スヌーズ・クラーク 1
スヌーズ・クラーク
「え?何が起こった?」
キョロキョロと周りを見渡してみるも、やはり店員は消えている。
「何が起こったか私にも分からないけど…、まぁ二人になれたしいいでしょ。」
「そういう問題…?」
俺も香も呆気にとられていると、ドタドタドタと走る音がした。
ガラッ。
「ちょっ、これ!言う事⁉」
個室の扉を勢い良く開けたのは、さっきの女店員だった。
「え⁉あなたもタイムリープ前の記憶あるの⁉」
と、香が素っ頓狂な声を上げた。いや、突っ込むところはそこじゃないだろ、と思いつつ、ほかの突っ込みどころを探してみたけどやはり香の言ったことは的を得ているのかもしれない。
俺と香はこれを含めたら2回時間が巻き戻っている。もしこの店員も記憶が保持できるのであれば、1回目の時も何か反応がなければおかしい。
いそいそと店員がエプロンを脱ぎ始める。
「おい、お前辞める気まんまんじゃねえか。」
「もう辞めてきた。」
早っ!タイムリープしたとしても決断早!
「あ、エプロン貰いますよ!」
香が店員に声をかける。
「あ、ありがとうございます。」
女店員はエプロンを預け、香の隣りに座った。
カチ。
先ひどタイムリープした時に聞こえた音がした。バッ、と全員スマホや時計を見る。
11時35分3秒。先ほどのタイムリープは脱したらしい。
前回と違う点を考える。女店員が座っている位置。そして、制服ではなく私服なこと。
他にも探してみたけど、先ほどの条件と違うのは、女店員の座る位置と私服か否かだけだった。
「おい、さっきと条件違うのお前だぞ。」
「……ですよね。」
カチ、カチ、カチ、と響く秒針の音は、だんだんと遠くなっていくように消えていった。何とも不思議な感覚だった。
「原因…私…?」
「「その通り!」」
香と、俺がほぼ同時に叫んだ。
「でも、1回目のタイムリープん時は店員居なかったしな。」
「穂香。私の名前。店員って呼ぶのやめてください。」
「あ、そっか。もう店員じゃないのか。えっと…じゃあ穂香さん、最初のループの時だから、えぇと…」
カチ、カチ、カチ、と秒針の音がはっきりと聞こえ始めた。
「も〜、確定演出じゃんこれ〜。一肇も聞こえてるでしょ?」
「えダルっ。またもう1回目やんのかよ、このくだり。」
「エプロンの紐があるであろう所にもう手をかけておきます。」
「定期確認。37分で〜す。」
カチカチカチカチ、
カチ。
周りの景色が歪み、香が歪み、店員は消えていた。
「まただよも〜。酔いさめちゃったじゃん。」
と、香が漏らす。
「あ〜、確かにタイムリープしたら酔いってどうなんだろうな。」
ガラガラっ、と扉が開く。
「うい〜す。」
店員が入ってきた。
「「ういーす。」」
もうエプロン脱いでた。
「あ、預かります。」
「あっす。」
「あ、あと私の隣に。」
「あっす。」
ゲームの確イベ2周目みたいな感じで2人が進んでいく。
「なんでこいつらもうこんな慣れてんの?」
「まぁ、長年女やってたらわかるんですよ。」
と、店員が漏らす。
「え、性別で変わるんすか穂香さ…「いや、やっぱよくよく考えたら下の名前呼びキモいですね…。やっぱ時野谷って呼んでください。」
「え?今安直にdisられた?」
呆気にとられていると、香が大爆笑し始めた。
「アッハッハ‼やっぱあんた昔からモテないよね‼」
「うるせぇよ黙れ!」
爆笑しながら、チラと時計を見る。37分57秒。タイムリープを
カチッ
抜け出した。




