第二十二話「崩壊」
都市が、壊れていた。
静かに。
音もなく、
確実に。
歪みが、広がっている。
建物の一部が消え、
人の記憶が抜け落ち、
現実が、継ぎ接ぎになっている。
犬塚信乃は、立っていた。
中心に。
《実行:進行中》
止まっていない。
むしろ——
加速している。
「……くそ」
歯を食いしばる。
歪めたはずだ。
被害は減らしたはずだ。
だが。
ゼロにはできない。
犠牲が、出ている。
仲間の一人が、膝をついた。
輪郭が、揺れている。
“消費”。
使いすぎた。
「……やめろ」
止めようとする。
だが。
その手が、すり抜ける。
触れられない。
存在が、薄れている。
「……まだ、いける」
その人物は、笑った。
無理をしている。
分かっている。
だが——
止まらない。
止められない。
都市の崩壊が、進む。
その時。
信乃の中で、“何か”が動いた。
あの白の空間。
原型。
“権限”。
使える。
直感する。
これは——
抗うためのものだ。
手を伸ばす。
空間に触れる。
書き換える。
浸食ではなく。
“戻す”。
歪みが、一部修復される。
完全ではない。
だが。
確かに——
“逆流”が起きた。
スマートフォンが、異常な速度で点滅する。
《干渉:重大》
《権限衝突》
上空が、歪む。
観測者が、明確に反応する。
“敵対”として。
信乃は、理解した。
ここからは——
本当の意味での戦いだ。




