適正試験終了とベルガーという男
「……お、やっと来たか」
闘技場で待つ事10分、ようやく上から3人が降りて来た
1人は何故か不機嫌そうな受付嬢
もう1人はゴツいおっさん、こちらも渋面顔だ
最後の1人は、ヘラヘラ笑っている赤い髪で槍を持っていた狐目の男だった
「俺はギルドマスターだ、さっそくで悪いが適正試験としてこの男ベルガーと戦ってもらう」
何と、このゴツいおっさんはギルドマスターだったらしい。そして相手はベルガーと言うらしい。とても、どうでもいいけど
「………あの」
「………ん?何か様ですか?」
そんな失礼な事を考えていた時
突然、さっき対応してもらった受付嬢が小声で話しかけて来た。
「危ないと思ったら、すぐに棄権して下さい」
は?何言ってんだ?この人
思わず聞き返そうとしたが、彼女はすぐに身を翻して向こうへ行ってしまった
「準備は万端か?」
ギルドマスターが俺にそう問いかけてくる
準備?そんなものない
「あ、はい。いつでも」
口には出さずにあえて、にこりと笑ってみせる
ポーカーフェイスは得意だからな
「なら両者!所定の位置に!」
そして両者が指定されたラインに立つ
「では、戦闘始め!!!!!」
こうして、適正試験が始まった
俺としてはいい機会だ、今の俺がこの世界のどの程度か知りたいからな。さて、始めますか?
ーーーーーーー10分後……
………わからない
何故棄権しろなんて言われたんだろ?
そんなに俺が弱そうに見えたのか?
え?何でって?
だって…………コイツ超弱いし
ブォォォォン!!!!!
そんな事を思いながら、ベルガーとやらが繰り出す木の槍の攻撃をかわす。
これは模擬戦の為、本人の武器ではなく木で出来た槍を相手は使用していた。
使い慣れていない木の槍を装備しているせいか、攻撃が物凄く遅いし、隙だらけ
しかも、攻撃一発一発が妙に大振りで躱すのが簡単すぎるしそれ以外には何もして来ない
本当ならば隙だらけの胴を殴って、終わらせる筈
……なのだが、この試合に勝ってしまうと流石に目立つかもしれないから遠慮しておく。
………このまま終わるまで避け続けるか
「な、何だ⁉︎この化け物は⁉︎本当に初心者か?」
一方で初心者潰しのベルガーは得体の知れないこの少年に恐怖すら感じていた。
その理由は、単に攻撃が当たらないのである
最初は丸腰で試合が始まった為、舐めてかかった節はある。
だが、攻撃を打ち込んでも、打ち込んでも掠る事すらない。しかも涼しい顔をしていやがる
つまり、避けるのは簡単だ。という証だった。
だが、何故か攻撃を仕掛けてこない
考えられるのは、力のステータスが低いか
……舐められてるかのどちらか。
「クソが⁉︎舐めてんじゃねぇぞ!餓鬼が!!」
怒声を振りまき、再び攻撃を仕掛ける
ベルガーという男は才能のある人間だった
能力、『加速付与』という対象を加速させるという便利な力を持って生まれ、ステータスにも少々恵まれていて期待の新星として冒険者になり、
あっという間にCランク迄登りつめる。
……しかし、そこまでだった
冒険者でBランク以上は最早名前が地域では収まらずに国全体や国境すら越える事もある
それほどに、ベルガーの上は厳しいものだった
『冒険者のC止まり』
とも言われており、例に漏れず彼はそこで止まった。
ベルガーは、その日から荒れた
自分は出来る奴だと思っていたから、そう教えられたから、そう言われ続けてきたから。
だが、蓋を開けてみれば何だ
いつの間にかみんなの興味は失せ、残念の烙印を押されてしまった。
……そしてある日、ふと適正試験の呼びかけを聞いた。そこにいたのは期待に胸を躍らせている初心者だった。
何故かイラッとした、言ってやりたかったんだ、希望なんかない。すぐに打ち止めが来ると
そんな事も知らずにノコノコと期待をぶら下げてくるど素人どもに腹が立って仕方なかった
そこから、俺は初心者どもをぶちのめした
期待を砕いた、希望を捨てさせた。
中には合格した奴もいるが、みんな満足した結果は得られていなかった
いつしかその行動に快感を覚えていた、胸のモヤモヤがスカッとした。そう感じるようになった頃に俺に『初心者潰し』のあだ名が付いた
そうして俺は初心者を潰してきた……のに
「そこまで!!!適正試験終了!!!!」
なんでだ
「レイジ・シャルー、合格!!!!」
何故コイツは、潰せないんだ⁉︎
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