奥手切は奏でたい。
「はーい、彼女達!!」
「……!!?」
「……!??」
「……??!」
三人揃ってビクッとなりました。
「あ、ごめんねー。ついついついつい」
部室へ向かう途中。
セツ達は先輩に呼び止められました。
中性的な女性の先輩ですね……。
所謂カッコいい女性という奴でしょうか。
うー、こういう事を言うと傷付く人が居るので言わない様にしないと。
「……」
「……」
「……」
「ちょっとウチ、寄ってかない?」
「……」
「……」
「……」
「退屈はさせないZE!」
「……」
「……」
「……」
「あの……?」
「……」
「……」
「……」
「こ、これは手強い!?」
「……」
「……」
「……」
「ごめんなさい、調子に乗りました……反省してます……」
最強の布陣で迎え撃ったセツ達に先輩は耐えかねた様です。
という訳で先輩の話を聞いてみる事になりました。
「タップダンス部の張切ーハリキリーです。勧誘の為に声を掛けさせて貰ったんです、それだけだったんです……。反省しています……」
どうやら部活の勧誘の様です。
先輩はすっかり落ち込んでしまっています。
「せ、せめてタップダンスを見ていってくれないか!?」
既に断られる前提で話している先輩が可哀想になってきました。
「……」
「……」
「……」
セツ達は顔を見合わせて相談してみます。
「……」
「……」
「……」
互いに頷く。
「何それ!? 無言で意思疎通しているの!?」
「……?」
「……?」
「……?」
「当然みたいな顔で首を傾げられた!?」
そんなつもりは無かったのですが、セツも驚いている所です。
「でも見てくれるんだね! やったー!!」
張切先輩は小さい子供の様に喜んでいる。
「見てくれ、ボクの華麗な踊りを!!」
先輩はタップダンス用の木の板の上に乗る。
すると凛々しい表情に変わった。
タンタタンタタタタタッタタッタタッタタタン!
板を叩く音が部室に響く。
「……」
「……」
「……」
凄い迫力です。
凄い……。
他に言葉が無かった。
「……」
「……」
「……」
「どうでしたか!」
「……」
「……」
「……」
「無言演出!?」
張切先輩は大声を上げます。
「反応全く無いの辛いよ助けて!?」
泣きそうな顔の先輩。
先程までの凛々しい表情は掻き消えていました。
「……凄い」
「……凄い」
「……凄い」
「反応が全員一緒なのも辛いんですけど!?」
張切先輩は結構我儘さんな様です。
だけど素直に凄いと思います。
「……足だけであんなに」
大きな音が立てられるなんて。
自分の靴でやってみるが音すら出ません。
「お! 良い所に目を付けたね!」
「……?」
「勘違いする人が居るんだけど。タップシューズは音が出やすい様にタップスという金属板を貼っているんですよ」
え、それって……。
その時、日和ちゃんが言った。
「……ズル?」
「ズルじゃないですよ!? 急に何を言ってくれてるんですか!?」
「……あわわわ!? 日和ちゃん!?」
自分が言った訳でも無いのにあわあわしてしまいます。
セツも思ってしまったので申し訳なく思います。
「……うぅ」
「はわ、可愛い!」
「……?」
そんなセツを見て先輩が変な事を言いだしました。
「よく見ると小さくて可愛いですな貴女!」
「……??!」
セツを見て可愛いという先輩に驚きます。
うぅ……。
「……」
「……」
二人がこっちを見ている。
「……可愛い」
「……可愛い」
「……??!」
二人は笑みを浮かべて茶化してくる。
セツは眼前で手をブンブンと振って誤魔化した。
うぅ、恥ずかしい……。
顔が赤くなっている様な気がします。
「そんな可愛い貴女がタップダンスを踏んだらカッコいいと思いませんか!」
ど、どういう理屈なんだろう……?
「ギャップ萌えです!!」
「……死語」
「ぎゃー年代がバレるー!?」
日和ちゃんの言葉に張切先輩は慌てた声を上げる。
年代はほぼ同じなのでは……?
「どうです? やってみません?」
「……」
「……」
二人と先輩がセツを見ている。
少し緊張します、でも……。
「……やってみたい」
いつも思っていた。
二人が進んだ先をついていくだけの自分。
それはきっと、二人と対等じゃない。
セツは二人と対等な友達で居たいから。
色んな事に挑戦したいと思います!
「……」
「……」
二人が嬉しそうな笑みを浮かべる。
それを見てセツも嬉しくなった。
「基本のリズムはこちらにある通りです」
先程のリズムが、ホワイトボードにカタカナで書かれている。
「じゃあもう一度、まずは御手本を見せますね!」
張切先輩は再びタップダンスを踊る。
動きをよく見て覚える。
それだけはずっとしてきた事だった。
「どうですか! できそうですか?」
正直難しいと思った。
「……!」
でもできるできないじゃなく、やってみたいから!
「このサイズなら入るかな?」
先輩に渡されたタップシューズを履くと、サイズも丁度いいくらいだった。
木の板の上に乗ると軽く靴底で叩いてみる。
良い音が響いた。
木の板が敷かれているのは、金属板で床を痛めない為という理由もあるのだろう。
「……!」
「おぉー、やる気ですね!」
「……がんば!」
「……切ちゃん頑張って!」
二人も応援してくれる。
「初心者には難しいかもですが、チャレンジです!」
先輩のその言葉と共に、足で板を蹴り出す!
タンタタンタタタタタッタタッタタッタタタン!
「……はっ!!」
気が付けば踊り切っていた。
「何でできるんですか!?」
先輩が声を上げて驚いている。
「……何ででしょうか!?」
セツ自身も驚いていた。
「驚きの才能ですよ!? 天才さんですか!?」
「……」
「……」
「……」
「無言演出!?」
「……凄い」
「……凄い」
「……??!」
「ボクと同レベルの反応なんだけど!?」
先輩は少し落ち込んでしまった様だ。
な、何という事だ……。
セツが挑戦したばかりに先輩を傷付けてしまった。
うぅ……。
申し訳ない気持ちが出てくる。
「……ごめ」
「ノンノン!」
「……??!」
「ボクはこんな事ではへこたれないさ!」
そう笑う張切先輩。
セツに気を使ってくれたのだろう。
素直にカッコいいと思う。
その時、聞いた事のない異質な音が響いた。
「ポポポポポポッ」
後ろを振り向くと、男性の先輩が二人立っている。
何時から!?
少し怖いですね!?
「また君達か……」
どうやら張切先輩の知り合いの様です。
「……?」
日和ちゃんも風華ちゃんも首を傾げている。
二人も気付かなかった様です。
いつの間にか部室に居るのは不可思議ですね。
「こいつらはゲーム音研究部の人達だよ」
「……ゲーム!」
「……音」
「……研究部?」
初めて聞くタイプの部活だと思う。
日和ちゃんがちょっと興味ありそうです。
でも、どういう部活なのだろう?
「……わくわく!」
あ、日和ちゃんが思った以上に興味ありそうです!
「彼らは何と言うか、個性的でね」
「ポンポポポンポポ」
「ペペペッペペッペペペ」
効果音の様な言葉を喋る男性たち。
「彼らはゲームの音っぽい喋り方しかしないんだ」
凄い困るやつですね!?
一体何て言っているのか、全然分からない。
どう反応すれば良いのかも分からないです!?
「……あわわわ」
あわわわしているだけのセツの隣で、ボソッと呟く人が居た。
「……タップダンスの音が?」
え、日和ちゃん……?
急に声を上げた日和ちゃんは言葉を続ける。
「……ゲーム音っぽかったので来ました」
通訳!?
日和ちゃんが通訳を始めました!?
「何だって!? 君はこの人達が言っている言葉がわかるかい!?」
張切先輩が驚く。
セツも同じです。
稀有な能力だと思わずにはいられません。
「……ゲーム好きだから」
「そんな理由で!?」
頷く日和ちゃん。
「……驚きの能力ですよ」
風華ちゃんも驚きを隠せない様だった。
セツに続き、日和ちゃんにも隠された能力が見つかってしまった。
良い事のはずなのに複雑なのは何故でしょうか!?
「……!」
不意に日和ちゃんがこちらを向いた。
「……?」
何かを思い付いた様な顔をしています。
気がする……。
嫌な気がします……!
「……切さん、御願い!」
両手を前で揃え、いつになく真剣な日和ちゃん。
御願いを断れるはずも無く。
タンタタンタタタタタッタタッタタッタタタン!
日和ちゃんに言われるままに音を奏でた。
ゲーム音研究部の方達がどんな反応をするか見たいそうです。
人前でするのはやっぱり恥ずかしい……うぅ。
「ポンポンポポポン」
「ペペッペペッペペッ」
「プルルピプルール」
陽気に騒ぎ出す三人。
怖い怖い怖いです!?
何か一人増えていますね!?
タップダンスをしている近くで、謎の擬音で会話を始める人達。
反応は思った以上の破壊力だった。
一体何を話していたのか……。
日和ちゃんが翻訳してくれました。
「……優しい音だ」
「……愛を感じます」
「……神」
「……翻訳結果が予想外過ぎるよ!?」
思わずセツは声を上げてしまった。
プルルピプルール=神なの!?
何の神なの!?
「……べた褒め、セツちゃんのダンスは神レベル」
「……そんなに!?」
褒められるのは嬉しいけど。
ちょっと大袈裟過ぎて上手く飲み込めないです……。
「じゃあ今度はボクが奏でてみようじゃないか!!」
「……??!」
急に対抗意識を燃やした張切先輩が声を上げる。
何だか大変な事になってきました!?
今度は木の板に乗った先輩が華麗に踊り出す。
タンタンタタラタタラタタタンッ!!
ゲーム音研究部の判定やいかに!
「ポポンポポンポポ」
「ペペッペペペペペッ」
「プピル」
相変わらず意味が分かりません。
日和ちゃんの翻訳結果に期待です!
少し考える様な仕草をした後、日和ちゃんが言った。
「……悲しい音だ」
「……愛は死んだ」
「……少し走り過ぎて音の流れが可笑しくなっています、基礎から見つめ直しては如何でしょうか?」
「嘘だぁー!?」
先輩は崩れ落ちる。
き、厳しい判定です!?
「最後プピルしか言ってなかったじゃないかぁ!?」
予想外の評価に悲しそうな先輩だった。
先輩は膝をついて落ち込んでしまう。
その様子を見ていたゲーム音研究部の方達は言った。
「サンプリングはこのぐらいで良いかな」
え……。
「ありがとう、部室に戻ります」
普通に喋っていますね……?
「ピーピピプル」
一人以外!?
「……ちなみに、最後は何て?」
一応日和ちゃんに聞いてみる。
「……チャオ」
「……日本語ですら無いよ!?」
思わずツッコんでしまった。
その様子を見ていた風華ちゃんが笑いだす。
「……切ちゃん面白過ぎっ」
「……えぇ!?」
まさかの反応に驚きを隠せない。
「……チームのツッコミ役は任せた」
「……それ必要なの!?」
日和ちゃんの言葉にまたも思わず言ってしまう。
「……」
「……」
二人は笑ってこちらを見た。
親指をグッと立てている。
あぁ、何という事でしょう。
言葉を使うのが下手なセツが、何故!?
そう思わずには居られない。
だけど……。
何故か、そんなに嫌じゃないのが不可思議だった。
「……帰りますね」
「……し、失礼します」
「……チャオ」
項垂れたままの張切先輩に声を掛けるとセツ達は部室を後にした。
「ひゃははは、今に見てろゲーム音研究部ぅううう!!!」
後から狂った雄叫びが聞こえてきましたが、聞かなかった事にしたのです。
本日の活動調査。
タップダンス部〇(凄い)
ゲーム音研究部〇(不可思議)
共に元気に活動中。
と、言う事で終わりです!
。本日の向き合いポイント
自らの能力と向き合った皆。
ツッコミの腕もまだまだ成長途中!
。次回予告
寄見日和は○○たい!
御清覧ありがとうございました!!
今月も何とか投稿できました!
別の連載を三つぐらい終わらせる荒行の中で、何とか形にできたのは皆様の御蔭です><
今回、セツちゃんがツッコミ役に回るという展開になったのは私自身意外でした。
話の流れで思わず出てしまったツッコミシーンが、キャラクターの意外性として噛み合っていると思ったのでそのまま採用した形です。
無口で奥手なセツちゃんがツッコミ役というギャップ!
これから広げていきたいと思います!
最後に、最近完結した自作”扮装『乙女』と『中年』傭兵”を御紹介いたします!
男装した女子がオッサン傭兵の元で修行して、赤い竜に復讐を果たすまでの物語です。
女の子のブチギレアクションが見所の作品となっております!
個人的には気持ちよく終わったので、いつもと違う私の作品が見たくなったなぁ!
という特別な読者様がいらっしゃいましたら良かったら一読下さいませ><
では、また来月御会いしましょう!!




