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episode20『ナギ』

episode20

『ナギ』


[part1]


ツカサ「来客よ?」


ツカサはnull達に伝える。ツカサの隣には白髪ロングヘアー、オレンジ色の瞳、グレーのワンピースで黒のレギンスを着ている少女が店に踏み入れる。


ナギ「すごい……めちゃくちゃオシャレだねー。パンケーキとか凄く美味しそう……!」


ツカサはそっぽを向いて呟く。


ツカサ「それでは、ごきげんよう」


彼女はすぐに喫茶店を去る。




ウミ「はぁ、よくわかんねー奴だな」


ソラ「ツンデレと捉えましょう……」


ソラは妙に納得していた。


ナギはキョロキョロと辺りを見渡す。


黒髪ロングのnull、白銀髪ショートのソラ、茶髪ショートのウミと店主のrecefiaを見つめた。


ナギ「ふーん。みんな個性的だねー……1人地味だけど」


ウミ「おいこら」


ナギはにっこりと微笑む。


ナギ「あー!反応した!そう!君が地味!」


彼(?)はウミに近づく。


ナギ「ねーねー?名前聞いていい?みんなの名前。勿論、君も」


ウミ「ウミだよ」


null「null」


ソラ「ソラです」


recefia「店主のrecefiaよ」


ナギは顎に指を添える。


ナギ「えー!みんな可愛い名前だねー!」


ウミははぁ……とため息をする。


null「とりあえず、君.迷い人(お客)でしょ?しかも高濃度のグリッチ因子持ち」


ナギは首を傾げる。


ナギ「グリッチ因子?」


ソラ「特異能力ですよ?ご存知あります?」


ナギはああー!と声を出す。


ナギ「アレのことグリッチ因子って呼ぶんだ!へぇー!」


null「立ち話はいいから座ってよ?お代はないから」


ナギはこくりも頷き、カウンター席に座る。座り方もちょこんと座るような小動物な仕草だ。


ソラ「(えー、とても美を感じます)」


ソラが感心しているとナギが手を招く。


ナギ「ソラちゃんだっけ?こっちおいでよー?あれ?店員だっけ?……まあ、いっか。パンケーキ食べよー?」


ソラ「え!?……あ……いや、一応仕事なんで……」


ナギ「そっかー。じゃあ……ウミ君?おいで?」


ウミ「はぁ?俺も店員だし……」


ナギ「可愛い子の隣に来れるんだよー?おいでおいでー?」


ウミは非常に困惑し、nullにアイコンタクトを取る。


null「いいんじゃない?」


ウミ「いいのかよ……」


nullは空返事のような回答だった。


やもえずウミはナギの隣に座る。ナギはソラほどの身長(152cm)でウミもモヤシだがそれより小柄だ。するとナギはウミの手を握り、店主のrecefiaにオーダーする。


ウミ「は!?」


ナギ「メロンクリームソーダ2つ……あとアイスコーヒー1つ……コーヒーはウミ君で」


recefiaは無言で頷き、厨房に入った。


ナギは頬杖をつきながらウミの顔をじっと見つめる。


ウミは照れてるというより、どこか嫌そうだ。


ナギ「頭から顎までパーツが地味……あ、カッコいいって意味だよ?」


ウミ「うるせぇよ……」


ウミは掴んでいるナギの手を離した。どさくさに紛れてnullはテーブル席でコーヒーをすする。やることがなさそうだからだ。ソラはrecefiaの手伝いをおこなった。


しばらくするとバニラアイスを乗せた緑色の炭酸飲料とコーヒーがナギの元へやってきた。


ナギ「ありがと〜」


ナギはメロンクリームソーダを嬉しそうに見つめながら刺してあるストローで頂いた。ウミはずっと自分のグラスを見つめている。


ナギ「飲まないの?」


ウミは少し沈黙してからグラスに口をつける。



ソラもnullと同じテーブル席に座り、様子を見ている。


ソラ「女子力凄いですね……」


null「そう……?」


やはりというかnullは関心がなさそうだ。しかしここでnullがウミに指示を下した。


null「ウミ、せっかくだからその客の情報を引き出して?」


ウミ「なんで俺が?」


null「ムード良さそうだし……」


nullのジョークが飛ぶ。ウミはまたしてもため息をする。


ウミ「ナギ?」


ナギはメロンクリームソーダを飲み続けている。


ナギ「なにー?」


ウミは重い口を開いた。


ウミ「お前……男だろ?」



[part2]


ウミの一言でナギは目を見開く。


ソラ「男!?ですか!?」


ナギはしばらく長考し、不敵な笑みを浮かべた。



ナギ「ふーん」



ウミ「なんだよ?」



ナギ「証拠……ある?」



ナギはウミに顔を近づける。ナギのサラサラの髪がウミにかかる。ウミは目を逸らす。


ウミ「勘だよ……昔から鋭いんだ」


ナギ「男の勘……って奴?」


ウミ「……そう」


ナギは再びメロンクリームソーダを口に入れる。仕草がとてもおしとやかだ。


ナギ「美味しい♪」


ナギは幸せそうな笑みを浮かべた。ウミは黙っている。nullとソラは今の状況を見守っているようだ。


ナギ「それで……?しょーこ」



透き通った声でウミに問う。


ウミ「勘って言ってるだろ?」


すると突如ナギはウミの手を持ち、自身の腹部に当てた。感触は筋肉質ではないが、肉があまりついてない。


ナギ「せいかい。バレちゃった」


彼はアハハと笑う。動揺はしていなかった。


彼は続ける。


ナギ「昔から可愛い物が好きでさ……女の子に憧れてたんだ」


ウミは手を振り払う。ナギはニヤニヤしている。


ナギ「(髪を持って)これ地毛、まあ、薬の副作用でこんな色になっちゃったケド……ここまで伸ばすの大変だったんだよ?」 


ウミ「……そうかい」


ウミはどこか機嫌が悪い。そして再びnullにアイコンタクト。『もういいだろ?』の合図を送ったが……。


null「ダメ、全然情報聞き出してないじゃん」


ウミ「鬼畜かよ……」


ウミはため息をした。




ウミは仕事の如く、質問を続ける。


ウミ「グリッチ因子の能力は?」


ナギ「見たい?」


ウミ「そーゆーのいいから」


ナギは懐から何かを取り出す。医療用のメスだ。その光景を見つめるnull……特にコメントはない。


そして彼は……メスで人指に触れる。


ウミ「…………」


触れるだけで指から赤い血がすぅーと溢れた。


ナギ「メスって……凄く切れ味良いよね?」


ウミはナギの手に注目する。既に出血が止まり、皮膚が再生していた。


ソラ「再生能力ですか?」


ウミ「……はぁ、それぐらいなら俺達も……」


とウミがぶつくさ言うと、ナギは()()()()()()()()()()()()()()()()


ウミ「!!?」


ナギに一切の躊躇はない。むしろ少し笑みを浮かべている。ウミは慌てて彼の手を押さえて制止した。


ウミ「何やってる!?」


ナギはキョトンとする。


ナギ「え?……証明」


これにはソラは動揺していた。


ウミ「……テーブルが汚れる!」


ナギ「血液はすぐ消えるよー?」


ウミは首を横に振る。


ウミ「そうじゃない!営業妨害だ!」


再度nullを見つめるウミ。nullはゆっくり頷く。


null「そうだね」


これには店主のrecefiaも賛同する。


ナギは周囲の空気を読んでメスをしまった。


ナギ「さすがにやりすぎたかも……」


彼は続ける。


ナギ「私は再生能力持ち……それも瞬時に回復するほどだよー?」


ソラ「つまり……首とか致命傷でも平気ってことですか?」


ナギはソラに対して微笑む。


ナギ「3秒あれば……全快するよー!」


null「3秒ね……それは速い」


nullはテーブル席でコーヒーをすする。




他にもウミはナギに問いかけた。記憶の話や自認の話など……。


ナギ「ねぇ……ウミ君のこと、聞いていいー?私ばっかじゃフェアじゃないからね」


ウミ「なんだよ?」


ウミのメロンクリームソーダのアイスは既に溶けてジュースに混ざり合ってる。


ナギ「今さ、どんな気持ち?イヤ?それとも嬉しい?」


ウミは目を逸らす。


ウミ「…………」


ナギ「……答えない……ってコトは嬉しいんだ」


ウミはドロドロのメロンクリームソーダを飲み干した。頭が痛い。


ウミ「正直、近い……」


ナギ「ん?」


ウミ「距離が近いんだよ……」


ナギは少しだけ表情が変わる。すると1つ離れた席に座る。



ナギ「これでいい?」


ウミ「あのなぁ……」


何度かわからないほどに再びため息をするウミ。



[part3]


ウミとナギから発した奇妙な空気を終えて、各自、自室へ入る。と言いたい所だが、ウミは自室にソラを招いた。


ウミ「いや!いやぁ!もう!マジで!!もう!!」


ウミが怒涛にソラに不満をぶつける。


ソラ「凄い迫力でしたね……私もナギ君の可憐さを見習いたいです……」


ウミ「他人事だなオイ!こっちは緊張感ハンパねーんだって!!」


ソラは妙に関心していた。


ソラ「性別って関係ないんですねー。あ、でもnull君は美少女(nullは無性別)だと思ってます!」


すると彼女は手を顎に当てて考え始める。


ソラ「ナギ君ってホモなんですかね……」


ウミ「知るか!!アイツはただ俺を弄んでるだけだよ!!はぁ、マサトってまともだったんだな……」


ウミはベッドに腰掛ける。


ウミ「はぁ、マジで勘弁してほしい」


ソラ「ウミ君って以前も思いましたけど……なんか……やたら硬派というか……女性嫌いなんですか?……あ!!」


ソラ「制服が好きなんですね!!」


ウミ「バカ!!ちげぇ!!変態じゃねーか!!」


ウミはソラのあまりの見当違いに呆れてしまった。



ウミ「女売る奴嫌いなんだよ……」


ソラ「前もそんなこと言ってましたね。でもどうしてですか?」


ウミ「…………イヤもんはヤなんだよ」


ここでソラは少しだけ声を上げて言う。


ソラ「でも女性はみんな女性ですよ!?女要素を無くすのって無理じゃないですか?」


ウミ「ううーん」


ウミはもう少し解像度を上げた発言をする。


ウミ「身体を強調したり、露出やベタつくのが嫌い」


ソラは長考しながら答える。


ソラ「私は……自分の恋愛は解釈違いですけど……世の女性は美や若さを追い求める生き物なんですよ?ですからそれは少し許容したほうがいいですよ?」


ウミ「許容ねぇ……」


彼の心に響いたかは定かではない。



彼は過去のトラウマをずっと引きずっている。トラウマ……その元凶がウミが女を武器にする人と避けるようになったきっかけ。その過去を誰にも話す気はないようだ。



ウミ「とにかく、ソラは露出狂になるなよ?」


ソラ「なりません(断言)!」



[part4]


ナギは店内のカウンターに座ってメロンクリームソーダを飲んでいる。周りには誰もいなくて至福の時間だ。


ナギ「うーん!この時間が一番、僕……いや、私らしいねー!!」


するとnullが外回りから帰ってくる。


ナギ「null君!お疲れ〜!ほんっと可愛いね!?」


null「…………」


ナギ「無性別って憧れるよねー。私も可愛いくなりたい」


null「……思ったんだけどさ」


ナギは目を大きくする。


ナギ「なに?」




null「こんなDDS(世界)なのに、随分落ち着いてるね?」


ナギ「そうかなー?」


ナギはニコニコしている。


null「多分なんだけど、経験者。アベンドも何体か葬ってる……」


ナギ「…………」


ナギは押し黙ってしまった。更にnullが追い打ちをかける。


null「君、記憶が無いって話……()()()()()()()()?」


ナギ「……え?」


するとnullはカウンター席に座りコーヒーをすする。



null「ま、ジョークだよ」


ナギ「な、なぁんだ……」


スティックシュガーにコーヒーを入れて再び、すするnull。


null「明日から調査に手伝ってもらうよ。今日はおやすみ」


nullはコーヒーを飲み続けている。




ナギは2階の自室で夜を過ごす。


彼は鏡の前に立って自身を見つめる。


ナギ「うん、可愛い」


いろんなポーズを決めて浸る彼。しかし、胸の奥で蠢くナニカが暴れている。


鏡に写る顔を睨みつけるナギ。その顔はどこか歪な形だった。




episode20

END

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