第四十二話:互換性エラー(世界のコアでOSが違います)
「システムの本当のバグ」が潜む世界の中枢を目指し、健二たちは激しい防衛線を突破して、ついに世界の最深部へと辿り着いた。
お互いの実力を認め合い、完璧なチームワークを発揮した一行の前に現れたのは、世界の寿命の縮まりを証明するかのような、崩壊寸前の光景だった。
「ここが、この世界のメインサーバー……『根源の祭壇』ね」
世界の中心、世界のすべての事象を司る巨大な魔導水晶が鎮座する最深部。
周囲の空間は、すでに寿命の限界を迎えて真っ黒なノイズの壁に囲まれていた。
「よし、お嬢様。ドワーフ特製の『超導魔導パッチプレート』をハメ込むぞ。これでメモリリークを塞いでシステムアップデートだ!」
健二の合図で、エレノアが震える手でプレートを祭壇のコアへと挿入した。
銀色のプレートがカチリと噛み合い、まばゆい光を放つ。……しかし、その直後だった。
――ピピッ。ブブーッ!!!
【重大なシステムエラー(Fatal Error):アーキテクチャが不一致です】
【原因:現行OS(Magical_OS_v1.0)と、パッチの記述言語(C++ / Binaryベース)の互換性がありません】
【警告:完全フリーズまで、残り3分。世界が強制シャットダウンします】
「な、何よこれ!?」エレノアが悲鳴をあげる。「プレートの伝導率は完璧なのに、世界の中枢がパッチの命令を全く認識しない(パースできない)わ! 呪文の文法(構文)が根本から違いすぎるのよ!」
「クソッ、魔法で組まれたOSの基本設計を読み違えたか……! 完全にプラットフォームの不一致(OS違い)だ!」
世界全体がガタガタと激しく揺れ始め、足元の地面からデータがボロボロと崩れ落ちていく。セリアが必死に迫り来るノイズの嵐を剣で防ぐが、タイムリミットはあと数百秒。
「もうダメよ……! 私の演算魔術でも、OSそのものを一から書き換えるなんて、あと何年かかるか……!」
エレノアが絶望してへたり込んだ、その時。
「――チッ。仕様書(神話)のないデスマーチなんて、前世で嫌というほど経験してんだよ」
健二はヘラヘラとした笑みを完全に消し、ズボンのポケットから、これまで隠していた『デバッグアプリの起動したスマートフォン』を、エレノアの目の前で堂々と取り出した。
「サトウ……? あんた、その変な板は一体――」
「お嬢様、これより『突貫のリアルタイム・コード全移植』を開始する。セリア、3分間、俺たちを死守しろ!」
「御意、ケンジ様!!」
セリアが健二の「本名」を呼んだ。健二はスマホの画面に超高速で指を走らせ、神の溶鉱炉から漏れ出る魔力をBluetoothで同期。世界の中枢サーバーの全ソースコードを、手元の画面に強制展開した。




