電化様は謝りたい~ガチで~
豪雨の襲撃真っ只中。
時刻もわからぬ空でも、昼下がりは昼下がり。
そろそろ、かな。
ここに帰ってきてもう一週間以上は経った。
謝りたいという感情だけが、日に日に増していく。
そういう事ばかり考えて、渋い顔をしてはのんびり屋にドヤされる。
ただ、ずっと考えてしまう。彼女のもとに行きたい、もちろん行きたいけどでも。
考えすぎと誰もが言うだろう。でも今日は特にひどいかも知れない。
「今日どうしちゃったのー?」
もう顔のことには触れない領域まで来てたらしい。
「どうしても、謝りたいってことばっかり考えちゃうんだよね」
「相当な重症だねー、でもどうすることも出来ないよー?」
「そんなぁ…」
「行くしかないよー。」
「行くしかない、か」
ガラッと空気が変わる。背筋を伸ばし、生気のある声でデンが言う。
「でもこの家で知りたいことがあるなら、それは解決してから行くべきだと思う。」
真面目な話をするときにここまで変化する者はデンちゃんしか居ない。
私はその変化に感化され、真面目に、誠実に、淀みなく決意して言った。
「そうする。」
たった一言だけど、全ての決意を込めた。
私は家主のところへ行く。
「ねえ」
「なんだい、旅に出るのは構わないよ、いってらっしゃい」
「それはどうでもいいの」
きょとんとした顔をした。お前が旅をバッサリ切り捨てることあるんだ、って感じ。
「あのことを教えて。」
「あのこと?」
深呼吸を一度。冷静にその名を口にする。
「レンピアのこと。」
黙り込んだ。沈黙が答えだとでも言うつもりなのか。
「教えてよ。」
向き直って、ふぅとため息を一つばかりして、言い始めた。
「いつか、話さなきゃいけないってことはわかってた。」
「なら教えてよ」
「そう、だな。話すよ。」
数秒の沈黙をああ、そうだ。と破り、私に言う。
「…あいつが居た頃からここに住んでるやつを集めてくれないか」
私は、あの頃の顔なじみたちを、友人をこのリビングに招集した。
「サンキューな、ネイ」
全員がなんのことかわからずにいた。
でも、その雰囲気で何となく察せるものはあったかも知れない。
「あの子を覚えているか。レンを…レンピアを。」
口々にそんなやつも居たなーだとか、
今どうしてんだろうとか、いろんなことを言い合う。
罪悪感を抱えながら、私はじっと家主を見続けた。
「ずっと言えなかったが、今日言わせてほしいんだ。何があったのかを。」
雨の音だけが聞こえた。
「まずは、謝らせてくれ。
ずっと言えなかったことと、止められなかったことを。申し訳ない。」
止められなかった。それが頭に残響する。
「思い悩ませてしまったのだろうな…
あれは確か5年前のことだ。相談を受けたのさ、あの子からな。
その時期は新しい子がたくさん入ってきて、喧嘩だとか色々多かった。」
そんな事もあった。
あの頃に仲良くなった子もたくさんいるし、私はマイナスに捉えていない。
「あの子は何かと抱え込んでしまって、それを人に見せられないタイプで…
それが、周りとの絆を深めるうえでの足かせになってしまったというわけだ。」
ああ。なぜ気づけなかったのか。
あれだけ仲良くしていて、そこに気が付かなかった。
自分で勝手にかき消してたのかも知れないが、もうわからなくなってきた。
「みんなは自分たちなりにこう…
協力し合って譲り合って妥協してって、それが出来たから良かったんだ。
ただ、なかなか譲れないこともあったはずだ。
そういうところで、ストレスを貯める。でも穏便に行きたいから、我慢。」
聞きたくない。自らが望んだことなのに、なんて自分勝手なんだ。
でも不思議と、わかっていたかのように言葉の意味がスラスラと入ってきて、
余計に胸が苦しくなる。痛くなる。
「そういうことをまあ、相談されて。もちろん真面目に考えて、答えを返した。
…もう手遅れだったのかも知れない。そう考えたほうが、辻褄が合うんだ。
次の次の日か。みんなが寝静まった、妙に涼しい夜に言ったんだ。
『もう、あたしを売ってくれ。頼む。』
泣きそうな顔だった。でもきっと本気だったんだ。
もちろん断った。『それがあたしにとっての救いなのに…』
そんな事も言ってきた。最後の言葉は
『出てく。売ってくれないなら、自分で出てって、売られに行く』」
もう誰の目にも、光は灯っていない。
「そういうことだったんだ。繰り返し言わせてくれ。
止められなくてすまない…!あの時、みんなを起こす勢いで止めていれば、
ちゃんと対面で話し合ったりすればこんなことにはならなかった!
わかってるんだ…自分でも痛いくらいに!!!」
悲痛の叫びが木霊する。誰もが目に水をためている。
「俺を許せなんて言わない。ただ、もしあいつがまだどこかで元気に生きていて、
帰ってきてくれたなら…みんな、明るく出迎えてやってくれないか…
あの子を認め、優しく包んでやれないか…
いつものようにうるさくて、楽しくていいんだ…!ただ、迎えてやってくれ…」
「「「絶対する!!」」」「我、絶対する。」「うちだって…!」「余だって!」「麻呂だって!!」
「ネイ、一番中が良かったお前にこそだ。
こんな事を起こしといてなんだが、頼む。頼む!」
精一杯、痛みを振り払い、涙を拭い、居を決して叫んだ!!
「私にも、やらせて!!!」
親友だからこそ、こんなところで縁を切ってたまるか。
絶対に、責任を取って見せる。メンタルを直してみせる!!
「「「「「頼んだよ、ネイ殿下っ!!!!」」」」」
懐かしいあだ名だ、ネイ殿下。
雨なんて、とっくのとうに止んでいる!
遠く遠く北の空には、まだ雨雲が浮かんでいた。
でも、この真上の空はどこまでも突き抜けるような濃い青。
ただ一筆、飛行機雲が軌跡を残していた。
100pv,Thank you!!!




