終わらない夕立
宿すごいおしゃれ。
駅と同じようなレンガ造りで、温かみを感じる感じ。
今日は疲れた。特に一番最後のやつが。
さて、時刻は19時。会えなかった頃の話とか色々しよう!!
「ねぇ、私達かれこれ5年くらいは会えてないし、その間の話とかしようよ〜」
「いいよ〜、どっちから行く?」
「うーん、ここは言い出しっぺから行く?」
「お願い!」
ってことで、ここまでの経緯を話した。
なぜ家出しているのか、どうやってここまで来たか、とかいろんなことを話した。
「って感じ!」
「へ〜、大変だったねそれは…」
「じゃあ次レンちゃんお願い!」
「あたしは…まあ最初に言ったようにここに住んでる!
特に特別なことは…ないけど、でも楽しいよ!」
「私も今楽しい!ようやくあの家から出てこられたし、レンちゃんにも会えたしね!」
「ありがと!ってか早く寝ないの?明日も旅するでしょ」
「そーだね、じゃ寝ますか!」
「「おやすみ」」
時刻は21時。
雨が屋根を打ち付ける音が聞こえる。
まだ少し早いけど、寝よう。
ただあの時、私があの家から出られたと言い結んだときの
少し曇った顔が残響していた。
目が覚めると、もう朝。
朝焼けって、夕暮れとはまた良さが違うな。
私にとって初めての、家以外の場所で迎えた朝だ。
数分して、レンちゃんが起きた。
「おはよー」
「おあよ…」
朝弱いのか、呂律回ってないしテンションが低くてかわいい。
お互い完全に目が覚めた頃、私は言った。
「今日はどこ行こうか…」
「だね、どうする?」
私にはプランがあったが、まさか二人になるとは思っていなかったもので。
「一応行きたいところはあったんだけど…」
「いいよ、そこ行こう!」
「いいの?ちょっと遠いと思うんだけど…」
「旅ってそういうものでしょ?知らないけど」
「じゃあお言葉に甘えて、めざせピルビスタ!!」
「「おー!!」」
宿を出て、オレンジ一色の街の、オレンジ一色の駅から電車で北上。
揺られること2時間、到着まで残り30分ほどのときだった。
「あ!!」
「びっくりした、どうしたの?」
「見て見てレンちゃん、海だよ!!」
「え!!?」
そう、初めての海に遭遇したのだ。
何を隠そうピルビスタは海沿いの街で、長い長い浜の中央に位置する。
ただ、それにしてもこんなに早く見られるとは思っていなかった。
「すご〜い!!」
「綺麗だね…!」
レンちゃんも初めて見たようだ。
二台で海に興奮しながら、そのままピルビスタ駅に到着した。
「よし、もうどこに行くかは決まりだね」
「だね」
「「海に行こう!!」」
駅を抜けると、ロータリーの向こうを長い一本の大通りが貫いている。
その果てに海が望める。その海を目指し、大通りを歩く。
「着いた〜!!」
「すご!!」
体が動いた。
すぐさまリュックを砂浜に投げ捨て、目の前のそれに飛んでいく。
「え!?」
水飛沫としょっぱさを感じる。ああ、海ってしょっぱいんだ!!
初めての感触に、全ての動きが楽しい。
「レンちゃん!これ最高!!」
「ええ…」
「?どうしたの」
「真っ先に飛び込むとは思わなくて」
「まぁまぁいいじゃん、とにかく入ってみてよ」
「まあじゃあ、失礼して…」
リュックを優しく置いて、ゆっくりと入水する。
「お〜冷たい!!」
「ね!!」
「これが海か…!」
「…くらえっ!!」
羽が水を巻き起こし、それはレンちゃんを包んだ!
「うわっ!!?」
「へへへ、まだまだ〜!」
「こ、この〜!」
「あ待って強いすごい水量g」
舐めてた。一発の水発射量が違いすぎた。
「ぼぼぼぼぼぼぼぼ!!」
初めての海、水上だっていうのに溺れかけた。
しばらく水を掛け合うと、疲れて砂浜に寝そべる。
せっかく遠慮したのに、向こうはフル火力でやってきた。
空は青い。ただ、雲が多く浮かび、近くの空の積乱雲が今か今かと
雨雲になる機会を伺っている。
二台で仄かに灰色が望める雲が浮かぶ青を眺めていた。
「いやぁ〜」
「?」
「いいな〜、って」
「なにが?」
「あの家から出てきて正解だったなって」
「…そっか」
「…どうしたの?」
昨日と同じ違和感を覚え、聞いてみた。
「なんでもない!」
いや、そんなことはないと思った。
「…本当は?」
「なんでもないって」
そんな押し問答を数回繰り返すと、少し睨んで言った。
「あの家は確かに最悪だよ。
あんなところにずっとなんて耐えきれない。」
ただ、と前置きして。
「出る出ないが選べるからそう思えるんでしょ?
あたしは選べなかったしさ。
出れて嬉しいけど、自由は手にしたけど。」
何も言えなかった。でもわかっていた。
複雑な経緯を持っていることなんて重々承知だった。
でも楽しさが、興奮が勝ってしまった。ひどいやつだ。
謝ろうとした。ただそれに被せて
「謝るとかはいい。追い出される気持ちなんてわかんないでしょ。
あたしもう行くね」
大通りを引き返す背中が、目にこびりつく。
反省が次々に湧いてくるのを覚えた。
配慮の1つや2つすら出来なかった自分にイライラを募らせ、
雨も雷も無視してそこに居た。
ただ水平線を凝視することしか出来なかった。
主人公:ネイチャー 察すのが苦手。奇機ではあるが、優しい。
レンピア 話すのが苦手。テンションは高く、コミュ力はあるが、
自分の弱い一面を隠してしまいがち。
街 :オ・イニツィオ 一面レンガ造りの街。海はなく、常夏。人々の活気と2つの熱気に包まれた
レンガ色の情熱の都市。
ピルビスタ 海沿いに位置する。暑さはそこまでだが、常に初夏っぽい。爽やかな町並みをしている。
極めて透き通った海が特徴で、地質から溶け出す特殊な成分により、
海産物がよく取れる。




