第三十話:戦略的撤退(一時的なサーバーダウン)
死の淵で知る、「攻略」の限界と新たな戦い。
「ハッキング」という名のチートが使えない領域で、無尽蔵に溢れ出すバグモンスターたち。
最強の男・健二の計算すらも凌駕する敵の物量に、二人は撤退という名の「タスクキル」を余儀なくされる。
しかし、逃げ込んだ先の安全圏にも、追っ手という名の「新たな不具合」が迫っていた。
窮地を脱し、息つく暇もなく追い詰められる、極限の異世界冒険譚。
――「ログアウト」は許されない。社畜の執念で、再び戦場へ。
「健二様、敵の増援のポップ速度が、私たちの処理能力を超えています! 一度引くべきです!」
セリアが盾で不規則な軌道の体当たりを受け止めながら、鋭く叫んだ。
チートが圏外になった暗黒領域。健二がいくらバグのフリーズ周期を見抜いても、生身の体ではスタミナに限界がある。安物のスーツはすでにボロボロで、セリアの白銀の鎧にも細かな傷がつき始めていた。
「チッ……無尽蔵にエラー(敵)が湧き出てきやがる……! 開発環境(装備)が貧弱すぎるな。セリア、ここは一度『タスクキル(撤退)』だ! 近くの町までローカルに引き上げるぞ!」
「了解!」
健二はセリアの手を引き、壊れた地形でデタラメに歪む通路を必死に駆け抜けた。なんとかチート機能が復旧する「圏内」まで這い上がると、健二はスマホの画面を即座にフリックし、最寄りの冒険者都市『フロンティア』の宿場町へとテレポートで離脱した。




