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消去の力


「すぅ……すぅ……ん……すぅ…すぅ…」


ささやかな寝息をたてて、ベットに横たわる

その顔はまるで安心しきったような緩やかな表情でーーーーリューネが俺のベットで寝ていた



今日、3回の号泣を見せてくれた彼女は先程泣き疲れて眠ってしまった。


しかし……


「これで、色々謎が解けたな」


リューネから寝る前に聞いた事を整理する


まず、リューネの黒髪は『原初』の象徴でもあるそうだ。つまり、原初の力を持つものが例に漏れず髪色が黒らしい。

……魔族関連ではなかった。忘れよう、うん


次に憶測も混じるが、この世界の人間は劣等感の裏返しなのか噂を信じやすく、先導にも弱い

詳しく言うと原初の呪いだの、気持ち悪いだの全部が全部ただのデマと思い込みだった。それなのにもかかわらず、誰も疑わずに信じ続けた


明らかに不自然だ、お人好しと言われた日本人の方がまだ疑り深い。

おそらく、地球と違って力の差がはっきりと明確に別れてるこの世界では民衆が大きな力に流されやすいような教育を受けているのだろう

俺の時も、『役に立たない勇者』の認識をされてからはかなり非難の目を向けられた

あれが民衆の『掃き溜め』って所だろう



(この世界で奴らに復讐する時は、ある程度の地位か後ろ盾を手に入れた方がいいかもしれないな)


日本などでは、明らかに地位が高いと目立ってしまい疑われやすい。

汚職などが次々に見つかるのがいい見本だ


しかし、創作物中の異世界は違う


領主や貴族などは日本の政治家なんかとは比べるにも値しない



圧倒的な権限、明確な身分の差、不合理極まりない裁定、握りつぶされる不満

それら全てが揃い、ある程度許される


無論、勇者や巫女に直接手を下すとなれば最早伯爵か王族まで手を回さなければならないが、そんな無謀な事はしない。その上俺は具体的な地位などに興味はないし必要もない、むしろ邪魔だ



俺が欲しい物は表沙汰にできない交渉材料だ

貴族や領主などを脅せるネタ、物。

なんでもいいが、ある程度行った事を実現出来る程強力なものが必要だな



やるべき事を頭の中で整理しながら、俺のベットで寝ているリューネに目をやる


(本来なら能力を消去する力を持つ奴なんて是が非でもこっち側に引き入れたいが、性格がな……)


出来る事なら味方にしておきたいが、リューネ自身はまだ堕ちてない。裏切られたショックで変質した俺とは違う



(俺の復讐の事を知ったら、止めるかも……いや邪魔をするかもしれない。そうなったらもう敵でしかない、気は進まないが殺すしかない)



勇者どものステータスやlevelは知らない

だから、仮に能力を消去されて勝てる相手かもわからないし、もしかしたら負けるかもしれない


不安材料は持ち込むべきではないか……



俺がリューネを気にかけている理由は俺と境遇が似てるだけではない。

今の境遇を受け入れているリューネが気にくわないのもある。まるでかつての自分を見ているようで呆れといらいらが募ってしまう

その為、今の状況を打開してくれると俺がスカッとする。ただその為と単純に興味があったから言い募っただけだ、それ以外の他意はない


本来ならこの世界の人間ってだけで必要な時以外関わり合いたくもないのだが、今回が特例なだけでこの世界の人間……いや、人間なんて大嫌いだ



だが、今は関わってしまってる

……矛盾した思考に頭が痛くなる

何故関わる?信用できるのか?どうせまた裏切られるだけだ、今のうちにーーーー


…………オレはイッタイナニをシテいる⁇



復讐心と怒りや憎しみ、不信感に囚われたぐちゃぐちゃの心は何を基準にするべきかを曇らせていた。それは自分自身にすら及んでいた事に気づいてはいなかった


頭を落ち着かせる為に、推測などの作業を一度止めて頭を空っぽにする事にした


リューネが起きたのは、その10分後だった




「俺に能力を一度使って見てくれ」



俺は起きたリューネに能力の消去実験を頼んだ

理由は単純で興味があったから

どんなに風に消されるのか気になったからだ



「はい!わかりました!」

そう純粋な笑顔を浮かべながら答えるリューネは

先程の遠慮深い態度とは打って変わり、年相応の少女になりつつある


拒絶されなかった事が余程嬉しかったのか

それはもう本当に機嫌が良かった



…………その思いに俺はこたえてはやれないが



「じゃあ……行きますよ?」



俺の突き出した腕に手を触れさせて検証する

解除されるのは『身体強化』だ




「行きます!…………消去」



「っっっ…………!!!」

バキャァ!という音が聞こえてもおかしくない様な体に纏っていた鎧が砕ける感触


そして、からだの表面が溶けて消滅してしまう

と表現すべきだと思う消去感覚に思わず冷や汗をかいてしまう


身体強化が解除されただけにも関わらず明らかに感じるパワーダウン、これが自分の意思での解除と強制解除の違いか



リューネに礼を言おうと顔を向けた瞬間




「………………え?だ、れ?」



は?何言ってんだ、コイツ


そう思ってリューネの目を見た途端に俺は全てを理解した




赤茶色では無く黒色の髪

同級生や先輩に散々童顔と言われた顔

かなり色白で外に出ていない証明の肌



リューネの瞳に映っていたのは

作り上げたレイジ・シャルーではなく

俺本来の姿である八坂 誠そのものだった



リューネの消去は本人の能力だけでなく、魔道具などの付与能力すら解除してしまうらしい


動揺を大きく露わにしているリューネ



俺は…………大きな溜息をついた


どうやって誤魔化そうか
















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