第三十四話:天才魔導士の違和感
チート(バグ利用)が通じない、システム崩壊の暗黒領域(バグ地帯)。
健二の超ワープによって一瞬で最深部へと到達した一行だったが、エレノアの鋭い猜疑心の目は誤魔化せない。
頼みの綱である「スマホ」は沈黙し、健二は自らのチート能力を封印せざるを得ない状況に追い込まれる。
ここから先は、ごまかしの利かないデスマーチ。
健二の「バグを見抜く目」と、エレノアの「圧倒的な演算力」、そしてセリアの忠誠。
お互いの腹の底を探り合いながら、世界のシステムエラーに挑む、命がけの共同デバッグが今、幕を開ける――!
風が止み、エレノアが目を開けたときには、そこはすでに赤黒い瘴気が渦巻く、ダンジョンの地下深く――あの『バグ地帯』の目の前だった。
「え……? 嘘、ここ、さっき私が命からがら撤退した最深部の手前じゃない! なんで一瞬で……!?」
エレノアは驚愕して周囲の壁を見回し、それからジロリと健二を睨みつけた。
「サトウ、あんた今何したのよ? 空間魔術の気配なんて全くしなかったわ。まるで、世界が最初から『私たちがここにいるのが正しい(初期値)』って誤認したみたいな……」
「いやいや、気のせいだろお嬢ちゃん。俺たちが使ってるのは、古い隠密の呪符さ。使い捨てだからもう無いけどな」
健二は冷や汗を流しながら、ポケットの中のスマホが完全に「圏外」になり、ただの重い文チンと化したのを確認した。
「チッ……。ここから先は、本気でスマホ(チート)が動かねえ暗黒領域(バグ地帯)だ。もうごまかしは利かねえぞ」
「ふん、いいわ。ここから先は魔術の法則もグチャグチャの未知の領域。私の『演算能力』がなければ、あんたたちなんて一歩も進めないんだから!」
エレノアは胸を張り、魔導短剣に魔力を込めて光の障壁を展開する。
しかし、その障壁も、歪んだ世界のノイズに触れてバチバチと不規則に明滅していた。
「セリア、お嬢様の演算のサポートに回れ。敵がフリーズする『同期ズレ』の瞬間は、俺が指示を出す!」
「御意、サトウ様!」
こうして、健二は自分の正体を隠すためにチートを「自ら封印」し、エレノアは健二への不信感を抱きつつも彼の「バグを見抜く目」を頼りにする。
スマホが完全に沈黙した暗黒のバグ地帯で、お互いの正体を探り合う心理戦を含んだ、本当の『共同デバッグ(命がけの冒険)』が、ついに幕を開ける――!
これで「エレノアの前でどうやってチートを隠して進むか」という問題が、健二の『ノールック・ステルスハック(そして使い捨てアイテムという苦しい言い訳)』によって綺麗に処理できましたね!




