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物語から伝説へ  作者: 愚者の夢
二章…王都に向かって
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二ー壱話・・・・・姉妹との出会い

 セシリア達が王都に戻ってから一週間が過ぎた頃、僕は父さんに呼ばれた。王都でお世話になる相手から了承の返事が返ってきたと告げられた。この一週間で旅立ちの準備はしっかりと出来ていた。僕は明日にでも王都に向かって出発をする。


「サークよ、王都にいるグレンバッハさんから、お前を世話しても、良いと返事を貰った。前にも言ったが、父さんが兵士をしていた時の上官になる。くれぐれも失礼のないようにな!


「わかっているよ。それと今回の件は、ありがとう。」


「気にするな。この先は自分の力で切り開け。母さん、今晩は気合入れて料理を作ってくれ。サークの旅発ちの祝いだ!」


「ええ、分かりました。腕によりを掛けて作ります。楽しみにしておいて下さい。」


 …その夜は、いつもよりも豪華な食事となり、両親との会話も弾み楽しい時間となった。


 次の日の早朝、僕は両親に見送られて、王都に向かって出発した。僕は母さんのが笑顔で見送ってくれたが、瞳に溜まっていた涙が印象に残った。


 王都に向かうのには、乗り合い馬車を使う方法と、自分の足で歩く方法があるが、僕は餞別を節約をする為、自分の足で歩いていく事にした。僕の計算では馬車でいく倍の時間が掛かっても、一週間あれば王都につけるだろう。


 王都に向かう街道を行き交う人々は様々で、行商人や旅人、傭兵と今まで森の周辺で生活していた僕には、目新しくうつった。夕方に差し掛かり、町が見えてきた。僕はあの町で、今夜の宿をとろうと思い、足を早めた。


 町に入ると、宿の場所を道端にいた主婦に尋ねた。


「すみません。ちょっと尋ねたいのですが…」


 警戒心を抱かさない為に笑顔で声をかけた。


「うん? なんだ…」


 僕は相手の言葉が止まったことを、不思議に思いながら


「今晩の宿を探しています。この町の宿が何処にあるのか、教えて貰えませんか?」


「…宿とは言わずに私の家に泊りに来ないかい?」


「いいえ、初対面の方に泊めて頂くなんて、ご家族の方にもご迷惑をかけます。」


「そうだね…私がもう十歳若ければ…」


 主婦は残念そうに呟いた。


「宿の場所だね。町の真ん中に向かえばすぐ分かるよ。一階が飲食店で二階が宿になって泊れるよ。」


 僕は主婦にお礼を言って宿のほうへ向かった。


 まもなく、主婦に言われた店が見えてきた。中に入ると、夕食の時間でもあり、かなりの賑わいを見せた。僕はマスターらしき人物に話しかけた。


「すみません。今晩泊りたいのですが。」


「いらっしゃい。兄さん一人かな?」


「はい、そうです。」


「なら良かった。今日は行商の一行が入ったので、部屋がほぼ満席だったんだ。一人ならまだ行けるよ。」


「良かった。一泊いくらですか?」


「料金は先払いで四Sシルバーになるよ。食事は付いていないから、一階の食堂で注文してくれ。」


「わかりました。料金をここに置きますね。」


 僕はカウンターの上に銀貨四枚を置いた。


「兄さん、これが部屋の鍵だ。受け取れ。」


 マスターは僕に向かって、鍵を投げ渡した。僕は鍵を受け取って


「では、部屋に荷物を置いてきます。」


 二階の部屋に荷物を置きに行った。荷物を置く為に部屋に入ると、新しくはないが清潔感に溢れる内装に、好感を覚えた。部屋の家具はベットと机、椅子というシンプルな配置だったが一泊のみと考えると十分快適だと言える。


 僕は荷物を机の上に置き、夕食を食べる為に一階の食堂に行った。ちょうど、夕食の時間帯で賑わっていた。僕は隅に空いていた席に座り、近くにいたホールスタッフのお姉さんを呼んだ。


「すみませーん。注文して良いですか?」


「はーい! 只今参ります。」


 直ぐにスタッフのお姉さんは来てくれて、メニューを渡してくれた。


「こちらがメニューになります。」


 そう言うと注文を待っている。周りを見ると、かなり忙しそうに、動き回っている。僕はスタッフのお姉さんに


「注文が決まれば、呼ぶのでお仕事に戻って下さい。」


 と言うと、お姉さんは間髪入れずに


「いえ! 大丈夫です。お待ちしますよ。」


 素晴らしい笑顔で応えてくれたが、周りの忙しさを見ると、不安になる。


「周りの方が忙しそうにしていますし、僕もゆっくりと注文を考えるので」


「そうですか〜、御注文の時は私を呼んで下さい。」


 お姉さんは残念そうな顔して、仕事に戻っていった。僕はどれにするか迷いながら、周りの様子を見ていた。周りには子供から、お年寄りまで色んな年齢層の人達が、楽しそうに食事をしていた。中には食べ終わった子供が席から離れて、好奇心を押さえ切れずに歩き回っている。


 料理を決めて、近くにいるホールスタッフのお兄さんに声をかけようと、手を上げて呼ぼうとした。


「すみま…」


 僕の言葉は、中断させられた。いきなり目の前に現れた、先ほどのお姉さんに…


「はい! ご注文ですね。」


 良い笑顔を向けて、僕の言葉を待っている。


「え! 向こう側に居ましたよね?少し距離があるのに…」


「はい! プロですから、お客様をお待たせしません!」


「…そうですか。」


 僕はそんな問題なのか?と疑問に思いながら、注文をした。


「では、お奨めディナーセットにします。」


「はい! お奨めディナーセットを1つですね。」


 お姉さんは注文の確認取ってきた。そして僕に近づいてきて、耳元で小声で囁いた。


「食後に、私は如何ですか? サービスしますよ。」


 ・

 ・・

 ・・・

 ・・・・

 ・・・・・は?


 僕の思考回路は、束の間の停止状態になってしまった。


「…え! ええ~~~~~!  お姉さん、冗談が過ぎるよ。」


 ビックリしたが、僕はからかわれたと思った。


「結構本気なのにな~」


 お姉さんは、小声で何か呟いたが、周りの騒音で聞き取れなかった(いや、聞き取れなかった事とする)。お姉さんは、注文を通す為に厨房へ向いた。


「ご注文頂きました~」


 料理が来るまで、暫らく待っていると、食器などを引っくり返した様な音が響き渡った。


 音の聞こえた方を見てみると、小さな女の子が倒れており、その子の姉らしき女の子が起こそうとしている。周りには、女の子がこけた拍子に引っくり返った食器が散乱している。そして、近くに居た傭兵らしき男が引っくり返った料理で、ベトベトに汚れてしまっている。男は額に血管を浮べて、怒りながら女の子を睨みつけている。そして女の子に向かって、怒鳴り散らす。


「こらガキ! 何しやがる。ベトベトに汚れたやんけ! 責任取れや!」


「すみませんでした。小さな子がやった事なので、この子は許して下さい。アイシャも謝りなさい。」


「ご…ごめんなさい…。」


 姉は妹を必死に庇い、妹は泣きながらでも一生懸命謝っていた。しかし、男は許す気も無い様で


「謝ってすむ問題か~!」


 僕はそんなやり取りを見ていると、腹が立ってきた。


「もう、許してあげて下さい。子供達も一生懸命謝っているじゃないですか。」


 僕は立ち上がり、男に向かって声を掛けた。周りは静かになり、僕に視線が集中した。


「あ~ん、お前こいつらの何? 関係ねーならすっこんでいろ!」


「確かにこの子達とは関係は無いです…が、貴方の態度に我慢が出来なかったんです。」


 男は気に障ったのか、僕を睨み付けてきた。


「お前、オレ様に喧嘩売ってんのか?」


「僕としては穏便に事を済ませたいのですが?」


「上等だ!」


 男は僕に向かって、殴り掛かって来た。


 バシィィッ


 男の体格は、大柄で筋肉隆々のいかにも力自慢という感じの体格で、周りの人々は僕との体格の差で、勝負にもならないと思ったようで、今の光景は信じられないものを見たって顔になった。


 僕は男の拳を、片手で意図も簡単に受け止めた。男の拳をつかみ、関節を極めつつ捻った。男は関節の痛みに耐え切れずに、その場で引っくり返った。


 僕はそのまま関節を締め上げ、男に告げる。


「そろそろ、許して下さい。クリーニング代は僕が払いますから。」


 そう言って、男に金貨一Gゴールドを渡す。


「わかったから、手を放してくれ!」


 手を放すと男は逃げ去るように、店を出て行った。僕は、姉妹の方に向かった。


「君達、大丈夫だったかい?」


「はい! 大丈夫です。助けてもらって、ありがとうございます。ほら、アイシャもお礼を言いなさい。」


 姉は、お礼を言ってきた。妹のアイシャは、姉の後ろに隠れるようにして、僕を見ている。


「どう致しまして。怪我が無かって、良かった。」


 僕は安堵し、自然と笑顔がこぼれた。アイシャは僕の笑顔を見た瞬間、姉の後に完全に隠れた。僕はその様子に内心ショックを受け、


「僕の顔をみて小さな子が隠れてしまうのか…」


 …僕は少し落ち込んだ。


「妹がすみません。私はリリアって言います。何か御礼をさせて下さい。」


 姉はリリアと名乗ってきた。


「気にしなくてもいいよ。困った時はお互い様だし、僕が勝手にやっただけだから。」


「でも、そんな訳には…」


 僕はリリアの前に手を出して、リリアの言葉を途中で止め、


「どうしてもと言うなら、困っている人がいれば、君が出来る範囲で助けてあげて。それが君から僕への御礼でいいよ。」


 リリアは少し困った顔をし、


「それだと貴方に、何も返せないです。」


「僕は前にある人と約束で、その人が誰もが笑って過ごせる国になる様にがんばる。僕はそれを手伝う。そんな訳だから、困った人が減ると約束を守るようになるんだ。」


「そうですか…分かりました。困っている人がいれば、お手伝いできる様にがんばります。」


 リリアは少し残念そうにしたが、僕にはっきりと答えた。


「お客様~、ご注文の品です。お待たせしました~」


 頼んでいた、調理がきたので


「僕はこれから食事するから、何かあったら言ってね。もしあの男が戻ってくるようなら、今日はこの二階で泊まっているから。」


 リリア達に手を振って、自分の席に戻ろうとしたら、小さな声で


「あ・ありがとう。」


 アイシャがリリアに隠れながら、お礼を言ってくれた。


 僕は自分の席に戻ると、お姉さんは配膳をしながら話しかけてきた。


「貴方、なかなか強いのね。それに優しいし、家の宿で用心棒として一緒に働かない?お父さんに紹介するから。」


「僕は王都に行く途中なので、そのお誘いにのる訳にはいかないんです。すみません。」


 お姉さんは、残念そうにしたが


「なら、王都の用事が終ってからでもいいから、どう?」


 聞きなおしてきた。しかし、僕の目的は簡単に終らないから、お姉さんに


「王都に行ったら、長くなるので駄目です。」


「そっか…なら、また今度来てね。」


 そう言うと、いつもの接客の口調に戻り


「お待たせしました。ご注文の品はお揃いでしょうか?何か追加がございましたら、おしゃって下さい。」


 お奨めだけあり、見た目・香り・量ともにいい感じで、食べるのが楽しみな料理だ。


 …僕は食事を終え、すごく満足していた。席を立ち、二階の自分の部屋に戻ろうとした。途中でお姉さんに呼び止められ


「夜の件は、何時でも言ってね。」


 ウィンクをしながら、言ってきた。


「あ…うん…また今度…」


 僕は返事に困りながら、逃げるように部屋に戻った。


 …数時間後


 ベットに横になって休憩していると、ドアをノックされた。


「はーい。今行きます。」


 僕はベットから起き上がると、入り口に向かいドアを開けた。


 そこには、見たことの無い男が立っており、僕に頭を下げて、話しかけてきた。


「私の名前はバータックと申します。この度は、娘達を助けて頂き、誠に有難う御座います。失礼ですが、御名前を伺っていいでしょうか?」


「僕の名はサークっていいます。わざわざお礼に来られなくても良かったのに。」


「いえいえ、そんな訳にもいきません。それにお金を立て替えて頂いていると聞いています。」


 バータックは僕の手に、小さな袋を渡してきた。


 中を開けて見てみると、金貨十Gが入っていた。


「こんに貰えません。僕は一Gだけ騒ぎを起こした男に、渡しただけです。」


「そんなことを言わずに、謝礼金を含んでいると思って受け取ってください。」


「いいえ! 貰えません。お金を貰う為に、あの子達を助けた訳ではないです。」


 僕は完全に拒否をした。バータックは少し考えて、名案を閃いたばかりに


「では、サークさんが王都までの護衛をして頂いて、それの報酬って事でどうでしょう? 私は行商の一行を纏めています。その護衛役が少し心許無いので、お願いできないでしょうか?」


 何とかして、僕に受け取って貰おうと狙っている。諦め無さそうなので、僕は護衛役の話を受けるようにした。


「そう言う事なら、護衛役を受けます。」


「おお! 有難う御座います。では、明日の朝に合流して王都に向かいましょう。」


 バータックに帰って貰い、僕は休んだ。


 次の日の朝、一階の食堂でお姉さんと色々なやりとりはあったが、省かせてもらう。


 食事を済まし、バータックさんを探した。バータックさんは一行を取り纏め、出発の準備をしていた。


「バータックさん、おはよう御座います。もう直ぐ出発ですか?」


「サークさん、おはよう御座います。そうですね、後一時間後ぐらいで出発できます。」


「おはようございます。昨日はありがとうございました。父が無理を言って、護衛役を引き受けてもらい、すみません。」


「お…おはよう~」


 リリアとアイシャもそれぞれ挨拶をしてくれた。アイシャは相変わらず、リリアの後ろに隠れながらだったが…


「二人ともおはようー。バータックさん、僕も直ぐに出発できるように、準備をしてきます。」


 僕は自分の部屋に行き、荷物を取ってくる。宿のチェックアウトを済ませると、宿のお姉さんが


「ありがとうございました。また、泊まりに来て下さいね。…今度は、誘ってね。」


 最後の言葉は、耳元で僕だけに聞こえる様に囁いた。僕はバータックさん達と合流し、王都を目指して出発した。

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