一ー肆話・・・・・旅立ち
…僕達は、階段を下りた。
1階まで下りると、床が光っていた。
床の上に二人で乗ると、光は強くなり、辺りに広がった。
光で眩しく目を閉じた。
目を開けると、僕達は塔の外に出てた。
「セシリア様、お帰りなさいませ。」
「セシリア、お帰り…それとサークも」
二人はそれぞれ声を掛けてきた。
「二人とも、ただいまぁ。」
「だだ今戻りました。」
僕達はそれぞれ返事をした。
カルロは僕に確認してきた。
「サーク、どうやって塔の中に入ったんだ?」
「そうです。塔は王族しか入れないはずです。」
レイラも疑問を投げかけてきた。
「僕にも分からないんだ。気が付いたら中に入っていて…」
僕は素直に答えた。
「サークは常識の壁を超えるくらい、セシリアのことが心配だったか。」
カルロは茶化す様に言ってきた。
レイラはこのままでは話が脱線するかもしれないと思い、
「それより、セシリア様は証は手に入れられましたか?」
レイラはセシリアに向かって話しかけた。
セシリアは笑顔を浮かべて、右手の甲を見せた。
「ええ。この通り証を頂きました。」
「これで目的は達成できました。後はお城に戻って、正式に王位継承の儀式をすれば良いです。」
レイラは一先ず安堵を漏らした。
塔の中に入っていた時間が数時間であったが、今から森の外に出るのだけでも日が暮れるので、
「今日も僕の家に泊まって下さい。今から帰れば、日暮れ過ぎには着くと思うので。」
僕の家に泊まるように勧めた。
「そうだな。今日も泊めてくれ。」
「そうですね。またお世話になります。」
「ありがとう。今日もお願いします。」
上からカルロ、セシリア、レイラの順に返事があった。
帰りの道中は、カルロがセシリアをからかったり(塔の中でサークと二人きりだった事)して、和やかに帰った。
家に着くと日が暮れえて、辺りが薄暗くなっていた。
家の中から光が漏れ、誰かがいることが窺える。
「父さん達が帰ってきているのかな?」
僕は独り言のように、呟きを漏らした。
「サークさんのご両親はどこに行かれていたのですか?」
セシリアは聞こえていた様で、父さん達の事を聞いてきた。
「森の反対の村に用事があって、出かけていたんだ。」
僕は家の中に入ると
「ただいまー、お客さんを連れてきたよ。」
家にいる父さん達に伝える。
「おかえりなさい。お客様って、どちらの方?」
奥から、優しそうな声で返事が返ってきた。
「母さん、ビックリしないでね。お姫様だよ。」
出てきた母さんに向かって伝えた。
「え! サークの彼女を連れてきたの?」
母さんは、ビックリしながら声を上げた。
セシリアは母さんの「彼女」の言葉で顔を赤くしながら、小さな声で何か呟いていた。
「…え! そんな彼女なんて、けど…ここは恥ずかしく無い様にご両親にご挨拶を…」
僕も「彼女」の単語にビックリし、慌てて否定した。
「違うよ。この国のお姫様! なんで彼女って話になるの。」
僕はセシリアが気分を害していないか、様子を窺った。
セシリアは僕の顔を潤んだ瞳でじっと見つめ
「そんなに直ぐに否定しなくっても良いのではありませんか?」
小声で何か言ってきた。
僕はセシリアの小さな声は聞き取り辛く、気分を害したと思い。
「ごめんね。母さんの早とちりで、気分悪くさせて」
「お母様の言葉ではないです!」
セシリアはフンって感じに顔を横に振った。
僕にはセシリアが何故に怒ったか分からなかった。
…僕は食事の席で、両親にセシリア達の紹介と今日の粗筋を説明した。
食事が終わり、セシリア達は親父達にいろいろと質問をしてきた。
「お母様はきれいな金髪ですが、王族の血筋なのですか?」
「さ~? どうでしょうか。遠いご先祖様に王族の血筋の方がいたかも知れませんが。」
「サークさんは、魔法が一切効かない体質と言ってましたが、幼い頃からですか? セシリア様の光の魔法が、効果あったのは何かあるのですか?」
「え! サークに魔法の効果があったのは本当ですか? 生まれて今まで効果があったことは無かったのに。」
いくつかの質問が終った頃、今まであまり喋っていなかった父さんが口を開いた。
「そろそろ夜も更けてきた。明日、王都を目指して帰るなら、あまり夜更かしをしない方が良い。」
そうして、解散しそれぞれの割り与えられた部屋に行って、休息をとった。
皆が解散したあと、僕は両親にこれからの事について、自分の考えを伝えた。
「僕はセシリア達と王都に一緒に行こうと思う。」
母さんが僕に聞いてきた。
「サーク、急にどうしたの? 今までそんな事、言ったこと無いのに」
「セシリア達と塔に行ってきたが、セシリアは国の為、人々の為に王になり、この国を笑いの絶えない平和な国にすると、真剣に語っていた。その話を聞いた時に、僕はこの方に仕えて支えていきたいと思った。そして塔の中で光の神アルテーシア様に、これから先に苦難の運命が続くと言われました。今のまま、森の中で生活をしていても、その運命に呑まれてしまう。運命を切り開く為に、世界を知りたい。広い視野で物事を考え、判断をして後悔が無いようにする為に!」
両親は顔を見合わせて、頷き合い僕の方へ向いた。
父さんが僕に聞いてきた。
「サークよ、王都に行ってから、どうやって生活をするんだ?」
「セシリア達と王都に行ってからは、何か仕事を探そうかと思ってた。」
「見つからなければ、セシリア様達のお世話になるのか?」
「いや、そんな事は考えていない。」
「人が生活するのはそんなに簡単ではないぞ。特に町では自給自足みたいな生活はほぼ無理だ。」
「しかし、このままだと何も出来ない。何もやらない。そんな未来は嫌だ。何事もやってみてから、後悔はしたい!」
父さんは僕が出て行くのを反対していると思い、つい感情的になって大きな声を、出してしまった。
「わかった。少し待っていろ。」
そう言うと、父さんは自分の部屋に行った。少し待つと父さんは戻ってきて、僕に一通の封筒を、渡してきた。
「昔、父さんがお世話になった方への紹介状だ。いままで喋った事は無かったが父さんは昔お城に仕えていた兵士だったんだ。仕事の関係で、王家の森にも来ていたから、母さんとも知り合いになれたんだが…」
ゴホン!
「話がそれたな。取り合えず、明日急に行く話しでなく、しっかり準備をしてから旅立て。その間に父さんの方も、王都にいるその方に連絡を取っておくから。」
「…良いの?」
僕は反対していると思っていたから、紹介状の話を理解するのに間が空いてしまった。
「良いも、悪いもあるか。息子が世界を見て大きく成長をしようとしているのに、反対する親がいるか!男が一度家を出て行くんだから、故郷に錦を飾るまで帰ってくるなよ。」
「父さん、ありがとう。」
「もう一度言っておくが、出発は明日とか出なく、そうだな……一週間後だ。相手方に連絡し、返事を貰わなければいけないからな。」
「ああ、分かったよ。母さん急に言い始めてごめん。」
僕は父さんに返事をしてから、母さんの方を向いて謝った。
母さんは少し悲しそうな顔をしたが、直ぐに笑顔を向けて
「いいのよ。貴方が羽ばたこうとしているのだから、私は子離れをしなくっちゃね。応援しているわ。」
そうして、今夜は休んだ。
僕は次の日の早朝にいつもの鍛錬をしていると急に声を掛けられた。
「サークさん、おはようございます。朝から精が出ますね。」
「おはよう、セシリア。今日は早いね。」
セシリアは少し拗ねた様に
「別に今日が早いのではなくって、昨日が遅かっただけです。」
僕はそんな仕草が可愛いなと思いつつ
「そうか。それで何か用事?」
聞き返すと、セシリアは表情を曇らせて
「いえ、特に用事ではないのですが…、ご迷惑でしたか?」
「そんなことはないよ。」
僕は、笑顔で返す。
「……あ・その、今日王都に帰るから少しお話を出来たなら良いな~と思いまして。」
セシリアは顔が少し赤く染まり、返事に少し時間が開いてしまった。
僕は偶に時間が空いてしまうのがセシリアの悪い癖だな~と思っていた。
「サークさん、昨日の夜にご両親とお話されていた件ですが、偶然聞こえてしまって、最初に謝っておきます。すみませんでした。」
「いや良いよ。朝にはセシリア達にも伝えるつもりだったし。」
セシリアは恐る恐る聞いてきた。
「…では、サークさんは王都に来てくれるのですか?」
「うん。昨日も言ったけど、セシリアの理想を叶えたいと思っているから。」
「サークさん……」
セシリアは両手を胸の前で組み、感無量といった表情になった。
「お~い、セシリアさん聞いていますか?」
どこかに意識を飛ばしている、セシリアは僕の言葉を聞いていないと思い、目の前で手を振りながら、声を掛ける。
「……」
セシリアは、ビックリするように意識が戻った。
「はいっ!」
「僕は王都に行くって言っても、直ぐには行けないんだ。準備の加減で一週間後ぐらいの後に出発になるかな。」
「そうですか…まだ、一緒にいられると思いましたのに~」
セシリアは少し寂しそうな顔を浮かべた。
僕は会話の中で、次々と表情の変わるセシリアを見て、感情豊かで可愛らしいな~と場違いなことを考えていた。
その後、僕達は朝食を食べて、別れの時が来た。
「サークさん、この度は大変お世話になりました。ありがとうございました。王都に来られたら、いつでもお城に来てください。歓迎いたします。」
セシリアは深々と頭を下げてきた。顔を上げると素晴らしい笑顔だった。
「サークさん、セシリア様共々お世話になりました。王都に着かれて分からないことがあれば、いつでも尋ねて来た下さい。これが私の住所です。」
レイラはそう言うと、サークの手にメモ紙を握らせた。
「サーク、世話になったな。王都にきたらいつでも声を掛けてくれ。色々案内してやるから。」
カルロは、親指を立てて、歯を見せるように、二ッと笑い顔を見せた。
「皆、王都に着いたら連絡するから、その時は宜しくね。王都までの道中、気をつけてね。」
僕は皆が見えなくなるまで見送った。




