第十一話:王都のファイアウォール
地方の領地を飛び出し、ついに国家規模の巨大システム『アイギス』へと挑む健二。王都の強固な防壁を前に、元エンジニアの知識と執念が最高の「勝手口」を見つけ出します。御用商人の脆弱性を突くゼロデイ・アタックにより、物語は一気に国家を揺るがす頭脳戦へ!新たなステージで、健二の逆襲劇が幕を開けます。
王都レムリアの中央市場。グラン・バザールとは比較にならないほど巨大な石造りのアーケードの下、色とりどりの魔法具や珍しい素材が取引されていた。
健二は、街行く人々の贅沢な身なりを眺めながら、自分のスマートフォンに目を落とす。
「さすがサーバーの規模(王都)が違うな。流れてる資金のログの桁が、男爵の領地とは大違いだ」
「はい、健二様。行き交う魔導の波形も、より高度な暗号化が施されているようです」
セリアが銀髪をなびかせ、一歩下がった位置から周囲を警戒する。その卓越した美貌に、すれ違う王都の貴族や騎士たちが何度も振り返るが、健二は全く意に介さない。彼の関心は、すでにこの大都会の「裏の構造」に向けられていた。
健二はスマホの画面をフリックし、王都の資産家たち、特に悪評高い大商人たちの財産ログをスキャンしようとした。
だが、その瞬間。
――ピピッ。
画面に、これまでに見たことのない赤い警告灯が点滅した。
【アクセス拒否(Access Denied)】
【王都防衛魔導ネットワーク『アイギス』による強力なファイアウォールを検知】
【これ以上のスキャンは、中央魔導院に検知(インシデント登録)される恐れがあります】
「ほう……」
健二の目が、不敵に細められた。
地方のぬるい環境とは違う、国を挙げたセキュリティシステム。元・ブラック企業のサーバー監視担当だった健二のエンジニア魂が、奇妙な高揚感とともに燃え上がる。
「国営のファイアウォールか。いいじゃないか、ようやく『やり甲斐』のある仕様に出会えた。……だがな、どれほど強固な防壁でも、運用しているのが人間である以上、必ず設定ミス(ヒューマンエラー)がある」
健二は市場の隅にあるカフェのテラス席に腰掛け、盾の裏にスマホをホールドすると、真剣な目で画面のソースコードを追い始めた。
彼が目をつけたのは、王都の防衛魔術そのものではない。
その防衛魔術の維持のために、毎日莫大な「魔力触媒」を納入している、王都屈指の御用商人『ヴァン・デル・バルク商会』の流通データだった。
「強固な正面玄関を叩く必要はねぇ。毎日食材を搬入する『勝手口』の鍵が、開けっぱなしなんだよな……」
健二の指先が、白銀の盾の裏で冷徹に動き始める。
王都をも揺るがす、30歳エンジニアの「ゼロデイ・アタック(未知の脆弱性攻撃)」が、静かにデプロイされようとしていた。
王都の国家規模のシステムを相手に、健二がどうやって「裏口」から侵入し、美味しい思いをするのか。
次のハッキングのアイデアや、「こういう奴らを嵌めてほしい!」というリクエストがあれば、何でも聞かせてくれ!




