↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅する電化の奔走。  作者: 未完畑の柑結
殿下の荷造り
PR
8/14

出発への準備が長すぎるって

「ついたね…」

「ついたっすね…」

ついに到着した。ひんやりとした空気が漂っていて、空はどんよりしている。

この町に、レンちゃんがいる。今日、決着をつけよう。

ただ、どこにいるかまではわからない。

「どうする?」

「どうするっすか…」

「ここは私の勘を信じなさい」

「不安しかないっす」

「確率は8割5分…!」

「か、かなり当たるっすね!」

「あ、外れる確率ね?」

「は?」

ってことで、東側から回っていくことにしよう。

これで居たら最高なんだけど…まあ、そう簡単には行かないですよねー。

「居なさそうっすね」

「居ないね」

「じゃあ探し直しっすか…」

「うーん…」

また勘が外れた。悲しい。

どこにいるだろう。当てずっぽう戦術は厳しいか…

一旦駅に戻って作戦会議としよう。

「…海って行った?」

「いや、行ってないっす」

「行ってみたい…!」

「わかったっす、でもどこに?」

「知らないけど?」

「え?」

ってなわけで、案内マップとかいろいろで調べてみたところ

この駅からバスが出ているらしいので、それに乗って出発。

20〜30分ほどして、海岸に到着した。

海が見えて、その手前に砂浜と、コンクリの塀がある。

「どう?居そう?」

「ボクそんなに目は良くないっすよ…?」

「視力いくつなの?」

「え〜…5.5くらいっすけど」

「なんでそんなに良いの?」

「まぁセンサーあるんで…ボクエアコンだし」

「そっか…」

「…居たっす!!」

「えマジで見つけたの!??」

「ほら、あそこに座ってるっす!」

「よし、行くよ!!」

「はいっす!!」

私達は駆け出す。あの日家主から逃れるときの比じゃないくらいの大激走だ。

4分の激走の終焉に、たどり着いた。

「…レンちゃん」

「…」

「ごめんなさい!!」

「…謝るとかじゃないっていったでしょ?」

「でも、仲直りしたいし、それ以前に私が、ケリを付けたいの」

「あっそ。」

「…聞いたよ、あの頃のこと。」

「…話したんだ、あのバカ家主。」

「バカで助かったよ、ほんと」

「で?」

「いろいろ…悩んだんだよね。それを早いうちにわかってあげられなくて…ごめん」

「…」

「わかってなかったからあんな事を、軽はずみに言っちゃって。」

「…」

「本当に、ごめん。許してもらえなくても…全然、いいから、さ」

「…」

「でも、生きていてね。楽しく、どこかで、私のことなんか忘れt」

「もう良いよ…!!」

沈黙を破った一言目は、ひどく震えて、怯えているようだった。

「もう…いいよ…」

「…へ?」

「もう…やめてよ…嫌になるから…」

「なんで?私がひどいことを…」

「それは確かにムカッときたけど…でも」

「でも?」

「そうだけどさ…全部…悪いなんて思ってないよ…」

意外な一言だった。呆然とする私を見つめながら、涙ながらに続ける。

「あたしが勝手にやったことで、あたしが勝手に抱え込んで…

 誰にも見せないようにしてただけなのに…」

「…」

「誰も気付けるわけないのにさ、そうやって…怒って。

 嫌なやつだな、あたしって思っちゃうんだよ…!」

「そんな事ない!」

「あるんだよ!……あるの。もうどうしたら良かったのかな。

 あんな突き放すようなこと言ってさ。ちゃんと仲直りしたい気持ちもあったのに逃げて。

 怒りに身を任せて、ノクリーにも迷惑かけるし…心とすることが違って…

 なんでなんだろう…もう、わかんないよ…」

そういって、崩れ落ちた。空さえも。

崩れ落ちた空は、ひどい大雨を降らせている。

「…じゃあさ、私をはけ口にしてよ」

「…んえ?」

「愚痴とかそういう、嫌な気持ちをさ、私に、全部相談して…くれないかな。」

「そんなの…嫌なやつじゃない…?」

「嫌われるのが嫌なのかわからないけど、でも。そういう事を

 なんの気なしに相談できる相手って、大事でしょ?」

「…うん」

「溜め込んで、またこういう風なことになりたくないし、なってほしくない。」

「でも、嫌な奴って思うんじゃ…」

「思わない!絶対…思わない。誰にだって、そういう事はあるし。

 嫌なところも、良いところも、全部全部。”レンちゃん”でしょ?」

「…!」

「だから、全部大好きだよ。」

「…ネイ〜ッ!!!」

「ぐえっ!??」

力強い抱擁が、身を包む。

その、相手を気にせぬ図太い力の使い方が、

昔のあの活気にあふれるレンちゃんの姿と同じで。

きっと、取り戻してくれたんだろうな…!

「ごめん…あんなひどいことばっかり言って!ごめん、ごめぇぇぇん!!!」

「全然いいよ、レンちゃん。…あの、すいません、すっごい痛いです痛たたた」

「これはノンデリ発言の罰です〜…!」

「その節はほんとうにもうしわけございませぇぇぇん!!!??」

「…あと、まだこうしてたいから」

「ならそう言ってくれればいいのに…」

「あはは、そうだったね」

いつの間にか雨は止んでいた。

さっきまでの雲が嘘のように、空はどこまでも広い青だった。

この家出(たび)を…旅を決意したあの日の空に、また出会えた気がした。

「…あ!!虹だよレンちゃん!」

「え?…ほんとだ!!」

「綺麗だね!!」

「うん!!」

「出てきて正解だったな、ほんと。」

「あたしも、そう思えたよ」

「…ありがと」

空にかかった大輪の虹は、今まで見た何より鮮やかで、美しかった。

生涯忘れることなんて、ないと思えた。

きっと今は、レンちゃんだってそう思ってくれるはず。

「…あのさ」

そう、話しかけられた。少しびっくりしたけど、すぐに反応する。

「なに?」

「また…あたしを旅に連れて行ってくれますか?ネイさん…いや

 殿下!!!」

「もちろんだとも、レンピア!!!」

そういって笑った。初めての、二人だけの時間が流れる。

雨はすっかり乾いて、水たまりは消え失せた。

ただ彼女の瞳に、ただ一滴だけが残っていた。

すぐにそれも乾くだろう、乾かすことが出来るだろう。

第一章終了!!

ここからしっかり旅に出ていきますよ、どうか楽しんでください。

「あの〜、ボク忘れられてるっすよね…?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。