第五話:奴隷市場のソースコード
契約魔術をスマホでハッキングし、対価を払うことなくエルフの少女を奪取した健二。怯える彼女に対し、容赦なくお気に入りのゲームキャラ「セリア」のデータを上書きし始めます。世界のルールも他者の尊厳もスマホ一台でバグとして処理し、己の理想のままに世界を書き換えていく、倫理なき侵食の始まりです。
辺境都市グラン・バザールの裏路地。重い鉄格子の向こうには、世界各地から集められた「商品」たちが虚ろな目で座り込んでいた。
その最奥、最高級の檻の中に、彼女はいた。
煤に汚れてはいるが、ひと目でそれと分かる美しい金髪と、尖った耳。情報屋の言っていた「本物のエルフ」だ。
「おい、そこの兄ちゃん。冷やかしなら帰んな。そいつはエルフの王族の生き残りで、金貨500枚は下らねえ最高級品だ」
下卑た笑みを浮かべる奴隷商人の前で、健二は無言でスマホを取り出した。彼にとって、この世界の契約魔術も、価格設定も、すべてはただの「書き換え可能なオブジェクト」に過ぎない。
【対象:奴隷契約の魔導書(暗号化)】
【セキュリティ脆弱性を検知。ブルートフォースアタックを開始します……】
【100%……クラック成功。管理者権限(Root)を取得しました】
「金貨500枚? いや、高すぎるな」
健二が画面の数値をフリックし、『500』から『0』へと書き換える。
「……あ、あれ? おかしいな、こいつの所有権の魔術光が消え……え? 兄ちゃん、お前いつの間に契約を!?」
「悪いな、利用規約(規約違反)のバグを突かせてもらった」
唖然とする奴隷商人を残し、健二は檻の鍵を遠隔で解放する。怯えた目で自分を見上げるエルフの少女の前にしゃがみ込み、スマホを彼女に向けた。
「さて、それじゃあお前の肉体に、俺の『理想のデータ』を上書き(コンパイル)させてもらおうか」
【新規外部デバイスを検出】
【データ『セリア(純情☆アクア・プリンセス)』の流し込みを開始します】
少女の身体が淡い光に包まれ、その瞳に「地球のゲームAI」の光が宿り始める――。
健二のエゴイズティックな異世界侵食は、ここからさらに加速していく。




