘なのかよ……」


ソラは黙り込んだ。




2人はビル街から閑散な住宅街、そして学校に着く。ソラが学校を見た瞬間、目を背けた。


ウミ「ああ、学校か……」


ちょうど学生達が登校していた。男友達や女友達同士、中にはカップルも見かけた。


ソラはしゃがみこんでしまった。


ウミ「ソラ?」


ソラ「……なんか……圧迫感が……」


ウミ「アベンドに比べれば……」


ソラ「アベンド?」



ウミ「……え?」




ウミは聞き返した。


ウミ「アベンドだよ?」


ソラ「…………」


ソラは首を傾げてしまった。




ウミはマジかよ……と呟きながら頭を掻く。


もちろん学校に近づくことはなかった。2人は町の案内板を見つけた。


ウミ「季節は……春か」


ソラ「地図もありましたよ?」


隣にこのエリアのマップ。地区の名前からして都内だと思うが、2人は記憶を失っている為、名前が確認できても思い出せそうにない。


ウミ「なんかなぁ〜。ケーサツもはぐらかすしよ〜」


ソラ「家に帰りたいですよね……」


ウミ「ソラ?」


ウミはソラの身を心配するが、気にし過ぎかもしれないと感じる。


ウミ「……だよなぁ」


気のせいかお互いの歩いている距離が近くなっていく。ウミは等身大の少年に戻ったかのようにドキドキしていた。




日は沈み、時刻は既に22:00ぐらいか。お金もスマホもない2人は公園で休むことにした。


ソラ「なんか……本当に私達、この世界に必要とされてるのでしょうか?」


ウミ「なんだよ?急に……?」


ソラ「皆さん、なんか冷たいです……」


ウミはソラの顔を見つめる。ソラは少し赤くなる。


ウミ「俺が……いるから……」


ソラ「あ、いえ、ありがとうごさいます」


ウミは指を差した。


ウミ「あそこにドーム状の遊具があるだろ?あの中で一晩過ごすか……地面は人工芝だから汚れも少なさそうだし」


ソラはこくりと頷いた。



[part2]


ドーム状の遊具の中に入る。入口から街灯の明かりが差し込む以外は真っ暗だ。ウミは地面に触れる。


ウミ「大丈夫」


しっかりとした人工芝で汚れもない。これなら寝具替わりになりそうだ。ちゃんと横になる広さもある。


ソラとウミは早速、壁にもたれるように座り込んだ。ソラは不安に怯えるがウミが彼女の手を握った。


しばらく手を握ったままソラの真隣に寄り添う。


ウミは頭が沸騰しそうなくらいドキドキしていた。同世代の女の子が密着するぐらいに隣にいるからだ。そしてそれはソラも同じだった。お互いが頭に浮かぶのは不安と孤独、恐怖であった。もう過去が記憶の彼方へと消えていった。



ソラ、ウミ「………………」



お互いが見つめ合う。じっと目を見続けた。自分は今まで何をしていたか、何者なのか……もうどうでもよくなっていた。




何も思い出せない……過去も、トラウマも、ついさっきの出来事も……でも、全てから解放されたい……楽になりたい……2人の想いは1つになった。






…………しかし、2人は思いとどまる。微かな光が入口差し込む先に黒いローファーと白いフリルの靴下、そしてフリルいっぱいの白いロングスカートの女の子が立っていたからだ。


ウミ「あれは……」


謎の少女は姿を消す。ソラは口を開く。


ソラ「クラシカルロリィタ服……IWのブランド……」


ソラはぶつぶつと1人呟く。


ソラ「フリルのスカートや靴下……黒のローファー……」


彼女の表情が徐々に変化していく。何かに焦っている。


ソラ「カメラ……カメラ……カメラ……?」


ウミ「カメラ……?」


するとウミは嗅覚に異変を感じた。焦げ臭いのだ。


ウミ「なんか煙たくないか?」


ソラ「……確かに」


2人はドーム状の遊具の中から外に出た。


……信じられない光景が広がっていた。


ウミ「おい……ウソだろ?」




2人が視界に入ったのは氷のような吹雪、そして四方八方の炎。街並みが赤と黒色に包まれて空が煙に覆われていた。


ソラ「なんで……!!?」


ウミ「に、逃げるぞ!!」


ソラとウミは炎から少しでも離れるように安全な場所に向かう。しかし、吹雪は悪化……視界不良に……!更に遠方から炎の竜巻が街を焼き払う!!


ウミ「どうなってるんだよ!!どうすればいいんだよ!!?」


ウミは絶叫に近い声で現状を嘆く。ソラは……何故か立ち止まっていた。


ウミ「ソラ!行くぞ!!」



ソラ「…………ダメ……です」


ウミ「はぁぁぁ!!?」


ソラは俯いて全身が震え出す。



ソラ「私達……すごく、大切なことを忘れている気がします……」



ウミ「何言ってるんだよ!?逃げるんだよ!!」


ソラ「……ウミ君!!」


ウミ「なんだよ!!?」



ソラの手元には『大きな一眼レフのカメラ』が。



ウミはそのカメラを目を留める。


ウミ「カメラ……?……カメラ……カメラ……」


ソラは真剣な表情で浮かべる。瞳には焼けた街並みが写し出される。



ソラ「やっぱり……この格好……似合いませんね……」





少しだけ笑うソラ。ウミは何か大切な記憶が脳内によぎり始めた。


ウミ「ううぅ!!クッソ!!なんだよ!!?」


ウミの記憶に真っ先に浮かび上がったのが、『黒髪ロングで灰色の瞳の眠そうな顔の少年……少女かわからない嫌な奴の顔だった』。



ウミ「あああぁぁぁーー!!!」




彼の失われた記憶が次々と蘇る!!




ウミ「俺達は……そうだ……!!

アイツを……!!

……クソみてぇな……

ロジカル野郎を!!

…………ぶん殴る為に!!」





ウミ「歯ァ食いしばって……生きてるんだよ!!!?」





お互い、気がつけば格好が変わっていた。ソラは白いフリルが装飾されたクラシカルロリィタ服、ウミは着崩れした学生服……だ。


2人は燃え盛る炎の方角に向く。



ソラ「思い出しました……私は……撮らないと……いけません……戦わないと!!喫茶店の為に!!失った人々の為に!!」



ソラはカメラを構える。ウミは念じて剣を生成した。


ウミ「……どーせ、ここもクソみてぇな世界だろ?」




2人は厄災の元へと突き進む。氷の吹雪は地面を凍らせ、炎は周囲を地獄に変貌させた。その根源を絶たなければならない。


ウミ「この氷と火はなんなんだよ!?」


ソラ「……自論ですが……この『日常』が異常だったんです……私達の記憶や能力を失うほどに……恐らく『日常』は私達の『帰りたい』という心につけ込んだアベンドでしょう……」


ウミ「じゃあ!?今の現象は!!?」


ソラは目を細めてからゆっくり話す。



ソラ「ウミ君……氷と炎……何か聞き覚えありませんか?」


ウミ「氷と炎?……なんだよ……氷と……炎……」


ウミは過去の記憶をさかのぼる。浮かび上がったのは…………。


ウミ「…………双子……」


ソラは頷いた。


ソラ「異常を壊してくれたのは……多分……そうです」


ソラ「リミさんと……フセさん……」


ソラは続ける。




ソラ「亡くなった……双子の……『アベンド』です」




episode22

END

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