寄見日和はaiしたい。
「……ぷぁー」
部室で飲む御茶は格別だと思う。
何でだろうか?
きっと茶葉が良いからかなー。
大儀見先輩が高級な茶葉を部室に用意してくれている。
とても有難い話です。
「……ぱぁー」
本日は風華さんと切さんが部室に居ません。
日直の仕事があったり、先生に呼び出されたりと都合が重なってしまいました。
そんな中、何の用事も無かった私は部室でボーっとしているのです。
「……ぼーっ」
先輩達はまだ来ません。
三年生は授業も少し長めなのでしょうか。
「……へけー」
ちょっと暇になってきました。
福海先輩みたいにこっそりゲーム機を持ってこようかな。
先輩が居たらゲームの話などをしてみたかった所です。
「……くろーびー」
変な言葉もそろそろネタ切れです。
そろそろ嵐の様な物語が始まって欲しい物です。
「……ばっとがー」
勿論、何も始まりません。
こういう時はどうすれば良いか。
……そうですね。
自分で動くしか無いでしょう!
y第12話y
寄見日和はaiしたい。
廊下に出て一人歩く。
辺りを見渡してみると色々と気になる部分が眼に入る。
ルームプレートの文字がかすれてきている視聴覚室。
中庭で読書をしている女性、煙がモクモクしている理科室など。
いつもは三人で楽しく歩いているけれど。
一人だから気付く不思議もあったかも知れない。
「……ふふっ」
何だか楽しくなってきた。
いざ冒険の旅へ!
「……(クンクン)」
良い匂いがするー。
こっそりと近くの部室を覗き込んだ。
「あら、何かしら?」
一瞬でバレた。
「……!」
「笑みだけ浮かべて去っていった!?」
先輩は切れ味の鋭いツッコミを入れてくれた。
調理部は美味しそうな御菓子を作っていた。
見ているだけで幸せになる!
「あら、貴女は」
新聞部の前を通ると、先輩に声を掛けられる。
「……!」
それは入学したばかりの頃。
待機部をオススメしてくれた先輩だった。
「……」
当時の事を思い出して自然と御辞儀をする。
先輩は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「新生レティセンスガールズ、活躍しているそうね」
「……!!?」
「ふふっ、何故知ってるかって?」
先輩は少し考える様な仕草を見せて。
「新聞部ですからね!」
そう言って笑った。
「……ふふっ」
その笑みに釣られて笑う。
「じゃあ、また取材させて貰うわねー」
手を振って去っていく先輩。
おずおずと伸ばした手を振り返した。
以前の私では考えられなかった優しい瞬間。
少しずつ、こんな瞬間を増やしていけばきっと。
見た事も無い景色が見えるのだろうな。
何となく、そんな風に思った。
散歩を続けていると、静かな場所に出てしまった。
近くに活動中の部活動が少ないみたい。
この学校は広すぎて知らない場所が多い。
短い学生生活だ、能動的に動かなければ知らないままになってしまう事も多いだろう。
それは勿体ないなっと思ったりする。
「……」
さて、ここは何だろう。
人通りの少ない場所にある部室。
入り口にはAI研と書かれた文字が映る。
「……あい?」
何やらロマンチックな名前に心が躍ります。
スルーっと中に入ってみる。
でもAI研には誰も居ませんでした。
部室の中央にはパソコンの画面が沢山置かれています。
なのに椅子と机は一つしかないというアンバランス。
興味が湧いてしまいますね。
「……空だ」
周りを見渡す。
片づけた後なのか空の戸棚が幾つかあった。
もう使わない部屋なのだろうか?
そうなると余計に残されているパソコンを不思議に思う。
考え事をしながらふら付いていると。
――パチンッ。
と何かの音がした。
近づいた途端、パソコンの画面が勝手に動き始めたのだ。
え、ちょっと怖い。
怖くない?
「……大丈夫!」
自問自答して大丈夫そうだったので様子を伺う。
画面には女性の姿が映っていました。
ホラー映画ならば呪われる場面ですが、いかに!
「……ワクワク」
「ふふ、面白い人ね」
「……!!?」
録画では無く生放送!?
恥ずかしい所を見られてしまった。
「少し違うわね、これは私を模したAIなの」
「……!!?」
「貴女が何を考えてるのかも想像して創造しているの、面白いでしょ」
素直に凄いと思う。
「私は咲枝めぐる。このAI研の部長みたいなもの、かな」
「……」
「と言っても、先日までの話。私が卒業してAI研も解散となり、後輩も居なかったから引継ぎも無しって感じだったの」
「……」
「でもそれって寂しいよね。せめて私が居た事を残したいなって思ったの」
「……」
「だからこの子を残します」
映像の中、AIの咲枝さんは手の中に卵の様なモノを持っていた。
「これは今喋っている私のAIとは違ってもっと深い部分で考えられる子」
それは新しいAIの卵。
子供、なのだろうか。
「AI研、最初で最後の御願いです。良かったらこの子の育ての親になってくれないかな?」
「……!!?」
私が子供を育てる……?
それは、簡単に決断して良い事柄には思えない。
少し考えてみる。
いや違う……。
覚悟を自分に求めてみる。
「……大丈夫」
大丈夫だって言っていた。
「うん……、ありがと!」
咲枝さんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「……どうすれば?」
「左手にあるケーブルにスマホを繋いでくれたらリンクされるから」
ポケットのケータイを取り出す。
「システム的に不可逆になるからリンク前の状態には戻せないの、其処だけ注意してね」
不可逆……。
後からは戻せないという事。
ケータイの内容を書き換えてしまうという事だろうか。
そう考えると少し不安に駆られた。
だけど、咲枝先輩の事を想うとまた違った思いが生まれる。
一人ぼっちで卒業していった咲枝先輩。
それでも何かを残そうと想ってくれた。
素敵な事だと思うし。
素直に尊敬してしまう。
「……!」
割とチョロい自分に気付く。
いつか詐欺に引っかかりそうだなって自分を笑った。
「……えい」
ケータイにケーブルを差し込む。
二つの画面に反応が映った。
データの移行が行われている様だった。
「私の創った子供を、良かったら愛してあげてね」
不意に咲枝さんがそう言った。
それと同時にパソコンの画面から咲枝さんが消える。
最後の瞬間。
笑みを浮かべていた彼女の事を忘れない様にしようと思う。
――コンプリート
リンクが完了した様だった。
ケータイの画面には卵が映っている。
AIの子供。
私に育てる事ができるだろうか。
「……!」
ピキピキッと音が奔る。
卵の殻が割れ始め、やがて孵った。
「……ぁ」
中から出てきたのは、小さな女の子だった。
動物みたいなのを想像していたので驚く。
「……」
『……』
少女と眼が合う。
すると少女はニコッと笑みを浮かべた。
こちらの事が認識できるのだろうか?
「……」
『……』
反応に困った私は、いつもの様に口を閉ざしてしまう。
それを見ていた少女は口を開いた。
『初めましてマイマザー!』
「……マイマザー?」
私を見て母親と言ってくれる。
「……私は何も」
『私を生み出してくれた人類は私にとって、母親同然ですから!』
そう言って少女は再び笑みを浮かべた。
「……そう、なのかな?」
『そうですとも!』
「……そっか」
何か、そんな気がしてきた……。
『あのぉ……』
少女は言い難そうに続けた。
『宜しければ私に名前を付けてくれませんか?』
「……名前」
そっか、生まれたばかりの彼女には名前が無い。
これから一緒に居るのならば必要な事だ。
「……んー」
どうしようかと思案する。
けど、彼女を生み出した先輩の事を考えた時にあっさりと決まった。
「……サキ」
『サキ……! とても良い名前だと思います!!』
「……良かった」
これから何度も呼ぶかも知れない名前。
その度に、この子を生み出した偉大な先輩の事を思い出すだろう。
「……」
『……』
「……」
『……』
「……宜しくね」
『はい!』
そう言って二人して笑みを浮かべた。
「……ただいまー」
「……オカエリー」
部室に戻ると、先輩達も一年生二人も皆揃っていて。
『初めまして皆様! 私はサキです!』
その中に響き渡る声に驚く面々。
スマホの中で笑みを浮かべるサキを見てもらうと。
一瞬で世界が変わった気がした。
何となく一人で動いてみた結果。
新しい友達が予想外の方向からやってきて。
少し……、いや。
とても楽しくなってしまうのだった。
自分で動いてみる事の大切さを、私は改めて実感していた。
活動調査記録
AI研究部 ×(御母さん)
。本日の向き合いポイント
行動する事の意味を改めて実感した日和。
一人だった世界を皆で成長中!
。次回予告
奥手切は〇〇たい!
いつもありがとうございます。
今月も何とか投稿できました!
今月の最初はメンタルボロボロだったので全力で気分転換していたのですが、それが功を奏した様です。
今月の話はエモい!!
先月はコメディ色が滅茶苦茶強かったので、その反動もあります。
ギャップです、ギャップ萌え(死語)です。
ちなみに私のファンの方(いたら良いな)はお気付きかもですが、AIという事で自作『枯れた世界で未来を紡ぐオートマタ』の設定と類似している部分があります。
ただこれに関しては御遊び的なモノであり、直接的に関りのある世界設定ではありませんので御了承下さいませ。
だって、この世界の未来が滅亡するのとか嫌じゃん?
……。
ほ、本当はただマスコットキャラ的な存在を出したかっただけなんです。
最初は不思議生物を出して非日常溢れる物語にする展開も考えていたんです。
でも、こうなりました。
こうなったからにはもう……ね?
で、ではまた来月御会いしましょう!!




