怒りの逃避行
主人公:レンピア…空が好き。ノクリーのことは「お節介なエアコン」としか思っていない。
ノクリー…困ってそうな者をほっとけないタイプ。お節介と思われていることに気づいているが、
なんとなく関わるのをやめていないし、やめたくないらしい。
街 :サナット…小さな街で、雨がよく降るしすごく暑い。
なんでも、いまいちわかりづらい地名ばかりなので言葉足らずの町と呼ばれているとか。
ノンデリって恐ろしい。
確かにネイちゃんはいい機だけどさ…
あたしは怒りに身を任せ、遠く離れた街を目指した。
さらに北上して、サナットという街についた。
もうここに居よう。この街に居よう。
いつしか一台になるなら、友達に会ったとしてもこうなるならずっと得策だ。
何も過去を知らない子と友達になればいい。
あたしは街をさまよって、小さな公園を見つけた。
ベンチに座って、ただずっとぼーっと、怒りを忘れようとしていた。
それから昔のことも。
…いつの間にやら、空が藍色になっていた。行く宛はない。
またさまよった。あたしにはこれしかない。自分で解決するしかない。
知らない闇夜のその下を歩き続けた。けど泊まれそうなところは皆無。
結局朝焼けをリアタイ。そこから昼間になると一気に熱くなった。
ふらふらと投げやりに歩いていると、不意に話しかけられた。
「あ、あの〜…大丈夫っすか?」
「はい…大丈夫です…」
力なく応答すると、
「いや絶対大丈夫じゃないっすよ?!
暑いですし一旦うちに来てください!」
そういうとそのエアコンはあたしのコードを引いて、家に連れて行った。抵抗するほどの体力もなかった。
涼しい。あんな暑い外にずっといるなんて信じられない。
ここなら安全に過ごせると思ったら、1日寝ていない弊害がやってきて。
私はすぐに意識を手放した。
目を覚ますと、すでに日は落ちていたし、世界は蒼くなっていた。
「あ、目が覚めたんすね!」
「あ、はい」
「ほんと、死にかけみたいでこわかったっすよ」
そんなに酷い顔をしていたのか。なんだか怖い。
「ところで…どこに住んでるんすか?」
「オ・イニツィオってところです。」
「どうしてまたこんな小さな町に?」
言い淀む。数秒フリーズして、また話し始める。
「…ただ、フラッと訪れただけです。」
「そうですか…まぁ、来たからには楽しんでいってください!」
特に深いことは聞いてこなかった。聞かないでくれたのかもしれない。
「あたし、もう行きますね!」
「え、どこにすか??」
「まぁ、決まってないけど…でもとにかく忘れたいことがあるから
とにかくここから北上しようかな、って…」
「そうっすか…」
軽い会釈をして、玄関に向かおうとした。
「あ、待ってください!」
彼女はそう、引き留めた。
「さすがに心配すぎるんで、ボクも行くっすよ」
「え?!」
困惑するあたしを他所に、彼女は真剣な面持ちで言う。
「大丈夫っすよ、時間ならたっぷりあるんで」
「そういう問題じゃ…」
「いいからとにかく!…ついていかせてください。」
半ば強引についてくるつもりのようだ。ただ、ここで突き放すのは気が引ける。
相談相手くらいにはなってもらえるかもしれない。
電車にのってしばらくたって、あたしはあることに気づいた。
「ところで…お名前は?」
「あっそういえば言ってなかったっすね、ボクはノクリーって言います!」
「あたしはレンピア、まぁしばらくよろしくね。」
まずは少し仲良くなろう。他愛のない話しができる、普通の距離感くらいになろう。
ふと窓に目をやると、大粒の雨が打ち付けていた。
「わ、すごい雨っすね…すぐ止むといいけど」
ここからでは全く、晴れそうな気配が見えない。
時間が経てばいつか止むだろうと、そう信じた。




