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少女の心に深めの傷を残して死にそうな低身長童顔ロリお姉さん  作者: 椿
一部

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エピローグ

 「あれは……星奈?」


 「星ちゃん! 大丈夫!?」


 「落ち着け、巴。気を失ってるだけだ」


 三人は屋上に辿り着く。そこにはボロボロの星奈が、最低限の治療をされて倒れていた。


 九重後輩が勝ったんだ……! 小日向は安堵すると同時に、何故この場に九重後輩と師匠が居ないのか、疑問に思った。


 その答えは、すぐにやってきた。目の前の空間が歪み、そこから一人の少女が現れたからだ。


 ──その手に、天を抱えながら。


 「し、しょう……?」


 天の身体はだらりと力なく、揺れていた。野乃花は能面みたいな無表情で、ふらふらと小日向の元へ歩いていく。


 「天さんのこと……お願いします」


 「なんで……師匠の刀を、九重後輩が持ってるの……?」


 「──天さんは、私が殺したからです」


 小日向の呼吸が、止まった。それと同時に、差し出された師匠の身体を受け止めた。ほとんど無意識でのことだった。


 そこに、体温は無かった。冷たかった。静か……だった。


 「どうして、こんなことに……?」


 「それ、は……」


 野乃花は少し黙ると、自分を押し殺しながら呟いた。


 「天さんは不滅の変異種になってしまいました。だから、殺しました」


 「は……? 何、言ってるの……?」


 「変異種は巫女の敵です。それが天さんであろうと、例外はありません」


 「本気でそんなこと言ってるのっ!?」


 小日向は涙を流しながら、まるで機械のような返答をする野乃花を睨んだ。


 一体、何があった? 彼女はこんな冷徹な子じゃなかったはずだ。なのに、今の野乃花は別人のようだ。その瞳は死んだように真っ暗。無表情のまま、淡々と事実だけを述べるだけ。


 まるで……心を閉ざしていた、師匠のようだった。


 「うあぁああああぁああ!!!!!」


 「おっと……武器を降ろしてください。私と貴女達が争っても意味はありません」


 「ふざけるなぁ! 私達の……! 私達の天ねぇを返せぇ!!!」


 「無駄です。貴女達では、私に勝てません」


 その時、巴とすみれが野乃花を攻撃した。だが、野乃花はそんな二人の攻勢を易々と躱すと、そのまま転落防止のフェンスまで下がった。


 小日向は、そんな彼女の姿に違和感を覚えた。あえて神経を逆撫でするような言葉で、二人を挑発しているように見えたからだ。


 野乃花は、そんな子ではない。小日向の知っている野乃花は、心配になるほど優しい子だった。人の気持ちを考え、尊重し、気遣える子だ。だから、こんな誤解を招きかねない行動をするなんて、野乃花らしくなかった。


 「野乃花ぁ! 貴女、何を隠しているの!?」


 「……っ! いいえ、何も。ただ、事実だけを話したまでです」


 ほんの少し。僅かにだが、野乃花の顔が歪んだ。やっぱりだ。あの子は、大事なことを何か隠している。


 「そろそろ……行かないといけませんね」


 「待って! もう少しだけ話を……!」


 本当は走ってその手を掴みたかった。だが、小日向の腕には天が居る。彼女が尊敬する師匠を置いて、駆けることなど出来る訳も無かった。


 けれど……小日向は最後に、野乃花の口元が動いたのを見た。


 ごめんね、小日向。彼女の口はそんな、自分に向けての謝罪を言っているように……そう見えた。


            1


 ただ駆ける。走れば走るほど、この感情について考えなくて済むから。


 「本当にあの人は……貴女には、気付いて欲しくなかったのに」


 天さんと並ぶほど、あの人にはお世話になった。だから、本当のことを知って欲しくなかった。きっと、あの人は私以上に心を砕いてしまうだろうから。


 傷付くのは……心を凍てつかせるのは、私だけで良い。あの人も、そうやって生きてきた。だから、私もそうして生きる。あの人の全てを、私は受け継ぐ。


 お母さん、ごめんなさい。私は、本当に大切な人を守れませんでした。命の恩人を、目指すべき目標を、果たすべき約束を……守れませんでした。


 私の光は、もう消えてしまいました。ですが……そんな私にもまだ守れるものが、きっとあるはずなのです。


 もう変異種は産まれません。ですが、既にこの世に根を張った変異種は別です。彼らを全て根絶した時、初めて巫女はその役目から解き放たれます。


 この世界を守る。巫女を犠牲になんてさせない。天さんの作った未来を、私は守る。


 それが私の原点。私の決めた、生き方なのです。


 「っ……! 変異種の反応!」


 私は加速しました。ですが、少し妙でした。変異種の反応は一つだというのに、気配は二つ感じるのです。


 もう随分と走ってきましたから、私の知らない巫女が応戦しているのでしょうか。念のため、私はその場所へ行くことにしました。


 「くぅ……! こ、来ないで……!」


 反応の元に辿り着くと、一人の少女が変異種と応戦していました。ですが、右腕を押さえて後退りしているところを見るに、ピンチのようでした。


 恐らく、特殊装甲型変異種『悪魔』。ザリガニのようなその生物に向け、私は矢を放ちました。


 「──穿て、『彦星』」


 紅い神力は装甲を貫き、変異種を絶命させました。私は呆然とする巫女に近寄り、手を差し伸べました。


 「貴女、大丈夫ですか?」


 「え……? あっ! だ、大丈夫です!」


 「少し見せてください……あぁ、これは折れていますね。治癒の護符は持っていますか?」


 「ご、ごめんなさい……持ってないです」


 ……この程度なら、私の神力で何とか出来そうですね。私は少女の手を取ると、少しずつ紅い神力を流しました。少女は少し顔を歪めると、次の瞬間には驚いたように自分の腕を振るいました。


 「すごっ……! どうやって治したの!?」


 「……治癒の護符と同じ要領です。最も、札を使用したものと比べて神力の燃費が悪すぎ──って、なんですか?」


 少女はその目を輝かせながら、私の手を掴んで来ました。きらきら、きらきらと、尊敬の眼差しで私を見つめています。


 「お姉さん、凄いです! ぜひ、お名前を聞いても良いですか!?」


 「────っ」


 かつての私を見ているみたいでした。ですが、私はそんな風に尊敬されるような人間ではないのです。私は冷たい顔を意識しながら、少女の手を払いました。


 私の存在が、この少女の心を深く傷付けることのないように。


 「もう私のことは忘れてください。私はただの──そう、ただ変異種を狩るだけの、お姉さんですから」


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