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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき
第二章 花を咲かせられるモブ令嬢

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12話 学園からの報告と眠るエリアナ

エリアナが眠り続けている間に学園から報告が来た。


「早いわね」


セリーヌは学園の対応の早さに少し驚いた。

報告は書面ではなく、責任者として命を受けたグィード先生が公爵家を訪ねた。

書面を作る時間を端折り、早く報告した方が良いとの判斷だった。


応接室に通されたグィードは背中にびっしょりと汗をかき始めた。魔法師団長として様々な魔物と戦ってきたが、目の前の静かで高圧的な冷たい魔力に体に緊張が走る。


「魔法科一学年担任のグィードと申します。学園より調査結果をお伝えに参りました」


グィードは深呼吸をし緊張を逃がす。


「私はハーマン公爵家のセリーヌ。直に夫も戻りますが、当主代理として伺います」


四大公爵家筆頭のセリーヌの圧に、ゴクリと恐怖心を飲み込む。


魔法科一学年の女子生徒が犯人であった。

石板担当の主任に頼み込み、エリアナの魔力を吸収する仕掛けを組み込ませていた。エリアナの魔力を手に入れると、反転の魔法を使い魔力が注がれると雷が落ちる仕掛けを施した。


「大会の恨みですか?」


セドリックの冷たい声の問いかけに、グィード先生は頷いた。


「大会の事もありますが、貴族科の三学年から頼まれたと言っております」


セドリックは思い当たる人物の名を挙げた。


「ダリア嬢かシュミット嬢かサラ嬢では?」


「なぜそれをっ?」


グィードがセドリックが三人の名前を挙げた事に驚いていた。


「先日揉め事がありましたので」


「その事もあり、魔法科の生徒達は自分達が正さなければと愚かな正義感から行動に出たようです」


「正す。ね……」


セリーヌの漏らす言葉にグィードの体が跳ねる。


(学園を四大公爵家の敵に回す訳にはいかないっ)


「生徒達は謹慎処分が直ぐに言い渡され、各々の家には学園から説明する者を一緒に向かわせております」


「謹慎処分は学園長がお決めになったの?」


セリーヌの問いかけにグィードは頷いた。


「そう……」


(建国祭でエリアナちゃんの秘密の大半が公表される。自分達が誰に剣をむけたのか考えさせるためよね……生ぬるい処罰に腹も立つけれど、今は受け入れましょう)


黙ったままのセリーヌの答えを、グィードはじっと待った。


「石板担当の主任とやらは、どうなったのです」


「あの、その事で相談があります。実は、石板担当の主任はエリアナ嬢をとても尊敬する者なのです。エリアナ嬢が貴族科での揉め事の被害を受けないために、石板で出席が分かれば科が違う自分達も守る事が出来るからと。

ダリア嬢達から嘘の話を持ちかけられたようです。本人は話が違うと、泣き喚いて錯乱状態なのです」


「石板は学園に通う生徒達全てを守るための物です。エリアナちゃんを守るためと唆されても、手を貸してはならなかった……」


セリーヌの言葉は正しい。

学園は生徒を守るために沢山の仕組みを組み込んでいる。それに手を加える事は御法度。


「母上、主任とやらの処遇はリアに決めてもらいませんか?リアは自分のせいで騙された人が処罰されたと、悔やむかもしれません」


「そうね、エリアナちゃんの性格なら悔やむわね。その主任は自宅待機として監視をつけます。処遇はいずれ」


「それで?首謀者の三人はどうなさるのかしら?」


セリーヌは圧をかけてグィードに問うた。


「ダリア嬢達は当主が呼ばれ学園から謹慎処分と監視をつける処罰を受けています。当主達は学園長から厳しい叱責を受けており、エリアナ君が目覚めてから改めて処罰を言い渡すと説明を受けています」


グィードの説明にセリーヌは頷いたのだが。


「とりあえず、学園側の事情は分かりました。ですが、ハーマン公爵家が寵愛する令嬢に対する仕打ちをどう考えるのか、どう動くのかは、こちらの事情ですので」


暗に「家門同士の争いに学園が口を出すな」と、牽制したのだ。


「学園長には、そのように伝えます」


グィードは深く頭を下げ、チラリとセドリックに視線を向けた。

セドリックの視線は酷く冷たい。何も感情がなくただ冷たい。


グィードは腹に力を入れ震える足を叱咤する。

ハーマン公爵家を出て馬車に乗り込んだグィードは座席に座ることも出来ずに腰を抜かした。


「やばい……セドリック君の怒りは、あれはやばいだろうっ」


グィードは学園に戻るまで座席に戻ることが出来なかった。




学園からの説明を受けた魔法科の生徒の邸では、それぞれ厳しい叱責を受けていた。

怒鳴られ、頬をぶたれ、縁を切るとまで言われる生徒もいた。


「学園からの正式な処罰次第で籍を抜く事もあると、その足りない頭に刻み込めっ」


部屋に閉じ込められ監視がついた。

今更になって自分達がやらかした事の重大さに怯え始めた。



シュミット嬢とサラ嬢の家門は更に上を行った。

王太子殿下の側近から婚約の解消はあったものの、令嬢達の家門には非がないと円満に婚約の解消と処理してくれていたのだ。

当主達は娘の愚行を謝罪し、円満解消を有り難く受け入れたものを……。


なぜ婚約が解消されたのか理解できず、関係のないハーマン公爵家の婚約者であるエリアナを攻撃した。

婚約者であるエリアナ嬢は子爵家でありながら、高位貴族からの好感度は高い。

それにSS冒険者であり、スタンピードの功労者。

その令嬢を虐げたとなれば、家門同士の領地戦争にもなる可能性がある。

一族を危険に晒したと、謹慎処分の間を厳しい修道院で過ごさせる決定を下した。



ダリアの生家の子爵家だけは、理解出来ないのか責任を感じていないようだった。

子爵家は判斷能力が低く危険だと学園側が判断し、監視を強められた。



学園での出来事は一日を経たずに仮の処罰が公表された。




グィードが帰ってから直ぐにパトリックが王城から戻ってきた。


「陛下にはセドリックが学園で治癒魔法を使った事を説明した。」


連絡を貰ったパトリックは直ぐに陛下と宰相に謁見願いを出し、学園での事やセドリックの魔法の事を報告した。


「予定より早まるが、聖教様を陛下が密かに呼び出し話し合いを始めている。エリアナ嬢の事を黒竜様の事も含め全て伝え、神殿内部の膿を出す計画を実行される。

暫くセドリックは学園を休め、目覚めたエリアナ嬢もだ。建国祭まで邸にいてもらう」


パトリックの説明にセリーヌが疑問に思った事を尋ねた。


「セドリックが魔法を使った時に、聖人と言われたそうよ。神殿がすぐに接触するのでは?」


「神殿が動くだろう。だが、王家と冒険者ギルドに商業ギルドが建国祭を優先させるように話を後回しに誘導するようだ。

セドリックは公爵家次期当主なのだから逃亡する可能性は低いと判断される。

神殿で鑑定するのは建国祭の後になる。

セドリックが聖人と神殿が発表すれば、建国祭どころではなくなるかなら。

神殿も民達が楽しみしている祭りを乱す事はしないだろう。神殿は民達の支持で保っているのだから、民達を敵に回しはしない」


とりあえず、パトリックからの説明と学園からの報告をお互いに伝え合い、話し合いは終わった。


解散しようと三人が席を立つと、執事がセドリックに礼をとり声をかけた。


「坊ちゃま、学園から一緒に来られたご令嬢がお待ちです」


執事の言葉に、アーネット達の存在を思い出した。


エリアナを心配して付いてきたことを伝えると、セリーヌは急いでお茶の支度をさせた。


セドリックはアーネット達に長く待たせた事を謝罪した。

アーネット達はエリアナが心配なだけで、セドリックからの謝罪は不要だと伝える。


応接室にセリーヌ夫人が謝罪に来た時は、メレニーが一番緊張していた。

アーネットとケイシーは一度会っていたので緊張はするものの、メレニーほどの緊張はなかった。


セリーヌ夫人が三人に内密として、学園から報告された事を教えてくれた。


「エリアナはまだ眠っていますか?」


「まだ目を覚ましていない」


アーネット達は誰に何を聞かれても、エリアナとセドリックの事を他言しないで欲しいとお願いをされた。


眠るエリアナを見舞いながら悔し涙を浮かべるアーネット達を見て、セリーヌ夫人はエリアナの人望の厚さ感じていた。


  早く目覚めて


全員がそう祈っていた。






眠り続けるエリアナは……。


真っ白な空間でラビと黒竜に対面していた。


「私、死んでないわよね?」


『死んでないよ!たまには僕達と遊んで欲しくて、倒れたからちょうど良いかと思ってさ』


ちょうど良いって……。


神様の言い方に少しの不満はあるけれど、忙し過ぎてラビと黒竜とはゆっくり出来ていない。


『それに、黒竜も気落ちしてるよ?エリアナと魔力で繋がっているんだから、エリアナが疲れたり何かがあれば黒竜も感じとるんだからね』


パタパタと宙に浮かぶだけで、何も言わない黒竜をエリアナは手を伸ばし抱き寄せた。


「ごめんなさい。黒竜にも負担をかけていたのね」


黒竜を撫でると「キュッ」と可愛く鳴いた。


【お主が心配ではあったが疲れだと理解しておった。だが、あの魔法攻撃は許されぬ】


「私も、あれは流石に駄目だと思うわ。冒険者を長くやっていたから、魔法の攻撃耐性がついていて死ななかったけれど。普通の生徒なら下手したら死んじゃうわ」


【エリアナが丈夫だからとしてもだ。許してはならん】


「多分、学園の生徒よね……」


エリアナはまだ学園からの報告を知らない。

神様も今は教えるつもりはない。

余計な考えをさせず、三人でゆっくり遊ぶために空間に呼んだのだから。


『学園の事は目覚めてからだよ。今はエリアナは疲労回復のために体が強制的に眠りに就いている。自己防衛するくらい疲れてるんだから、ここにいる間はゆっくり遊ぶんだよ!』


「ゆっくり遊ぶって、意味不明よ」


エリアナは笑って神様に突っ込んだ。

久し振りに見る屈託のない笑顔に、神様も黒竜も安堵した。


「三人で遊ぶって、何が出来るかしら?」


『フフフ……』


神様が不適な笑みを浮かべると、どこに隠していたのか前世遊んだトランプを出した。


『エリアナ!これで出来る遊びを教えてくれ』


「良いけど……神様は何とか持てるけど

黒竜の小さな手ではトランプを持てないわよ?」


エリアナは手に持つトランプを綺麗な扇状に広げてみせた。


【こうか?】


黒竜は魔法でトランプをエリアナと同じように広げてみせた。


「器用ね!」


エリアナは終始笑顔のまま神様と黒竜と三人でトランプをし、神様が出してくれるお茶とお菓子を食べながら、のんびり遊んでいた。


エリアナは倒れてから一日半、眠り続けていた。


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