決して人助けではない
「さてと……帰るか」
アレからギルドに行き、依頼(ゴブリン退治)を受けてサクッと終わらせて宿へ向かう
ゴブリン?ああ、あの醜悪で『グギャギャ』とかしか鳴かない雑魚?デコピンで死んだわあんなの
まぁそのおかげで、色々試せたし金も僅かばかり手に入れた。その上キチンと時間も調整して怪しまれる事なく『初達成おめでとう』とか言われたし、とりあえずは問題ないな
あの先輩?あんだけ脅したんだ。それで言えたら逆に凄いわ、まぁ次は無いけど
そんな事を考えながら歩いていき、ようやく宿が見えた…が
「パァン!!!!!」
乾いた音が辺りに響くが幸いと時間も少し遅く周りに人はいなかった
コレはビンタだ。しかも痛いやつ
反射的にその方向を見ると、目の端で、音源である男の頬と音を立てた本人の女の子を捉えた
「………おばぁちゃんの…形見…許さない!」
「ああ?……あの変人のか?そんなに大事か、こんな物がか⁉︎」
男の方が何か光るものを指先で持っており、頭上に掲げていた。
女の子の方は、それを必死で奪い返そうとしているが生憎と身長が足りずに取れないでいる
……正直言って見ない方が良かった、厄介ごとにも程がある。あんなの助けたりでもしてみろ。アイツの仲間みたいな奴らがこぞって湧いて来そうだ。嫌にも程がある
目線を外して、知らないフリをして歩みを進める
その間も言い合いは続いており、絶えず声が聞こえるが無視する
そして、ようやく宿の前に辿り着き扉を開ける直前にそれは起こった。
バキャァァ!!!
「あぐぅぅ⁉︎」
「……な、に……?」
殆ど人が居ないとはいえ、少しガタイのいい男が女の子を蹴ったのだ。
(流石に、少しやり過ぎだろ⁉︎いくら異世界でも、イジメの限度を超えてるぞ⁉︎)
この時点で既にその異常性に薄々感づいていて、宿に入らずその光景を見る羽目になった
蹴り受けて倒れた女の子に男が
連続して蹴りを入れる光景を
バキャ、バキ、ベキ、バキャ、ベキ、ベキ……
「この人間もどきが!お前なんかが!俺様に!逆らってんじゃねぇぞ!この化け物ぉ!」
「あが!ぅぐ⁉︎……ゲホ、ゲホ……ぐ、ぁぁ⁉︎」
容赦なく襲いかかる一撃、女の子も先程の威勢などなくただただ、ひたすらに蹴りを受け続けていた。
(……関係ない、俺は関係ないんだよ!余計なことをするな⁉︎自分の為に生きるんだろ、俺は⁉︎)
俺は、宿の目の前から動けなくなっていた
確かに目に余る光景だ。だが、俺にはそれ以上の物を感じる
疎外感、理不尽、不幸、嘘、弱者……
今あの子が感じているのは、この世界に来たあの時と同じ……いや、多分似ている、同じだなんておこがましい。
(アイツは、向かっていた。力がないのに)
あの時の俺と徹底的に違う事。それは……立ち向かうことだ。
弱いから、能力がないから、ステータスが低いから。
そんな事など考えずにあの子は譲れないものの為に向かっていった、本音をぶつけた
俺はそんな事は出来なかった、出来るわけが無いと思っていた、目を背けていた
だからこそ、この世界が嫌いなんだ
力の差が歴然としているこの世界は
(………不快だ。俺はこのままこんなクソみたいな感情を背負って生きていくつもりはない)
俺は、今イライラしている、一日に二度もイライラするなんて、とんだ厄日だ。
(………、あくまで、あくまでも自分の為だぞ)
決して人助けではない…断じて違う。
誰に言い訳しているのかわからないがコレで大義名分ができた。
深く、それはもう本当に深いため息を吐き
石畳が砕ける感触と共に、3割の速度を出した
ベキャ!!!ボォォウ!!!
その音と共に、いや寧ろ置き去りにするように男と女の子との間に割って入る
男は、ポカン…と口を開けていて女の子は目を丸くしていた
2人からしたら『どっから現れた⁉︎』って感じだろう、多分きっと。
はっと我を取り戻した男が
「テメェ!!!なんなんだこの『口を開くな!!!ドカスが!!!』うぐぁぁぁーー」
……キン、カン、カラカラ……
『テメェ!!!なんなんだこの野郎⁉︎邪魔すんな
あっち行け!』
……と言い終わる前にぶっ飛ばしておいた
なんで台詞がわかるか?え、だってまさに三下のドクズが言いそうな発言だから
ちなみに殺しはしてない。ちゃんと10分の1くらいまで手加減しておいた
あの先輩(笑)もそうだが街中で殺すと少々面倒な事になる
ステータスやレベルを見せろなんて絶対に言われたくは無いし、捕まるなんて論外だ
「………つーか、コレどうしよう…?」
ドカスはぶっ飛ばしたが、まだ驚きに満ちて固まっている女の子を見て『やれやれ、どうしたものかな?』と思案する事になった
さて、本当にどうしよう?
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