スヌーズ・クラーク 1
えげつないミスしてました。ストーリーが一部抜けていました。
何であんたも居るんだよ。此処に。」
「今辞めてきたんですよ。バイト。」
「対句みたいになってるやん!」
なんで今この状況で文学的なツッコミができるんだよコイツは。
「時計見たのかよ!今11時半!時間戻ってんの!」
「お客様…じゃねぇやもう。勝手にやっといてください。」
と、女店員は俺等を注意しかけて、辞めた。
「いや店員さん、辞めたのは別にどっちでも良いんだけど俺等の席に居座らないでくれる?」
先程バイトを辞めると宣言したこの女店員は、十分ほど店の奥に消えたあと、エプロンを脱いで私服になって戻ってきた。今は俺の隣に座っている。
「そうだ、そうだ!私達の神聖な飲み会を邪魔するな!」
横を見ると、店員はとても機嫌の悪そうな顔をしていた。その顔のままこちらを振り向く。
「私がバイト辞めたの、貴方のせいなんですから責任取ってくださいよね」
「え!!なにそれなんか結婚するみたいじゃんか!」と香が叫ぶ。
カチ、カチ、と飲み屋の時計の音がする。
「おい、あんたの店時計置いてあんのか?」
「当たり前でしょ。でも秒針の音がこんなに近く聞こえるところまで置いてないですよ。」
カチ、カチ、カチ。秒針の音は消えるどころかより大きくなっていく。より大きく、より大きく、次第に頭に響くようになってきた。
自分のスマホを見てみる。時刻は丁度11時35分であった。
「おいなんだよこれ、あんたの店秒針でアラームかけるタイプの店かよ!しかも5分毎に!」
「違うわよ!こんなの初めてだし…。てか辞めたんだからもう私の店じゃないし!」
カチ。
頭の中で、何かがハマったような音がした。気がつくと横の店員は消えていて、
俺と香の二人だけになっていた。
スヌーズ・クラーク
スヌーズ・クラーク
「え?何が起こった?」
キョロキョロと周りを見渡してみるも、やはり店員は消えている。
「何が起こったか私にも分からないけど…、まぁ二人になれたしいいでしょ。」
「そういう問題…?」
俺も香も呆気にとられていると、ドタドタドタと走る音がした。
ガラッ。
「ちょっ、これ!言う事⁉」
個室の扉を勢い良く開けたのは、さっきの女店員だった。
「え⁉あなたもタイムリープ前の記憶あるの⁉」
と、香が素っ頓狂な声を上げた。いや、突っ込むところはそこじゃないだろ、と思いつつ、ほかの突っ込みどころを探してみたけどやはり香の言ったことは的を得ているのかもしれない。
俺と香はこれを含めたら2回時間が巻き戻っている。もしこの店員も記憶が保持できるのであれば、1回目の時も何か反応がなければおかしい。
いそいそと店員がエプロンを脱ぎ始める。
「おい、お前辞める気まんまんじゃねえか。」
「もう辞めてきた。」
早っ!タイムリープしたとしても決断早!
「あ、エプロン貰いますよ!」
香が店員に声をかける。
「あ、ありがとうございます。」
女店員はエプロンを預け、香の隣りに座った。
カチ。
先ほどタイムリープした時に聞こえた音がした。バッ、と全員スマホや時計を見る。
11時35分3秒。先ほどのタイムリープは脱したらしい。
前回と違う点を考える。女店員が座っている位置。そして、制服ではなく私服なこと。
他にも探してみたけど、先ほどの条件と違うのは、女店員の座る位置と私服か否かだけだった。
「おい、さっきと条件違うのお前だぞ。」
「……ですよね。」
カチ、カチ、カチ、と響く秒針の音は、だんだんと遠くなっていくように消えていった。何とも不思議な感覚だった。
「原因…私…?」
「「その通り!」」
香と、俺がほぼ同時に叫んだ。
「でも、1回目のタイムリープん時は店員居なかったしな。」
「穂香。私の名前。店員って呼ぶのやめてください。」
「あ、そっか。もう店員じゃないのか。えっと…じゃあ穂香さん、最初のループの時だから、えぇと…」
カチ、カチ、カチ、と秒針の音がはっきりと聞こえ始めた。
「も〜、確定演出じゃんこれ〜。一肇も聞こえてるでしょ?」
「えダルっ。またもう1回目やんのかよ、このくだり。」
「エプロンの紐があるであろう所にもう手をかけておきます。」
「定期確認。37分で〜す。」
カチカチカチカチ、
カチ。
周りの景色が歪み、香が歪み、店員は消えていた。
「まただよも〜。酔いさめちゃったじゃん。」
と、香が漏らす。
「あ〜、確かにタイムリープしたら酔いってどうなんだろうな。」
ガラガラっ、と扉が開く。
「うい〜す。」
店員が入ってきた。
「「ういーす。」」
もうエプロン脱いでた。
「あ、預かります。」
「あっす。」
「あ、あと私の隣に。」
「あっす。」
ゲームの確イベ2周目みたいな感じで2人が進んでいく。
「なんでこいつらもうこんな慣れてんの?」
「まぁ、長年女やってたらわかるんですよ。」
と、店員が漏らす。
「え、性別で変わるんすか穂香さ…「いや、やっぱよくよく考えたら下の名前呼びキモいですね…。やっぱ時野谷って呼んでください。」
「え?今安直にdisられた?」
呆気にとられていると、香が大爆笑し始めた。
「アッハッハ‼やっぱあんた昔からモテないよね‼」
「うるせぇよ黙れ!」
爆笑しながら、チラと時計を見る。37分57秒。タイムリープを
カチッ
抜け出した。




