最終話(前編)「接続」
すべてが、重なっていた。
都市。
歪み。
観測者。
そして——原型。
犬塚信乃は、その中心に立っている。
手を伸ばせば、
どちらにも触れられる。
上を見れば、
観測の“層”。
下を見れば、
人の世界。
どちらかを選べば、
もう一方は失われる。
だが。
「……違う」
信乃は、静かに呟いた。
選ぶ必要はない。
切り離すから、
壊れる。
なら——
“繋ぐ”。
その瞬間。
内側の“原型”が、強く脈動する。
伏姫の存在が、重なる。
彼女は、何も言わない。
だが——
否定もしない。
信乃は、両手を広げた。
上へ。
下へ。
同時に。
触れる。
衝撃。
意識が、引き裂かれる。
情報が流れ込む。
観測。
記録。
更新。
そして——
祈り。
約束。
繋がり。
相反するものが、
一つに重なる。
“拒絶”が起きる。
観測側が、排除しようとする。
原型が、拒む。
均衡が、崩れかける。
その時。
仲間たちの力が、重なった。
炎。
影。
光。
全員が、
同じ方向を見ている。
止めるのではない。
壊すのでもない。
“支える”。
信乃は、理解した。
一人では無理だ。
だが——
繋げば、できる。
衝突が、変化する。
排除ではなく、
“再定義”。
観測は、拒絶されない。
だが。
“消費”も、成立しない。
構造が、書き換わる。
ゆっくりと。
確実に。
世界が——
“接続される”。
だが——
それは、終わりではなかった。
境界は消えた。
上も、下も、
もはや分かたれてはいない。
代わりに、
新たな“在り方”が生まれる。
観測でもない。
人でもない。
その狭間で、
確かに——“何か”が息をしている。
信乃は、まだ知らない。
この選択が、
何を生み、
何を失うのかを。
ただ一つだけ、
確かなことがあった。
もう、元には戻らない。
それでも——
進むしかない。
この“接続”の先へ。




