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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき
第二章 花を咲かせられるモブ令嬢

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10話 自由時間が欲しいな

忙しい……。

時間が足りない……。


今日は学園のお休みの日。

エリアナは自分の時間が全くない事に今更ではあるが、気が付いてしまった。


「学園生活って、もっと楽しむものじゃないかしら?」


ラビを抱え上げて文句を言ってみる。


『普通はそうじゃない?でも、エリアナは普通じゃないでしょう?』


「誰のせいよっ!」


『半分は僕のせいだけど、半分はエリアナのお節介でしょう?イザベルだって放っておけばいいのに、手助けしようとするからじゃん』


(じゃんって……)


「ラビに文句を言った私がバカでした」


話は終わりと、ラビをハンギングチェアに入れた。

黒竜と並んでエリアナを見てくる。


「なに?」


黒竜が言いにくそうにエリアナに伝える。


【最近のお主は……怒りっぽいぞ?】


ラビはウンウン頷く。


「………」


自覚のあるエリアナは何も言い返せない。


「ごめんなさい……」


ラビに八つ当たりしているのだと、理解した。


「はぁー。面倒臭いからと投げ出せる状況じゃないし、エイミー様とシーベル殿下に対抗するには私が表に立つしかないから」


エイミーに対抗するにはエリアナが転生者であると公表するしかない。

シーベル殿下に対抗するには、黒竜と正しく契約していると公表するしかないけれど。

公表するのは守護されている表向きだけ。

まだ本当の契約の事は公表しない方が良いと判断された。

守護されている事実だけで十分牽制出来ると。


どちらも爆弾並みの威力があるから、公表した後の事を考えると気落ちしてしまう。


【それはそうと、お主の事情を公表する事は両親に伝えておるのか?前回、こっぴどく叱られたであろう?】


エリアナの動きが止まり、機械仕掛けのように首がギギギっと動き黒竜を見た。

恐ろしい光景に黒竜がビクッと跳ねた。


「忘れてた……すっかり忘れてた!」


エリアナは大慌てで部屋に走り机に齧りつき、ペンを走らせる。

急いで手紙を書き終えると馬車を飛ばし、手紙を商会に出しに行った。

速達便を使い領地に手紙を送ったけれど、間に合いますように!と、必死に祈った。


エリアナが商会から帰って来ると、アーノルド殿下の訪問を知らされた。


セドリックが対応しているようで、エリアナも急いで応接室に向かう。


扉をノックし、部屋に入るとアーノルド殿下と側近達が座っていた。


「お待たせしました」


「いや、突然来たのだ。こちらこそ申し訳ない」


アーノルド殿下が謝罪をすると、側近達も頭を下げた。


「何かありましたか?」


エリアナはセドリックの隣に座り問いかけた。


アーノルド殿下が側近に視線を向けた。


マチアスとアロンソがお互いを見て頷くと、エリアナに深く頭を下げた。


「先に謝罪をします。ご迷惑がかかるかと思います。私達の婚約が解消となりました。理由は、エリアナ嬢を嫌う婚約者とはやっていく事が出来ないからです」


「………」


部屋に沈黙が広がる。


(言われた意味はわかる。わかるけれど、私が原因って)


「とりあえず説明してくれる?」


マチアスとアロンソの婚約者は貴族科の一年生と三年生。

両方とも、反エリアナ派らしい。

そして、エイミー派だとマチアスとアロンソに宣言し、自分達と同じエイミーを支持するように言われ口論となりそのまま婚約を解消したらしい。

しかも貴族科の棟で、沢山の生徒がいる前で。


「反エリアナ派ってなんなのよ」


エリアナは大きなため息を吐いた。

イライラが収まらない。

また自分の名前が使われ勝手に巻き込まれていく。ムカついてならない。



アーノルド殿下と側近達もセドリックですら、エリアナの沈黙の怒りの冷たい魔力に気が付き震えている。


「リア?マチアスもアロンソも喧嘩になったからと、簡単な気持ちで婚約を解消した訳ではないよ。二人は伯爵家。殿下の側近としては爵位が低いんだ。しかも、本来は側近になる予定ではなかった。

パトリック達がきちんと側近を勤めてくれいればマチアス達は変わらずの生活が出来た。

その事に関しては、アーノルド殿下の責任が大きい。エリアナは関係ない。

でも、王家や冒険者ギルドがエリアナの後ろ盾をしている今の状況を見て、マチアス達がエリアナを否定するような相手との婚約を続ける訳にはいかないんだ」


セドリックの話の内容は貴族として当然。

アーノルド殿下の側近であるマチアス達が、殿下の気持ちに反するような者と繋がっている訳にはいかないのも理解出来ている。


エリアナが建国祭で公表する事で、マチアス達の婚約者は手のひらを返すかもしれない。

でも、それはそれでマチアス達の信頼を無くしてしまう。


エリアナの思考はぐるぐる回り、止まってしまう。


「マチアス様とアロンソ様は婚約者様に好意は無かったのですか?」


「私は幼馴染同士の婚約です。人としては好いていましたが、女性としてはそれほどではなかったかと。ですが、結婚するものだと婚約者として将来の夫として彼女を大切にしてきました」


そう話すのは、アロンソだ。


「幼馴染同士の馴れ合いもあったのでしょう。私が彼女の話しに合わせる事が多かった事がいけなかったと、今なら思います。彼女は自分の考えが正しいと、私を説得すればエイミー派になると。そう思っていたようです。

私はアーノルド殿下の側近です。殿下が信頼する人を信頼します。殿下の考えを自分の好き嫌いでどうにかしようとする者とはいられない。それだけです」


話し始めは少し寂しそうに話をしていたけれど、アーノルド殿下の側近だと言い切ったアロンソの顔は吹っ切れていた。


「私は完全なる政略的な婚約ですね。アーノルド殿下の側近になって縁付いた婚約ですから。あちらの伯爵家からの縁談でしたが、我が家に利はあまりありませんでした。アーノルド殿下の派閥でもあったので受けただけです」


マチアスは淡々と話をする。

婚約に不満があったのかもしれないけれど、エリアナは深く聞く事を避けた。


「お二人が婚約解消に心残りがないのなら良いですけど……」


(私が動くといつも誰かが傷付く気がするわ)


「それで、もう一つお伝えしたい事がありまして」


エドワルドとサニエルがエリアナの様子を伺いながら問いかけた。

エリアナはチラリと二人を見ると、ビクッと肩を跳ねさせた。

睨んだつもりはなかったけれど視線が鋭かったようだ。


「私とナサニエルの婚約者がエリアナ様に会ってみたいそうで。一度で結構ですから会って貰えたらと……」


いつもきっぱり物事を言い切るエドワルドも、今回ばかりはおずおずと話をする。


「エリアナ派って事?」


二人は頷いた。けれど……。


「私達が信頼する人を知っておきたいと。自分達も会ってエリアナ様が本当に信頼出来る人なら、婚約者として私達の事を支持し支えると」


「会うわ。きっと良い婚約者なのでしょうね」


エリアナは二人の婚約者に会う事にした。

エリアナが会う事で二人が婚約相手と上手くいくなら、微力ながら力になろうと考えた。


【結局自分で自由な時間を捨てておるではないか】


黒竜がラビを抱え飛んできた。


「自由な時間って?」


セドリックが黒竜に問いかけた。


【エリアナは自由な時間がない。忙しいと、ラビに愚痴っておったのだ】


エリアナはギクッとなり、セドリックから視線を外した。


「エリアナさん?無理してはいけない。無理なら私に話すように言いましたよね?予定を組むからと。それを断ったのはエリアナさんですよね?」


セドリックのさん付けは怖い。

エリアナはそっぽを向いたまま黙り込んだ。

セドリックはエリアナの顔を強引に自身に向けさせた。


「今からやらなければならない事を書き出します。予定表を作り、リアの自由時間を捻出します。良いですね?私が管理しますからね」


エリアナは予定の管理をする事が苦手で、やらなければならない事を片っ端に手をつけるタイプ。

今までは運良く処理出来ていたけれど、問題が重なり過ぎて手に負えなくなっていた。


「よろしくお願いします」


エリアナはセドリックに頭を下げてお願いした。


エリアナはアーノルド殿下に聞きたかった事を思い出した。


「殿下、イザベル様はどんな様子ですか?貴族科は荒れているようですが、巻き込まれていませんか?」


「ん?ああ……イザベルはかなり落ち込んでいるよ。自分が色々と言われる事ではなく、自分の軽率な行動が引き金になったから気にしている」


アーノルド殿下は困った表情をしていた。


「殿下は、その……イザベル様と婚約を継続しないのですか?イザベル様だって転生者ですし、四大公爵家の令嬢です」


「継続は出来ない。イザベルが変わった事もきちんと知っている。今の彼女なら努力次第で王太子妃になれると思う」


「ならっ」


アーノルド殿下はエリアナの言葉に首を振る。


「遅すぎたんだ。イザベルは失態を犯し過ぎた。入学式の謹慎の時点で婚約者から外されるはずだったのを、転生者だからと一旦保留になった。学園に戻ってからの四大公爵家の監視の結果、婚約は卒業と同時に解消となる事が決まった」


アーノルド殿下の説明に、エリアナは呆然となる。

イザベルの変わろうとする努力が無駄になるのは辛かった。


「婚約が解消されるからと言ってイザベルを見放したりしない。卒業までは婚約者だからしっかり守るよ。

それに、イザベルには卒業までにきちんと好いた相手を見つけるように話をしてある。政略ではなく、想い合う相手を見つけるようにと。私が後ろ盾となり応援するからと」


話を聞いたエリアナはホッと安堵した。


「建国祭まで学園は荒れたままだろう。エリアナ嬢の公表まで暫くの我慢だ」


アーノルド殿下の言葉に納得するしかない状況をエリアナは少し恨んだ。

恨んだ相手はエイミーだ。

静かに学園生活を送りたかったのに、いつもいつも絡んでくるエイミーを少しくらい恨んでも良いだろう。

と、その日だけは全てのイライラをエイミーの責任にした。




翌日はセドリックから一日の予定を聞き、その通りに過ごす。

昼食までは家から出てやらなければならない事を終わらせる。


冒険者ギルドに行き、エルランドさんに虹色の花を買い取る契約をした。

セドリックが既に学園と話を纏めていて、ダンジョンから持ち帰った虹色の花は冒険者ギルドで換金する事となった。

その他に渡す事を禁止した。

もし破れば退学処分となる。


厳しい処分になるが、冒険者ギルドと契約する事は学園にとって重大案件になる。


エルランドさんと話を終えると、セドリックがミラールさんと連絡を取り合っていたようでそのままシシュリー殿下とミラールさんと話し合いになった。


シシュリー殿下は竜人国の貴族を調べ上げ、スヴァルト王国と繋がっている公爵を見付けていた。


「公爵は竜人至上主義の過激派だ。竜人が世界で一番の強者だと勘違いしている阿呆だ」


シシュリー殿下はその公爵が心底嫌いみたいだ。


「阿呆は言い過ぎですが、思考がおかしいのは事実です。公爵はグルドア王が世界の統一者になるように、各国を狙っています」


(ミラールさんも公爵が嫌いなのね)


エリアナは嫌われ者の公爵がどんな人物か少し気になった。


「私は公爵を止めるために冒険者ギルドでギルドマスターをしている。強い竜人の冒険者の首根っこを掴んでおかないと、あの阿呆に掴まれば犯罪者に落とされる可能性が高いからな」


「男性が好きでギルドマスターになったのでは?」


セドリックがオブラートに包むことなくシシュリー殿下に問いかけた。


「エリアナさんもセドリック殿も竜人を見たであろう?整った容姿ばかりだから、変な噂が立つのだ。他国に行くと特に女性冒険者達が竜人を見てのぼせ上がる。竜人の男は強い女性か番か守ってあげたい女性でなければ興味を持たない。

見向きもされなかった女性冒険者達が仕返しにと、噂を流したみたいだ」


シシュリー殿下は気にした素振りも見せずに答えた。


「エルランドさんを追いかけてるのは、なぜですか?」


エリアナはシシュリー殿下がエルランドさんを狙っているように見えたので、気になって聞いてみた。


「エルランドは強いから好きだ。仲良くなりたいが、相手にされない」


ん?恋人じゃなく?


「恋人になって欲しいとかじゃなくて?」


「恋仲になれるならなりたいが、私では無理だな。エルランドは守ってあげたい女性が好きらしいから、初めから期待はしていない」


エリアナにはよく分からない。

好きだけど諦めている?でも、それで良いって……。


難しい顔のエリアナを見て、ミラールがクスクス笑う。


「竜人は好きの範囲が広いのです。強いから好き。可愛いから、かっこいいから、頭が良いから。沢山の人を同時に愛せます。

そして、興味のない者には酷く冷たい。

ですが、唯一となる者は別です。唯一の相手には執着と束縛で相手を閉じ込めてしまうくらい深く愛しますから」


「唯一以外は博愛主義って事?」


「その表現がしっくりきますね」


竜人について少し勉強になった。

竜人国の公爵の家名はまだ教えて貰えなかった。

シーベル殿下との繋がりの証拠がまだ見つかっていないからだ。


公爵と繋がっているスヴァルト王国の貴族は家名は教えて貰った。


〈 コーエン男爵 〉


その貴族は、エイミーの生家だった……。


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