episode11-1 『愛』
episode11-1
『愛』
[part1]
『深度1・ショッピングモールエリア』
ゲームセンターに戻ってきた喫茶店メンバー3人。リミとフセは特に驚かない。どうやら時間は経過してないみたいだ。
ウミ「お前ら、無事か?」
フセ「なにが?」
フセはクレーンゲームの窓を覗き続けている。
リミ「どうしました?」
ソラ「いえ……あの、そこの景品の飴……知ってます?」
リミとフセはカラフルな色で包装された飴、商品キャンディスペースを見つめる。
フセは首を傾げる。
フセ「初めて……見た」
ソラ「え?」
リミ「ご存知ないです……」
ウミ「だって流行ってたはず……」
ウミは困惑し始める。するとnullが憶測を始めた。
null「ソラとウミ、双子の時代は……多分違う……」
ソラ「えぇ!!」
フセ「違う……?どういう……意味?」
これにはフセも反応する。
null「いや、だから君達がDDSに迷い込む前の現世時代と双子は同じ時間軸じゃないってこと」
ウミ「待って……いま20xxだろ?」
フセ「20xxなのか?フセ達は20xx-5……つまりお前らより……5年前だ」
ウミ「マジかよ……」
null「5年前ってことは、リミとフセは『しあわせさま』降臨より5年前の人物ってことだね」
一同は沈黙する。
ウミ「とりあえず、別の所にいこーぜ?」
ソラ「そうですね」
ショッピングモールのエレベーターに乗り、下降する。4階から1階まで降りるが……。
ブイーンブイーンブイーンブイーン。
エレベーターの稼働音が響き渡る。でもおかしい。明らかに1階より下に進み続けている。
ウミ「(停止ボタンを押す)おいおいおい!止まんねーぞ?」
ドア越しに見える景色は部屋の連続。とある部屋に背の高い影の女が佇んでいる……がすぐにエレベーターの降下で見失う。
ウミ「……なんだよ」
ブイーンブイーンブイーンブイーン。
やがて部屋すらも見えなくなり、暗闇だけが残るようになった。階層は……B127F。
null「次のエリア……」
nullはボソッと呟く。
ガチャーン。
エレベーターのドアが全開する。もう降下することも……閉めることもできなさそうだ。
先は漆黒の闇……光すら届かない。
nullがライトを照らし、前へ進む。リミとフセも躊躇なく歩き始める。ソラとウミは……。
ウミ「怖いか?」
ソラ「怖いことがわからないことが……怖いです」
ウミ「……俺もだ」
ライトを前に照らすと……木造でできた建物達が現れる。かなりの経年劣化を感じる。
ウミ「廃村……」
[part2]
『深度1・夜の廃村エリア』
日本の田舎を凝縮したような村……草木が生い茂っており、森に囲まれている。まるで樹海のように。
null「心霊スポットだよ?喜んで?」
ウミ「好きだけど……ここは嫌いだ……」
nullのライトが唯一の道標だった。nullはライトを左右に照らすと……無縁仏が無数に並んでいる。
ソラ「幽霊出そう……ですね」
ウミ「幽霊ぐらい殴れるわ」
ウミは軽口を叩いた。
奥へ奥へ進むとより、集落になっていく。
一件、二件、三件……それと大きな廃屋。
リミ「屋敷でしょうか……」
フセ「フセ達の家も……これぐらい……ある……ただ、古い家だった」
null「へー、お金持ちなんだね」
ウミは正門に触れるが……。
ウミ「開かねーじゃん」
nullは正門のドアにライトを当てる。
そこにはびっしりと古の文字の御札が貼られていた
ウミ「うわぁ……キモ」
null「これ破ったら呪われそうだね……」
ソラ「と、とりあえず、周囲を探索しましょうよ……」
屋敷を後にして集落の中央に向かう。するとnullが指を指した。
null「DDある……井戸の所に」
井戸の付近に黒いノイズが漂っている。nullはDDを回収した。
DD
『玄関』
有害型、動画ファイル
・砂嵐の映像、ノイズが走る
・オレンジ色の照明の玄関に赤い服の女がゆらゆらしてる(口元は笑っている)
null「……」
nullはすぐに解析を終了させる。
ソラ「……なんなんでしょうか?」
null「有害データだね。そっ閉じ」
ウミ「なんでだよ?」
null「世の中には知っちゃいけないこともあるんだよ」
集落の広さを把握しながら探索する。ザクザクと土を踏む音と風のうめき声のみが響く。屋内は人数が多い為、後回しに。所々に商店や消防倉庫などを見かけた。
null「あ、そうそう。ライトの明かり以外は見ないほうがいいよ?」
ソラ「え?見ちゃダメなんですか?」
ウミ「当ててやろうか?……『いる』からだろ?」
ウミの勘は鋭い。危険なモノにはあえて接触しないスタンスなのだ。
null「正解」
null「暗闇を覗くと何かいそうな気がするじゃん?でもDDSは『いる』ことが多い。例えば……ソラの後ろ、ちょうど木の陰あたりに笑ってる女の子がいるね……」
ソラは好奇心と恐怖が同時に押し寄せてくるが、一応恐怖が勝ったようだ。
ソラ「それって……アベンドですか?」
ソラは恐る恐る尋ねる。
null「うん」
nullはライトを自身の顔の下から当てる。彼は至って無表情だ。
null「『スマイルガール』、非実体型。見るだけで精神汚染……倒せなくはないけど……余計なコストは不要でしょ?」
ソラ「確かに……」
null「ほら、解明したからもう怖くなくなったね……先に行くよ?」
[part3]
引き続き5人は廃村の探索を続ける。村全体の半分は劣化により、倒壊、半壊していた。
ソラ「この村って実在していませんよね?」
null「多分そう。記憶の寄せ集めだね。日本の風習、風土などの具現化じゃないかな?」
ウミ「湿っぽいよな……日本って……よく心スポ行ってたからわかる」
ウミは鼻で笑う。
廃村の隅々まで歩いていると……赤い血がべったり付着した井戸を見つけた。
ウミ「うわ……」
とここで双子のリミは井戸の奥を覗く。
リミ「梯子があります」
nullも同じく覗く。
null「井戸……じゃないね。どこかに繋がっている通路……」
ウミ「行くしかないよな」
5人は1人ずつ梯子を降り始める。梯子は鉄製で赤錆が酷い。キシキシと悲鳴を上げ、今にも折れそうだ。
10mぐらいの深さに到達し、ようやく地面が見えた。
nullは前線に立ってライトを照らす。天井から水滴がポタポタと零れて音が反響する。
ソラ「ヒンヤリしてますね……」
ウミ「寒いくらいだ……」
2人はぼやきながらnullの後ろを歩く。リミとフセは手を繋ぎながら後に続く。
リミ「フセ、気分は大丈夫ですか?」
フセ「なんとも……ない……ただ、どこか奇妙な感覚になる」
リミ「気のせいですよ……多分気のせい……」
狭い通路を進んでいくと通路から広い空間に到着する。周囲には無数の火がついたロウソクが……ソレは何か儀式的な法則性のある配置だった。
null以外は思わず息を飲む。nullは淡々とライトを左右にかざす。
null「地面に古の文字、幾何学的な紋章、中央に2つの台……」
ソラ「生贄……的なやつ……ですか?」
ウミは台から目線を逸らす。流石に気分が悪くなったようだ。
null「ソラ……この台を撮影して。撮影したら速やかに僕にカメラを渡して。間違っても『データを確認しない』でね?」
ソラ「わかりました……」
ソラは生贄台を撮影する。
ソラ「撮りました」
ソラは素直にカメラを渡した。nullはカメラを手に取り、写真データを確認。
null「(データを確認)……何かの刃物跡……鉈?……激しい人体の損傷……」
ぶつぶつと呟くnull。
ウミ「……そういうことか……」
ウミは顔を歪めながら1人で納得する。ソラはnullに尋ねる。
ソラ「良くないデータですよね……」
null「……」
「て、あ、か、は、む……」
「……し」
とても低い声で呟く少女の声が……。
null達は周囲を見渡す。
……声の発生源は……青いドレスの少女……リミから……
ソラ「……リミさん?」
リミは虚ろの表情で歩き始める。
フセ「リミ……」
フセはリミについていく。
episode11-2へ続く。




