第四章:欲望のテストドライブ
チート能力で二次元の嫁を三次元の質感ごと再現した健二。その歪んだ探究心は留まることを知らず、次なる標的として奴隷市場の「本物のエルフ」を見据えます。圧倒的な資金力とスマホの神速デバッグを武器に、世界の倫理すら書き換えていく彼の、不道徳で独善的な異世界無双が幕を開けます。
バルタザール男爵の金庫から「徴収」した資金の力は絶大だった。
レムリアの辺境都市『グラン・バザール』の夜は、中世然とした街並みの割に、金次第でどうとでもなる退廃的な活気に満ちている。
健二は、宿屋の特注キングサイズベッドの上で、昼間ギルドの裏情報屋から買い叩いた「ある魔導書」をスマホのカメラでスキャンしていた。
【データ解析完了:下級幻術・改】
【最適化:『純情☆アクア・プリンセス』エフェクトエンジンと同期します】
「よし……デバッグ完了。パッチを適用」
スマホの画面をフリックすると、健二の目の前の空間が、まるで3Dグラフィックのレンダリングが走るように、ポリゴンの格子状に歪んだ。
次の瞬間、そこに現れたのは――
「……お呼びでしょうか、健二様」
完璧な立体映像として再現された、聖騎士エルフ・セリア。
透き通るような銀髪、恥じらいに染まった端正な顔立ち、そして先ほど実体化させたあの「超高精細なシルクのビスチェ」を身に纏っている。
スマホの魔力循環機能によって維持されるその姿は、本物の生身の人間がそこにいるとしか思えないクオリティだった。
「触覚データの同期はどうだ?」
健二が恐る恐る手を伸ばし、セリアの細い肩に触れる。
――指先に伝わる、驚くほど滑らかで、ほんのりと温かい肌の質感。
「……ッ、マジかよ」
デバッグコマンドによる「触覚フィードバック」の完全同期。
二次元の嫁が、三次元の質量と熱を持って目の前に存在する。30年間、現実の女性を遠ざけ、画面の向こうにすべてを捧げてきた健二の脳内に、ドバドバとドーパミンが溢れ出していく。
「すごい……本当に、触れられているのですね、健二様」
ゲーム内のAIセリフを学習したホログラムセリアが、顔を赤らめて健二を見上げる。
その潤んだ瞳を見た瞬間、健二の中の「何か」が完全に吹っ飛んだ。
「男爵から巻き上げた金、全部このシステムのアップデートに突っ込んで正解だったわ……。だが、これだけじゃまだ足りねぇ」
健二はセリアの腰を引き寄せながら、スマホの画面に映る「街の住人リスト」に目をやった。
そこには、情報屋から得た、この街の奴隷市場に囚われているという『本物のエルフの少女』のステータスが表示されている。
「本物のエルフの肉体に、このセリアのデータを上書き(コンパイル)したら……どうなる?」
冷徹なエンジニアとしての探究心と、底なしの邪な欲望が混ざり合う。
健二は、手の中のスマホを強く握りしめた。
「よし、明日は奴隷市場を『買い占め(バースト)』に行くぞ」
30歳エンジニアの、世界を巻き込む盛大な公私混同。
彼が真の「世界の管理者」として君臨する日は、そう遠くない。




