1話 珍客の襲撃とこれからについて
第二章 投稿始めます
宜しくお願いします
「エリアナ様ー♡ようやく会えましたわー」
「ムグっ……くっ苦しい…」
エリアナは豊満な胸に顔を埋められ、息を吸うにもままならず苦しんでいる。
(いい加減っ 離れなさいよねっ)
エリアナは苛ついた結果、抱きつく相手に雷撃を落とした。
「エリアナ様の雷撃…痺れる……」
(このっ!変態!)
ようやく離れられたエリアナは、抱きついてきた相手を結界の中に閉じ込めた。
「なんで貴女がここにいるのですかっ!シシュリー殿下!」
結界中からうっとりとエリアナを見つめる視線に、エリアナは全身に鳥肌が立つ。
セドリックに後ろから抱きしめられ、ようやく落ち着いた。
「追いかけてきましたの。宜しくお願いしますね♡」
(もうっ嫌だー)
エリアナは半泣きでセドリックの腕の中に潜り込む。
「変態殿下は早速国に帰れっ!」
「腹黒に言われる筋合いはないっ!」
シシュリー殿下とセドリックが睨み合う中、少し離れた場所から声をかけられる。
「エリアナ嬢、?シシュリー……と聞こえたが、もしや竜人国のシシュリー王女殿下ではないか?」
エリアナに声をかけてきたのは、アルベルト陛下だった。
エリアナはすっかり自分がどこにいるのか忘れていた。
エリアナは両陛下と謁見の最中であった事を……。
竜人国から帰って来たエリアナは、セドリックと一緒に近衛騎士に連れられ、とある部屋の前へと連れて来られていた。
豪奢な扉の前。
予測は出来た。
この扉の奥にいるであろう人物に。
「リア、緊張しなくて大丈夫ですから。陛下はとても聡明な方です。悪いようにはなりません」
(うん。やっぱり陛下よね……)
エリアナはセドリックの手をギュッと握り扉を見つめる。
開いた扉の先にはスヴァルト王国の国王、アルベルト陛下とヴィオラ王妃がソファーに座り待っていた。
アーノルド殿下は陛下達の後ろで控えている。
エリアナはセドリックにエスコートされ、両陛下の側に来ると礼をとり両陛下へと視線を向けた。
「座ってくれ」
陛下の言葉に対面に腰を下ろした。
「こうして間近で顔を合わせるは久し振りだな。エリアナ嬢の話はいつも耳にしておるので、久し振りの感じがせぬな」
陛下は穏やかな口調で、ガチガチに緊張しているエリアナに声をかけた。
「エリアナさん、久し振りね」
ヴィオラ王妃もエリアナに声をかける。
「は、はい!お久しぶりです、王妃様」
エリアナの返事にヴィオラ王妃はにこりと微笑み、陛下へと視線を戻す。
「セドリックから昨日連絡を受けた。何やら大事な話しがあるとか」
エリアナは物語の話はせず、自身の話を伝える。
陛下はエリアナが神様からの加護を授かっている事と黒竜の守護を受けている事は知っていた。
エリアナが転生者である事
王都で話題のハーマン公爵家が新たに設立した商会のオーナである事
黒竜とは正しく契約している事
竜人国との行き来を許可された事
そして、竜人国からの留学生であるシーベル殿下がスタンピードの黒幕の可能性が高い事や、緑竜を連れている可能性がある事。
一気に全ての秘密を話終えたエリアナは、疲れてしまった。
深呼吸し、両陛下へと視線を向けると、お二人はポカーンと口を開いたままエリアナを見ていた。
「あの……」
エリアナの声に両陛下はハッとなり、小さく咳払いをした陛下は目を閉じ両腕を組むとなにやら考え始めた様子。
ヴィオラ王妃は少しだけ困った表情をされた。
エリアナは王妃の困り顔の意味が解らず、セドリックに視線を向けた。
視線が合うと、セドリックは陛下の考えが理解出来るのか苦笑いだ。
「あの……」
エリアナの問いかけに、陛下は目を開けるとエリアナへと向かい合った。
「エリアナ嬢の話は理解出来た。シーベル王子が何やら怪しい事もだ。
だが……。セドリックの神様の加護はよろしくない。神殿が黙ってはいないだろうからな」
(以前話を聞いた婚約の話ね)
「陛下、私の神様の加護も治癒のスキルも全てエリアナのために与えてもらったものです。エリアナの神様のお気に入りのギフトは呼び方こそ加護より下に思いますが違います」
「どう言う事だ?」
「直接話された方が早いでしょう」
セドリックが横掛け鞄から、ラビと黒竜をテーブルに置いた。
ぬいぐるみのように並べらたラビと黒竜。
「まぁ!なんと可愛らしい」
王妃様は小さな黒竜を見て、畏怖する対象よりも可愛らしいが勝ったようだ。
陛下は王妃様とは対象的で表情は硬い。
「セドリック、説明を」
アーノルド殿下はラビが何者かを知っているため、セドリックに早く説明をしろと催促している。
「ラビから説明をしてくたさい」
セドリックはラビが知らない振りをするので、頭を突いた。
『わかったよ。僕は神様だ。今から説明をするから、ちゃんと聞いてね』
神様は兎から子供の姿になると、両陛下の前に浮かんだ。
陛下も王妃様も唖然としているが、神様はお構いなしに説明を始めた。
『この世界は私が好きな物語を真似して作った世界だ。そして、エリアナ達異世界人をこの国に転生させた。この国には五人の転生者がいる』
「五人?ですか?」
陛下も転生者の数に驚いている。
『今、公になってるエイミーとイザベラ。アスティー辺境伯のリリアーナと娘のキャシー。
そして、僕のお気に入りのエリアナだ!』
腕を組みドヤ顔で言われても、困ってしまう。
『エリアナの元いた世界はとても素晴らしく、面白い世界なんだ。物語の数も沢山あってさー!だから、僕はお気に入りの物語の世界を創ったんだ。
この物語のシリーズの初期のお話にリリアーナを転生させたんだけど、あれは最初から役を放棄して物語を壊しちゃったからさー。その結果、学園編は成り立たなくなっちゃうしー。
まぁ、続編のダンジョン編を見たくてこの世界に手を加えたんだ!!その配役にエイミーとイザベラに転生者の魂を入れて、エリアナは面白そうだから転生させたんだ。後は……キャシーか!キャシーは物語の作者だから、これも面白そうだから転生させたんだ』
神様はつらつらと話をするけれど、陛下や王妃様の表情を見る限り理解出来ているようには見えない。
かく言うエリアナも、神様の話に理解が追いついていない。
「ようは、神様の好き放題で転生者を増やし、この世界を創っただけです」
エリアナが簡潔に説明する。
「なるほど」
両陛下はエリアナの説明に納得した。
『説明が雑じゃない?』
神様はぶーぶー文句を言うけど、神様の説明で理解出来るわけがない。
「私ですら神様の説明は理解出来ないのよ?初期とかダンジョン編とか言われても、シリーズを知らない私は誰がどのお話の人物か解らないもの」
『エリアナはシリーズを読んでないの?』
「恋愛メインの異世界の物語は興味無かったから。ダンジョンとか冒険ものしか読んでないわ」
『恋ダンはたまたま読んだの?』
「友達に渡されたから読んだけど、恋愛メインだからあんまり好きじゃないって神様にも言ったけど?」
神様はコテンと首を傾げ、
「言ってたっけ?」の仕草をしていた。
『あー!セドリックの表紙に一目惚れしっ……むむっ』
エリアナはこれ以上口を話をさせないとばかりに、神様を捕まえて口を塞いだ。
「リアは私に一目惚れしたのですか?」
知っているはずのセドリックが怪しげな笑みを浮かべエリアナの耳元で囁いた。
ゾクリとする甘い声にエリアナは身を震わせたが、今はそれどころではない。
「神様もセドリックもいい加減にしなさい!きちんと話し合いしなければいけないでしょうがっ!」
神様をセドリックの胸に押し当て、エリアナがお説教をする。
「神様もふざけていないで、きちんと説明しなさい!そして、セドリックは大人しくしていなさい!」
エリアナがプリプリ怒る姿も可愛い。
セドリックを始め、両陛下もアーノルド殿下もそう思っていた。
『フフッ。可愛いよね、エリアナはさ。
そうだね、きちんと話をするよ。話せない事もあるからそれは理解してね』
宙に浮かぶ神様へと視線が集まる。
『リリアーナが登場する物語がこの世界の主軸だった。でも、話が壊され世界が変わった。だから、恋ダンの主役達は産まれないはずだったけど、強制的に子供を割り当てたんだ。リリアーナはスタンピードで黒竜に殺されるけど、学園編では生きて登場する。
学園編のリリアーナの夫ルーベンじゃない別の人物だし、陛下は聖女が妻になるはずだった。
親が違うけど、子供をそのままにすれば物語は出来上がるからね!』
神様の口調が軽いけれど、話す内容は重い。神様が勝手に本来の子供とは別の子供を当てはめた。
そう言っているのだから。
アーノルド殿下のお母様は聖女ではなく、ヴィオラ王妃。それを知るだけで本来の子供とは違うのであろう事を意味する。
でもそれは、物語の話であって私達が生きている現実世界の話ではない。
現にアーノルド殿下のお母様はヴィオラ王妃で国のために尽くしている。
理解してしまったから、誰も口を開かない。
部屋の中は、ただ静寂が広がるばかり。
重苦しい空気の中、扉の向こうが騒がしくなった。
エリアナとセドリックが立ち上がり、両陛下を背に守るように外の様子を伺う。
数人の言い争う声に部屋の中に緊張が走る。
扉が勢いよく開かれると、見知った人物が現れた。
「貴女は……くっ…ちょっ…」
現れた人物は一瞬でエリアナに近付き抱き込んだ。
暴れるエリアナを胸に押し当て、恍惚の笑みを浮かべている。
そして、冒頭に戻る……。
「シシュリー殿下、貴女はここがどこか理解していますか?スヴァルト王国の両陛下の御前で何をやってくれるのです!」
エリアナがシシュリーに注意するも、効果はない。
「怒るエリアナ様も可愛い♡」
(マジでムカつくんですけど……)
エリアナの表情がなくなり部屋の中に冷気が漂い始めた。
セドリックはエリアナを本気で怒らせた事に気が付いた。
が、標的はシシュリー殿下なので放置する。
その冷気に気が付いた人物がもう一人。
体面を気にする事なく、アルベルト陛下の腕の中にヴィオラ王妃が隠れたのだ。
お茶会でのエリアナの姿は畏怖する対象となっており、ヴィオラ王妃のトラウマとなっていた。
「シシュリー殿下。いい加減にして下さい。竜人国の代表である貴女が無礼を働けば、竜王様の名に傷が付くのですよ?それが理解出来ないのであれば、王族を辞しなさい」
エリアナはシシュリーと決闘したあの時よりも冷たい怒りの魔力を放っている。
膨大な魔力を目の前にシシュリーの体が震える。
「ご、ごめんなさい。でも、エリアナ様にどうしても会いたかったの」
結界の中でしょんぼりとなり涙ながらに謝罪するシシュリーは立ち上がると、エリアナの背後に守られるスヴァルト王国の両陛下にも謝罪をした。
エリアナは魔力を霧散し、怒りを消した。
「会いたいのなら正式な手続きを踏むか、私に手紙でも届けてくれれば会います。相手の事を考えず、我儘を言う人が私は一番嫌いです」
はっきりとシシュリー殿下に伝える。
「シシュリー殿下、だから言ったではありませんか。エリアナ様に嫌われますよと」
扉からため息交じりに声をかけたのは、ミラールだ。
「ミラール様もこの国に?」
「はい。陛下からシシュリー殿下を見張るようにと命を受けましたので……」
「ご苦労様です」
苦笑いでミラールは返事を返した。
(シシュリー殿下の子守は大変そうだ)
「シシュリー殿下、今は時間がありません。空いた時間をお伝えしますので、大人しくし待っていてください」
エリアナのその言葉にシシュリー殿下は笑顔になり、ミラールに引きずられながら手を振り退室していった。
「話が纏まりませんから、私から提案しても?」
セドリックが陛下にエリアナの事を公にする手順を説明する。
「まず、王家からエリアナは転生者であると公表して下さい。その日、エリアナの商会の商品は全てエリアナの提案により作られた品だと公表します。
ですが、シーベル王子の行動を把握出来ない今は、黒竜はエリアナの守護竜のままにします。
そして、神殿にはエリアナの転生者の公表の前より先に私の神様の加護を報告します」
「神殿を巻き込むのか?」
陛下か口元を少しあげ、セドリックへと問いかけた。
「そうです。神殿の勢力図は良くありません。聖教様よりスタンリー神官長の立場が強過ぎます。その理由の一つがエイミーやイザベルの二人の転生者とスタンリー神官長の子息カールが仲が良いからだと思われます。
転生者を敬愛する国民は、スタンリー神官長に忖度しますからね。その勢力図を塗り替え、聖教様に権力を戻そうかと」
アルベルト陛下は今度こそ笑みを浮かべた。
「セドリックとエリアナ嬢の婚約に必ず異を唱えてくるであろう。そこにエリアナ嬢の与えられた加護をぶつけるのだな」
「大勢の前で実行したいので、神官長との話し合いは大勢の貴族の前で行って頂きたく」
「わかった。宰相には伝えるが、構わんか?」
「勿論です」
アルベルト陛下は神殿を一掃出来る事にご機嫌のようだ。
「私の加護は当て馬なのね?」
『当て馬だけど神殿は穢れてるから、僕も困ってたんだ。エリアナの加護を使って一掃出来るなら、お願いしたいくらいだよ』
「神官長と対峙する時は、神様にはその場に神託をおろしてもらいます。エリアナの加護の説明をして頂かないと、神殿が納得せず煩いでしょうから」
「聖教様はどうするのだ?その場に呼ぶのか?」
「そうですね……」
エリアナ自身の事なのに、随分前から蚊帳の外。
陛下とセドリックに神様の三人は悪そうな顔を隠すことなく、楽しそうに作戦を練っている。
「確かに根回しはお願いしたけれど、明らかに蚊帳の外状態はね……」
ポツリと呟いたエリアナの言葉に、ヴィオラ王妃が話しかけた。
「エリアナさん、こっちでお茶でも飲みましょう」
エリアナは同じく放ったらかし状態の黒竜を抱えると、ヴィオラ王妃の後を追いテラスに出た。
アーノルド殿下がお茶の用意をしていたらしく、エリアナとヴィオラ王妃の椅子を下げ座らせる。
「あちらは悪巧みに夢中ですから、こちらはゆっくりお茶会にしましょう」
黒竜を膝に乗せ、エリアナがクッキーを手に取り黒竜へと渡す。
短い両手でクッキーを掴み、モグモグ食べる姿はとっても可愛い。
ヴィオラとアーノルド殿下の視線は黒竜に釘付けとなる。
「抱っこされますか?」
ヴィオラ王妃は黒竜から視線を外しエリアナに向けると、恥ずかしそうに頬を染めながら頷いた。
クッキーを掴み夢中で食べている黒竜をヴィオラ王妃の膝の上に置く。
「キュッ?」
と、可愛い声で自分の座る場所が変わった事に不思議そうな声を出した。
「可愛い声ですわね」
ヴィオラは目を細め嬉しそうに黒竜を眺めている。
「鳴き声は可愛いのですが、会話となると地を這うような低い声なので驚きますよ」
エリアナがそう教えるとヴィオラ王妃は幼子のように目を見開き驚いていた。
「黒竜が私以外に声を聞かせる時は怒っている時が多いので、鳴き声だけ聞いていた方が良いですね」
「まぁ!」
またまた驚くヴィオラ王妃。
「エリアナさんを守る時だけなのですね。神様にも黒竜にも愛されるエリアナさんは凄い方なのね。しかも、竜人国の竜人王からも信頼され、王女殿下からも愛されてますし」
「シシュリー殿下の事は納得したくありません」
ヴィオラ王妃からシシュリー殿下との出会いを聞かれ、竜人国での決闘の話を伝えた。
「エリアナ嬢に喧嘩を売るなんて……。
ギルマスの位を受けるくらいの力量ならば、エリアナ嬢の凄さは見抜けるはずでしょうにね」
アーノルド殿下はシシュリー殿下を残念な王女と認定した。
「エリアナさんと喧嘩した後は親しくなる事が出来る。そのような噂が流れていますから、もしかしたらエリアナさんに粉をかけに来る人が増えるかもしれませんね」
「はい?!」
(なんですかそれは!迷惑過ぎます!)
肩を落として溜め息を吐くエリアナの姿に、ヴィオラ王妃とアーノルド殿下はクスクス笑う。
「喧嘩のお話もそうですが、エリアナさんはSSランクの冒険者であり転生者。黒竜と契約していますし。契約ではなく守護と公表するでしょうが。
それに加え、神様からは特別なギフトを授かっています。国内だけでなく、国外からも手が伸びてきそうですわね」
ヴィオラ王妃の言葉に、エリアナはとうとう頭を抱えた。
並べられると、自分の手の内はとんでもない切り札ばかりが揃っている。
「エリアナさんの力になれるように、私達は国としてエリアナさんを守ります。エリアナさんを他国に渡すわけにはいきません。エリザ夫人が悲しんでしまいますもの」
ヴィオラ王妃の言葉で気が付いた。
エリアナが表に出れば、家族にも迷惑が行く。
しかも、行動を起こす前に両親に話をするように約束していた。
「まずいわね……」
エリアナは両親から怒られるのを覚悟するしかない。
邸に帰ってから両親にどう説明するかを考え始めた。




