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第十三話「残響」
雨が、降っていた。
音が、やけに重い。
犬塚信乃は、屋根の下で立ち尽くしていた。
頭から離れない。
あの光景。
森。
霧。
そして——女。
“記録断片”。
そう表示されていた。
ならば、あれは過去だ。
だが。
妙に“近い”。
遠い昔ではない。
もっと、手の届く位置にあるような感覚。
スマートフォンが震える。
《解析:一部完了》
画面に、新しい情報が浮かぶ。
《共通因子:珠》
珠。
第七話で見た“あれ”。
そして、さっきの祠。
繋がる。
すべてが、同じ線上にある。
さらに、表示が変わる。
《記録照合:進行》
《該当事例:複数》
複数。
つまり——
一度ではない。
繰り返されている。
信乃の背筋に、冷たい理解が走る。
これは。
“今回だけの現象ではない”。
何度も、
何度も、
繰り返されてきた。
その中で——
“選ばれ”
“使われ”
“消えていった”。
人間が。
雨の向こう。
一瞬だけ。
あの“女”の影が見えた気がした。
振り向く。
誰もいない。
だが。
確かに感じる。
“見られている”のとは違う。
もっと、静かで——
近い。
スマートフォンの画面に、
最後の一文が浮かぶ。
《未特定個体:継続観測中》
信乃は、ゆっくりと呟いた。
「……誰だ」




