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episode10『固有空間』

episode10

『固有空間』


[part1]


nullは闇に飲み込まれる。


辺りは闇からカラフルなネオンの文字が浮かび上がる空間に変貌する。ネオンの色は色鮮やかだ。文字は……。

『yes!!』

『no!!!』

『high!!!』

『guilty!!!』


ネオン文字は愉快に踊るように浮いている。


null「ソラ達は……見かけない……もっと深部……」


深く、もっと深く沈んでいく。すると赤と黄色の網目状のネオンが地面に広がる場所に着いた。


綺麗に着地し、辺りを確認するnull。


やはり、様々なネオン文字が浮いている空間だ。


null「……()()()()……アベンドの……」


ぼそぼそと呟きながらソラとウミを探す。


上空からスーパーボールのような飴が雨のように降ってくる。nullは無表情で飴を払いのける。


「お客さんだぁ〜!」


空間から子供の声が聞こえる。音の方向に向けるとそこには30cmぐらいのカラフルな球体が浮いていた。


球体?「やあ」


null「…………」


カラフルの球体は空間に浮いているロリポップキャンディを口に含み、噛み砕く。


ガリッ!!


まるで人体の骨を砕いたような嫌な音がする。


球体?「キャンディおいしいね!」


null「ふーむ」


球体?「ねぇ?食べる?」


ロリポップキャンディを放り投げる。


nullは見向きもしない。


null「えーと、『キャンディスペース』だっけ?ソラとウミはどこ?」


キャンディスペース「それより……ここでお茶しようよ?クッキーもコーヒーもあるよ?勿論、キャンディも!」


null「申し訳ないけど、ウチの店の方が美味しいよ?閉業してね」


刹那、nullはナイフを飛ばしキャンディスペース本体に突き刺す!しかし、本体は複数の巨大なクマのぬいぐるみやウサギのぬいぐるみ、鳥のぬいぐるみなどを生成して盾にする!


キャンディスペース「ボクの友達〜!いや、従業員!とってもおりこうさんなんだ!」


ぬいぐるみ達はnullの周りを囲い込み、口から飴玉を高速で発射!!


ダダダダダダッ!!!


弾幕を瞬間移動で回避してぬいぐるみに接近!ナイフで横にスパッと切断する。ぬいぐるみは消滅するがすぐに新たなぬいぐるみが召喚される!!


キャンディスペース「ちょっと〜なんで避けるの〜?お茶しようよ〜?」


null「君、日本語上手いね。国語何点だった?」


次々とぬいぐるみを薙ぎ払い、キャンディスペースに接近!そして黒い手を生み出して球体を拘束する!!


null「まあ、アベンドだからね。恐怖とかもないか。でもこのまま除去(バグフィックス)しちゃうとソラ達(彼ら)を見つけづらくなる」


キャンディスペースはケタケタと笑う。


キャンディスペース「あれ〜キミ〜やさしいね〜?もっと残虐なアベンドだと思ってたよ〜?」


nullは首を傾げる。


null「……君を助けるとは一言も言ってないけど……」


キャンディスペースは虹色にピカピカ輝きながら言う。


キャンディスペース「サプラーイズ!!甘いプレゼントをあげる!!」


すると奥に照明が照らされる。


null「!?」


そこには血塗れになったソラとウミが宙に浮いていた。


null「ソラ……ウミ……」


2人は気を失っており、口から血とカラフルの飴玉が溢れている。


キャンディスペース「ぎゃーーーー!!!」


金切り声を上げてケタケタと大笑いする。この行為も精神汚染攻撃だ。


キャンディスペース「グローーーーーい!!あはははははは!!!」


null「…………」


唖然としているnullに強い汚染を浴びさせる。nullが汚染で硬直している隙に飴細工でできた鋭利なステッキを彼の胴部に突き刺す!!


グサッ!!


胴部を貫かれた。


アベンドのnullの体内にはノイズしかない。彼は無表情だ。


キャンディスペース「いっけー!!」


更にぬいぐるみ達の飴玉による弾幕でnullの身体が穴だらけになる。


キャンディスペース「あはは!あははは!怒る!?怒るよね〜!?ははは!!」


ノイズ塗れの物体……原型を留めないナニカ。




その数秒後……人型に戻る。


null「で?」


キャンディスペース「へ?」




null「…………」


キャンディスペース「え?怒らないの?」


null「怒る?怒りは莫大なコスト……リソースが無駄」


ザン!


nullはナイフで両断する。


キャンディスペースが半分に切断された。


null「ソラ、ウミ……魂、反応あり。


さすがグリッチ因子耐性者……」


nullはソラとウミを黒い手で掴み、地面の上に寝かせる。


彼らの傷口を覗く。ソラ、ウミにはやはり内臓はなく、赤い液体のみが詰まっている魂だ。そしてその傷口も再生される。


ソラ「ゲホゲホ!!」


血と飴玉を吐き出し、目覚める。ウミも同様。


ウミ「うげぇ……なんだよこの場所」


極彩色のネオンが無数に浮いている空間に寒気を感じるウミ。


nullはため息をする。


null「危うく失業するとこだった……」


null「君達、カメラと剣を構えて……」


ウミ「null?……どういうことだ?」


nullは空間を眺める。


null「待望の『ボス戦』だよ?」


「ケタケタケタケタケタケタケタケタ!!あーーーーーーー!!」


カラフルな色彩が笑いながら負傷した体を再生させてこちらに近づく。


キャンディスペース「どうして……ゆっくりしてくれないの?」


null「その顔がムカつくからだよ」


不規則にカクカク動き、笑う化け物。飴をバリボリ食べ始めている。キャンディスペースはクマ、ウサギ、鳥のぬいぐるみ達を本体にくっつけ、融合する。全身が極彩色になり、身体中ロリポップキャンディやキャンディケインが生え始めた。


ドロォ……。


キャンディスペースの体が溶解し、それすら飴として噛み砕いた。


キャンディスペース「おいしー!!」


null「これは素直にキモいねぇ」


nullが感心している最中にキャンディスペースの猛攻が始まる!ぬいぐるみ達を含め、口を大きく開き大量の飴玉を放出する!!


null「君達、攻撃は相手の攻撃を打ち消せる……ようは事象消去ができるからね。避けれなければ振ったほうが早い」


null達は左右に回避をしながら立ち回る。ソラは撮影、ウミとnullは刃物で飴玉を消滅させる!!


ダダダダダダ!!!


ソラ、ウミは時折飴玉に被弾し、血を流すが構わず戦う。


ウミ「おい!この甘い匂いなんとかなんねーのか!!?」


ソラ「知りませんよ!!気が狂いそうです!!」


キャンディスペース「食べて食べて食べて食べて!!!」


ウミ「うるせーよ!!飴野郎!!」


ウミは剣に念を込めて相手に数回振りかざす!!剣先から衝撃波を発生!!周囲にばらまく飴を全て破壊する!!その隙にソラが素早く急接近!至近距離で撮影を試みる!!が反撃の飴玉が身体を貫通させる!!


ソラ「いたい!痛い!!痛い!!」


痛みに耐性を持ちつつも鈍い痛みをこらえながら撮影に成功する!!


ソラ「シャッターチャンス!!上手く行きました!!」


キャンディスペースは悲鳴を上げながら溶解し始める。ドロドロのスライム状の飴細工だ。


キャンディスペース「はいになろう、はいになろう、はいになろう!はいになろう!ラーラーラーラーラー!!うーうーうー!!」


null「(放出する飴玉を消去させながら)うわっ国語レベル下がっちゃった……」


キャンディスペースはドロドロの腕を生やし、振り回す!!nullはナイフで腕を切り落とした!しかし、何度も身体は生成される!


キャンディスペース「どうしてぇ……どうして……みんな……嫌うの?」


ソラ「ごふッ!!」


ソラとウミは吐血をする。傷口に付着する飴が体内に侵入し、中から暴れ回っているのだ。


nullは思考をする。ソラやウミの飴による毒素を除去するか、キャンディスペースをトドメを刺すか……。




null「ロジカルにいこう」




nullは決断する。コートの下から黒い手を2つ生やし、ソラとウミの身体……肩を貫く!!


ソラ「いった!!」


ウミ「くっ!!おいおいおい!!」


null「毒素を除去するから我慢して!!」


そう言うとnullは右手(人の手側)にナイフを持ち、キャンディスペースに投擲!突き刺した!!


キャンディスペース「ああああああ!!!」


キャンディスペースは大きな悲鳴を上げて怯むがまだ消滅しない。nullは更にナイフを突き刺そうとするが……。


null「このまま地獄におとす?それとも何か言葉でもかける?」


ソラとウミの毒素を除去し、黒い手を下げる。


ウミ「俺に聞かれても……!!」


ソラ「……あ!!」


ソラはとある過去の記憶が鮮明によぎった。

それはソラ自身も食べたことがある虹色の飴だった。




ソラ「……思い出しました。SNSで大流行した商品、『ハイになれる飴!キャンディスペース』……ですよね?」


ウミ「!?」


ソラは続ける。


ソラ「安価で美味しくて……気分がハイになれる……暗い世の中を少しでも明るくしてくれる飴……でした」


ウミもハッとして、思い出す。


ウミ「そうだよ……めっちゃ流行った飴だよ!!?現世で!現実世界で!!でもなんで流行ったんだ?」


その問いにソラは答える。


ソラ「私達の時代……現世は……奇妙な病気が蔓延してました……『ばいばい病』、人の精神が摩耗して、やがて……ようするに集団的アレです……」


ソラ「そんなご時世ですからね。気持ちが明るくなるような成分を含んだ飴が流行ったんです」


キャンディスペースは動きを止める。


null「そんな情報があったんだね」


ソラは誠意を込めて頭を下げる。


ソラ「……美味しかったです。とても……あの時はお世話になりました」


ウミ「ソラ……」



視界が急に暗くなる。


もう、極彩色の空間はない。


残ったのは黒いノイズ……DD。







DD

『飴玉』

忘却型、画像ファイル

・『キャンディスペース』のDD

・小包装されたカラフルな飴。写真の下の縁にテキスト、『大流行!トレンド商品!みんなでハイ!になろう!』

()()()()()以降に爆発的にヒットした商品





null「……小規模……汚染」


ソラ「『ばいばい病』ですかね」


ウミ「いや、違う。あれは単なる精神の病の通称だ」


null「現世に異常が発生していたのかな?それともこの小規模汚染も何かの偶像的な?」


ソラ「『しあわせさま』と関係ありそうですね」


ウミは疑問に思ったことをnullに言う。


ウミ「なあ?今回のアベンド……なんであんな空間だったんだ?」


null「データが重い、つまり強い思念のアベンドはああいう()()()()が存在する。固有空間ではそれを生み出した者が王、支配者で囚われた者は文字通りオモチャにされる……まあ、過ぎた話だけど」


3人は奥を見つめると微かな光が照らし始める。


null「出口……」


すると緊張が抜けたウミはnullの背中を叩く。


ウミ「おい、ふざけんなよー!さっきの突き刺し……マジでキレそうになったわ!」


null「緊張とコリをほぐす為の鍼灸だよ?感謝して」


nullは表情を変えずに言う。


ウミ「死ぬかと思ったんだぞ!?」


ソラ「大丈夫ですよ……私達、再生するんで」


null「そうそう」


ウミ「……なんか、俺だけ異常者扱いやめてくれる?」


3人は光へと向かった。




episode10

END

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