表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30歳エンジニア、異世界へ  作者: 玉玉G


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/16

第八話:怨嗟のバックログ

憲兵隊の失態に激怒するバルタザール男爵は、酒場で面潰しに遭った逆恨みから健二へ刺客を放つ。一方の健二はスマホのログで男爵の怪しい動きを検知しており、セリアと共に自滅へ追い込む迎撃を計画する。

憲兵隊が這々の体で撤退した翌日。

バルタザール男爵領の領主館、その重厚な執務室には、ガラスが割れんばかりの怒号が響いていた。

「……不良品だと!? 我が家系が莫大な金を投じて作らせた魔導粉末が、ただの欠陥品だったというのか!」

机を叩きつける男爵の顔は、怒りと屈辱で般若のように歪んでいる。

前夜、酒場から戻った憲兵隊長は、いまだにほんのりと紫色に発光している自分の手を隠しながら、深く頭を下げていた。

「申し訳ございません……。しかし、現に街中の金属があの夜、一斉に反応を示しました。粉末の触媒が経年劣化により、金貨の固有魔術ではなく、金属全般の成分に誤反応を起こしたとしか……」

「黙れ!!」

男爵は手近な銀の置物を憲兵隊長に投げつけた。ガシャーンと鈍い音が響く。

「あの酒場にいた、あの平民の男だ……。あの男が口を開き、エルフの盾に触れた途端にあの異常現象が起きた。偶然にしては出来すぎている!」

「ですが男爵、証拠がございません。あの場にいた平民どもも、あの男の煽りに乗って我が憲兵隊を白い目で見ておりました。これ以上強硬手段に出れば、領民の暴動に繋がりかねず……」

憲兵隊長の正論は、今の男爵の耳にはただの雑音だった。

男爵は、血走った目で窓の外、健二たちが滞在している宿屋のある方角を凝視する。

(証拠などどうでもいい。私の直感が、あの男の、あの小馬鹿にしたようなヘラヘラとした目が『犯人だ』と告げている……!)

プライドをズタズタに引き裂かれた貴族の執念は、執拗で、そして陰湿だ。

男爵は引き出しから、一つの不気味な黒い魔導通信具を取り出した。

「……破産させられるほど甘くはないぞ、薄汚いネズミめ。表の兵が動かせぬなら、裏の『専門職プロ』を雇うまでだ」

男爵の細い指が、通信具の魔力を起動する。

彼の狙いは、健二の暗殺、あるいは身ぐるみを剥いでの拉致。あの酒場での一件以来、男爵の中で健二への猜疑心は、絶対に消えない「怨み」へと変わっていた。

一方、お気楽なエンジニアは……

その頃、健二は宿屋のふかふかのソファに深々と腰掛け、セリアが淹れてくれた最高級のハーブティーをすすっていた。

「あー、やっぱり仕様変更(パッチ適用)の後は、こうしてゆっくりログを眺めるのが一番だな」

手元のスマホ画面には、バルタザール男爵の「警戒度」を示す独自の内部データが表示されている。

酒場の一件以降、男爵の周囲の魔力残量が妙な動き(通信魔術の形跡)を見せているのを、健二のスマホはしっかりと検知(ログ出力)していた。

「男爵のやつ、泳がせておいたら案の定、裏で何か面白いコマンド(悪巧み)を叩き始めたな。破産させたら一発で俺が疑われるから手は出さなかったが……向こうから仕掛けてくるって言うなら、これは『正当防衛』の範囲内(バグ修正)だな?」

「健二様、いかなる害悪プログラムが近づこうとも、私がすべて削除デリートいたします」

セリアが美しい銀髪を揺らし、忠実なバグ取りナイトとして微笑む。

男爵が裏から回してきた「刺客」という名のアナログな脅威。

それを健二がどう迎え撃ち、どうやって「男爵自身の手で自滅」するように仕向けるのか。

30歳エンジニアの、完全なるリスクマネジメントが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ