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少女の心に深めの傷を残して死にそうな低身長童顔ロリお姉さん  作者: 椿


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九重野乃花vs鷹司星奈

 「はっ……はっ……!」


 ひたすら走る。目的地は、この病院の屋上。そこから、良くない気配が滲んでいました。天さんは、きっとそこにいる。


 「天さんっ! 大丈夫ですか!!!」


 扉を開け放つと、そこは荒れ果てた屋上でした。そこに一人、因縁の彼女が居ました。


 黒髪を靡かせるその姿は、天さんそっくり。ですが、愛らしい姿をしている天さんとは違い、彼女……星奈は綺麗、という表現が似合う人でした。


 「……来ちゃったんだ、野乃花」


 「当然です。天さんとの、約束ですから」


 私は今まで、ずっと天さんに助けられてきました。出会った時もそうですし、終わった世界の記憶でも、私は天さんに救われてきました。


 今度は、私の番だ。私が、天さんを救ってみせる。


 「正直なことを言うと、貴女には来て欲しくなかった。不確定要素を混じらせたくないっていうのもあるけど、一番は……」


 星奈はその双眸をゆっくりと閉じ、諦めたように息を吐きました。


 「案外、私は貴女のことを気に入ってるみたいだから。出来るなら、殺したくなかった」


 「……いきなり殺そうとしてきた人の言い分とは思えませんね」


 「私が一番そう思ってるよ。どの口が……ってね」


 本当に悲しそうな彼女の姿に、私は何も言えませんでした。思う点は沢山ある。間違っていると言いたいところはいくつもある。でも……私は、完全に彼女を否定しきれないのです。その感情が、分かってしまうから。


 「でも、私は選んだ。たとえ救える友達の命よりも……たった一人の絶対だけが、私の望みだから」


 「そうですか。貴女は、決めたのですね」


 「……野乃花。もう一度、殺してあげる」


 これ以上の言葉は不要でした。ここから先は、意地と意地のぶつかり合い。どちらかが折れるまで、この戦いは終わりません。私は神力を高めました。


 「照らせ、『月読』!」


 そう呟いた刹那、彼女の姿がブレました。気付いた時には、私の首から血が溢れ出し、私は地面に倒れました。私の中の力が抜け、神力が霧散していきます。


 「……さようなら、野乃花」


 眩む視界の中、最後に聞こえたのは……そんな星奈の言葉でした。


           1


 倒れ伏し、血溜まりを作るかつての友を見ながら、星奈は言い様のないやるせなさを感じていた。どれほど神力を持とうと、それを使う前に終わらせればこの通り。いとも容易く、始末することが出来た。


 「……嫌な気分」


 彼女のことが憎かった。でも、その気持ちは理解出来た。


 彼女のことが嫌いだった。でも、間違いなく友達だった。


 彼女のことが……苦手だった。でも、そんな野乃花が、羨ましかった。


 胸に湧くこの感情は、一体なんなのだろうか。言い様のない虚しさが、不快だった。


 「……今更、か」


 もはや、星奈は立ち止まれないところまで来ていた。


 今から彼女がすることは、最愛の姉に対する明らかな侮辱だ。育ての親を焚きつけ、かつて友と呼んだ野乃花を殺し、そしてこの世界すらも、脅かそうとしている。


 だから……この程度の苦汁くらい、いくらでも飲み干してやる。全てを差し出してでも、彼女は自分の意地を通すつもりだった。


 「……え?」


 予想外だったのは……その覚悟を持ち合わせている存在が、もう一人、居ることだった。


 「おはようございます、星奈」


 「な、んで……!」


 「驚くことではありませんよ、星奈。全ては、貴女のおかげです」


 空気が揺らぐ。野乃花はゆっくりと立ち上がり、眼鏡を放り投げた。


 ──その力は、あらゆるものを穿つ。何人たりとも、逃れることは叶わない。


 「神社で貴女は、私の首を狙いませんでした。そこは以前防がれた場所でしたからね。無意識に警戒をしてしまったのでしょう」


 神力が形を為して、そして濁る。本来無色透明なはずのソレは、彼女の前では姿を変える。


 「そのおかげで、私にもチャンスが巡ってきました。ようやく、見えたのです」


 少女は確かに恐怖していた。このプレッシャーは、かつての彼女そのものだったから。その圧倒的な力の差を、少女は知っている。


 「あの敗北は、私に渇望をくれました。心の底から勝ちたい、そうしたいと思う、意思の力を。最後のきっかけをくれたのは、貴女だったんです」


 大気が震える。彼女はその手に持った弓に矢を番えると、眼を見開き、そして解放した。


 「お待たせしました。私の全てを持って、貴女を討ち果たします」


 紅い閃光が、瞬いた。


 「刺し穿て、『羿射九重』!」


           2


 漏れ出す、という表現が一番正しいでしょうか。私は自分の身体から溢れる神力に押されながら、必死にその荒波を制御していました。初撃は躱された……! でも、このまま物量で押し切る!


 「っ……! 本当に貴女は……! どこまでも、私を邪魔するのね……!」


 「こちらの……! セリフです!」


 きっかけは何度もありました。天さんを害した変異種を滅した時や、いつかの世界の記憶。そして、星奈への敗北。


 ですが最後の後押しだけは、完全に運でした。紅い神力を出せるかは未知数。そのまま殺されてしまう可能性だってありました。 


 私が自分に施したのは、単純な身体強化です。ただ、効率も悪く、ロスばかりの下手な強化。無尽蔵な私の神力といえど、数分も維持していれば神力を使い果たしてしまうような、そんな無鉄砲な強化。


 その神力の高まりを、星奈は攻撃だと思ったのでしょう。だからこそ、『月読』を使って一気にケリを付けに来た。結果はあの通り、私は致命傷を負いました。ですが、強化された私には数秒の猶予がありました。ギリギリで、踏みとどまったのです。


 そして意識を落としたあの瞬間、私は確かに見たのです。自らの内に眠る、あの紅い光を。


 私の中の原始的な欲求。生きたいと思う力と、次こそ勝つという願望が合わさり、私はついに掴んだのです。全ての変異種を滅する、あの紅い神力を。


 後は簡単でした。溢れ出る神力を使い、治癒の護符をフル稼働させるだけです。


 効率なんて考えない、溢れ出る力をそのまま垂れ流すやり方。泥臭いにもほどがありますが、効果は抜群でした。


 あとは、彼女を打ちのめすだけです。


 「圧倒しろ! 『織姫』!!!」


 「くぅ……! 照ら、せ! 『月読』!」


 「……! 穿て、『彦星』!」


 弾幕を張り続け防護壁を貫きましたが、寸前で脱出されます。予想地点にすぐさま矢を放ちますが、そこに星奈の姿はありません。上手く躱されました。


 …………! 上です!!!


 「はぁっ!」


 「『光球』! 行って!!!」


 「相変わらず……! 馬鹿みたいな数!」


 すかさず『光球』を展開し、『織姫』で無数の矢を放ち続けます。一発一発が致命傷になる私の閃光。それを、星奈は持ち前の身体能力と『月読』で回避しています。ですが、確実に追い詰め、て――


 「くっ……! 集中、しないと……!」


 ……少し、血を流し過ぎました。傷はとっくに塞がっていますが、血液までは元に戻りません。その影響でしょう。立ち眩みを起こしてしまいます。


 「……はは。辛そうだね、野乃花」


 「星奈ほどでは……ありませんよ」


 現れた星奈の姿はボロボロでした。修道服は裂け、足が大胆に見えていました。身体の至るところから出血し、その額には汗が滲んでいます。やせ我慢が得意なのは、貴女も同じでしたね。


 「それじゃあ……火力勝負、しよっか」


 「良いんですか? それは私の得意分野ですよ?」


 「ふん……ゼロ勝の癖に、良く言う。これくらいのハンデでちょうど良いのよ」


 星奈さんは刀を抜き、それを正眼に構えました。


 「どうしたの? 時間が無いのは、お互い様じゃない?」


 「……本当に、貴女って人は」


 確かに、私達に残された時間は少ない。星奈は耐久戦になれば不利となりますし、私は一刻も早くこの場所で行われている何かを止めなくてはなりません。


 悠長に考えている暇はありません。私は『彦星』に矢を番え、そして構えました。


 どこか晴れ晴れとした気分で、私は笑います。眼前に立つ星奈もまた、にまりと笑みを浮かべていました。


 「今度も勝ち越させてもらうよ! 野乃花!!!」


 「今度こそ勝たせてもらいます! 星奈!!!」

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