第三十九話:凍りついた溶鉱炉
健二たちの案内(と、エレノアの前でのステルス・テレポート)により、一行は数日後、地底のドワーフ都市『アイアン・コア』に到着した。
本来ならマグマの熱気と槌音に包まれているはずの街は、今や暖房の切れたサーバー室のように冷え切っている。
中心部にある「神の溶鉱炉」の前では、伝説の鍛冶師バルカンが虚ろな目で頭を抱えていた。健二がミスリルの加工を頼むも、彼は「火を起こしても熱が逃げてしまい、炉が完全に凍りついた」と絶望している。
炉の周囲で空間がピキピキと歪み、炎が消滅していく。それを見た健二は、世界の寿命が縮んだことによる「熱循環システムの無限冷却バグ」だと確信した。
魔術で強引に上書きしようとするエレノアを、健二が制する。
「待て、それじゃオーバーヒートで爆発する。ここは冷却プロトコルの強制シャットダウンが必要だ。バルカンさん、ハンマーを貸してくれ!」
「あん? 素人に何がわかる!」
「いいから貸せ! 納期が迫ってんだよ!」
社畜エンジニアの威圧感に気圧され、バルカンは巨大な槌を手渡す。健二はセリアとエレノアに魔力排出口の固定を指示した。
チートスマホは圏外。しかし、デスマーチで培った「叩けば直る」の精神が、今、炸裂しようとしていた――!
健二たちの案内(と、エレノアの前で怪しまれない程度のステルス・テレポート)により、一行は数日後、地底に広がる巨大なドワーフの都市『アイアン・コア』に到着した。
本来なら、何百もの鍛冶の槌音が響き、マグマの熱気で満ち溢れているはずの職人の街。しかし、そこに活気は一切なく、不気味なほどに静まり返っていた。
「おい、なんだこれ……。暖房が切れたサーバー室みたいに冷え切ってやがる」
街の中心にある、最大の溶鉱炉。その前に、へたり込んで頭を抱えている一人の頑固そうな老ドワーフがいた。彼こそが、この街の最高責任者であり、伝説の鍛冶師バルカンだった。
「おい、じいさん。このミスリルを最高純度の『魔導回路』に加工してほしいんだが、一体どうしちまったんだ?」
健二が原石の袋をドンと置くと、バルカンは虚ろな目で彼らを見上げ、深いため息をついた。
「無駄じゃ、旅の者よ……。見ての通り、我らの命である『神の溶鉱炉』が、数日前から完全に凍りついて動きゃせん。火を何度起こしても、熱データが……いや、熱が炉の中に溜まらず、外に逃げてしまうんじゃ」
(熱データが溜まらない……? 完全に物理演算のバグじゃねえか!)
健二が目を凝らすと、確かに溶鉱炉の周囲だけ、空間が『ピキピキ』と不自然に歪み、炉の中に放たれた炎のグラフィックが、一瞬で消滅しているのが見えた。
世界の寿命が縮んでいるせいで、この街の「熱の循環システム(排熱・吸熱プロトコル)」のコードが壊れ、無限に冷却され続けるバグが発生しているのだ。
「そんなの、私の演算で熱魔術を上書きすれば――」
エレノアが短剣を構えようとするが、健二がそれを手で制した。
「待てエレノア、それじゃ炉自体がオーバーヒートして爆発する。ここは……『冷却プロトコルの強制シャットダウン(例外処理)』が必要だ。バルカンさん、あんたのハンマーを俺に貸してくれ」
「あん? 素人に何がわかるってんだ……」
「いいから貸せ! 納期が迫ってんだよ!」
社畜エンジニアのギラついた目が、頑固な職人を圧倒する。バルカンは気圧され、愛用の巨大な槌を健二に手渡した。
「セリア、エレノア! 炉の裏にある『魔力の排出口』を固定しろ。俺が直接、この物理バグをブチ叩く(物理デバッグ)!」
チートスマホはまだ電波が弱くて使えない。しかし、地竜戦で鍛えられた健二の「バグの法則を見抜く目」と、デスマーチで鍛えたハードウェア修理(叩けば直る)の精神が、今、ドワーフの聖地で炸裂しようとしていた――!




