第二十六話:チート移動(チートコマンド:テレポート)
「旅? そんな非効率なことはしない」
剣と魔法が支配する世界で、何ヶ月もかかるはずの過酷な道のり。
だが、佐藤健二はスマートフォン一つで世界の座標を書き換え、距離という概念を無効化する。
常識をバグらせ、効率だけで世界を攻略する。
前代未聞の爆速冒険譚、ここより開幕。
翌朝。二人は王都の正門前に立っていた。
普通なら、ここから馬車を乗り継ぎ、数々の魔物の領域を越えていく命がけの旅が始まる。しかし、健二の手にあるのは、ただのスマートフォンだ。
「よし、まずは移動時間をゼロにする。セリア、俺の体に掴まってろ」
「はい!」
セリアが健二の腕にぐっと抱きつく。健二はスマホの画面で「世界地図の座標データ」を開き、目的地の方向にある中継都市の座標をロックオンした。
【コマンド実行:オブジェクト位置情報の強制書き換え(テレポート)】
【対象:佐藤健二、セリア】
【移動座標:東方300キロメートル、辺境都市『バザール』前】
健二が画面を力強くフリックした瞬間。
――ガツンッ!
空間がガラスのように歪み、次の瞬間には、二人の目の前の景色が王都の石畳から、見渡す限りの荒野と、見たこともない辺境の砦へと一瞬で切り替わっていた。
「な……っ!? 一瞬で、数百キロの距離を……!?」
さすがのセリアも、空間そのものをハッキングして位置情報を書き換える健二の力には目を見開いた。
「ハハ、乗り物酔いもしないし、旅費もかからない。最高の最適化だろ? だが、これでもまだ目的地(世界の墓場)の入り口まであと数箇所の中継が必要だ。魔力の回復を待ちながら、爆速でジャンプしていくぞ」
健二はスマホのバッテリー残量(魔力)を確認しながら、ニヤリと笑う。
普通の冒険者が何ヶ月もかけて行う「旅」という概念を、健二はただの「数値の書き換え」として完全にゴミ箱に放り捨てていた。




