第十二章:生体バッテリーと闇のアーキテクチャ
王都の鉄壁たる防衛システム『アイギス』。その輝かしい光の裏に隠されていたのは、エルフの少女たちを生体バッテリーとして搾取する、おぞましき闇のシステムだった。他人のリソースを盗用したバグだらけの「クソ仕様」に、アラサーエンジニア・健二の逆鱗が触れる。国家の欺瞞を暴く、命懸けの強制シャットダウン計画が今、始まる!
「ヴァン・デル・バルク商会、か……」
健二はカフェの席で、セリアの盾の裏に隠したスマホの画面を凝視していた。
正面のファイアウォール『アイギス』は鉄壁だが、その維持に必要なエネルギー(魔力)の供給ライン――つまり、インフラのログ(パケット)を追跡していたのだ。
表向き、この王都の防衛システムは「商会がギルドから買い占めた、魔物の魔石」を消費して駆動していることになっている。
だが、スマホが弾き出した電力(魔力)の消費計算(キャパシティ計画)は、明らかに異常な数値を指していた。
「……計算が合わねぇ。魔石の納品量に対して、出力されている魔力量が3倍以上多い。どこから補填してやがる?」
健二が供給元のパケットをさらに深くトレース(逆探知)していくと、一つの奇妙な「暗号化された非公開サーバー(秘密地下室)」に突き当たった。
その暗号をクラックし、ライブカメラ(透視スキャン)の映像をスマホの画面にレンダリングした瞬間。
健二は、喉の奥から乾いた息を吐き出した。
「……何ですか、これは」
隣から画面を覗き込んだセリアの、いつもは冷静な声が、見たこともないほどの怒りと恐怖で微かに震えた。
画面に映し出されていたのは、ヴァン・デル・バルク商会の地下深くに隠された、巨大な魔力抽出施設だった。
中央にそびえ立つ、赤黒く脈打つ不気味な魔導装置。そこから無数に伸びる太いチューブの先は――大きなカプセルに閉じ込められた、十数名もの「エルフの少女たち」の身体に直接、突き刺さっていた。
彼女たちの顔は苦痛に歪み、その豊かな魔力が、無理やり高電圧で吸い上げられている。
「魔石の納入は、ただのカモフラージュか。エルフの固有魔力を『生体バッテリー』として直列繋ぎにして、ファイアウォールを維持してやがる……」
ブラック企業のデスマーチで人間をボロ雑巾のように使い潰す構造は見てきたが、これはそれ以上だ。文字通りの「生体搾取」。
「健二様……私の、同胞たちが……」
セリアの瞳に、激しい怒りの炎が宿る。ゲームAIが上書きされているとはいえ、ベースとなった肉体と本能はエルフのものだ。目の前の凄惨な光景に、彼女の不可視の剣がパチパチと青い火花を散らし始めた。
「落ち着け、セリア。力任せに突っ込んだら、奴らは証拠隠滅のためにバッテリー(エルフたち)を強制終了しかねない」
健二は冷徹に、しかしスマホを握る指にグッと力を込めた。彼の中の「合理主義」が、この最悪なシステムを設計した王都の闇に対して、激しい嫌悪感を抱いていた。
「人道的な理由なんて高尚なもんは俺にはねえよ。だけどな……」
健二はスマホの画面をスクロールし、そのクソ仕様の『管理者コード』をロックオンした。
「こんなバグだらけで、他人のリソースを盗用しただけのクソシステムを『最強の防御』なんて呼んでドヤ顔してる開発者が、エンジニアとして最高に気に入らねえ。……徹底的に、仕様変更してやる」
王都の光の下に隠された、おぞましい生体サーバー。
30歳エンジニアによる、国家を揺るがす「強制シャットダウン計画」の火蓋が切って落とされた。




