第二十三話:世界の仕様バグ
王宮の最高機密をハッキングし、すべてを掌中に収めたはずの健二。
しかし、三重の暗号の奥底に隠されていたのは、一国のスキャンダルなど生温い「世界のバグ」でした。
この剣と魔法の世界を裏で支えるシステム。
それが、あとわずか3ヶ月で限界を迎えるという衝撃の事実。
突如として突きつけられた、世界滅亡へのカウントダウン。
青ざめるセリアを余所に、元システムエンジニア・健二の「職人魂」と「ゲーマーの血」が、最悪のデスマーチを前にして最悪に滾り始めます――。
そこに記されていたのは、王宮が数百年間ひた隠しにしてきた、この世界の「崩壊のトリガー」だった。
この剣と魔法の世界を覆う膨大な魔力――それは、一種の巨大な『世界維持プログラム』によって制御されている。しかし、数百年前に起きた「魔王戦争」の衝撃により、世界の土台となるソースコードの一部に、修正不可能なメモリリーク(魔力の蓄積不具合)が発生していたのだ。
その魔力のバグが限界まで溜まり、システムがクラッシュ(強制終了)する現象。
それこそが、この世界で100年に一度発生し、国を滅ぼすと恐れられている天災『世界の歪み(グランド・エラー)』の正体だった。
そしてデータによれば、次のクラッシュ(世界崩壊)までのタイムリミットは――あと「3ヶ月」を切っている。
「なるほどな……。王宮の奴らが、エルフを誘拐してまで無理やり防衛結界の出力を上げてたのは、単に外敵を防ぐためじゃねえ。この世界自体の『処理落ち(サーバーダウン)』を、生体バッテリーのパワーで無理やり引き延ばしてただけか」
「そんな……。では、この世界は近いうちに滅びるということですか……?」
セリアが顔を青ざめさせる。
「ああ。根本的なソースコードのバグを直さずに、その場しのぎのパッチ(エルフの魔力)を当て続けて運用してきたツケが回ってきたんだ。前世のブラック企業でもよくあったよ。過去の遺産を誰も直せなくなって、ある日突然、基幹サーバーごと大爆発するっていう最悪のデスマーチがな」
健二はふぅ、とため息をつき、頭を掻いた。
せっかく異世界に来て、可愛い嫁をゲットして、ハッキングで一生遊んで暮らせるだけの金を稼いだのだ。今さら世界ごとサーバーダウンされて消滅されては、エンジニアとしてあまりにもコスパが悪すぎる。
「チッ、他人の書いたクソコードのデバッグ(世界救済)なんて、一文の得にもならねえから一番やりたくないんだが……」
健二はスマホを握り直し、不敵な、そして最高に好戦的な笑みを浮かべた。
「仕方ねえ。この世界の『神(開発者)』が残していったクソみたいなバグ仕様、俺のスマホで根本からリファクタリング(プログラム修正)してやるよ」




