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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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76話 新学期と魔法・魔術大会

アルーン国でのスタンピードは、アルーン国にも周辺諸国にも被害がなく終息が各国に通達された。


また、黒竜が何者かにより穢され事によりスタンピードが発生した。

と、一部の情報を世界に向け開示した。


ファルナとレーニアが関与していた事は主犯が見つかるまで機密事項とされた。


セドリックが話していた通り、ファルナとレーニアは王宮でも社交界でも針の筵状態にある。

真実を語る者はやはりいて、噂は直ぐに広まった。

表立って貶められる事はないが、以前のように羨望の眼差しを受ける事もない。

ただ、遠巻きに様子を伺われ避けられているだけ。


正直、ざまぁみろ。であった。


キャシーとダリル殿下はリリアーヌが駐屯地に戻られるまで待つらしく、キャシー達とは駐屯地で別れた。


エルランドやヤヌス達と魔馬の馬車でスヴァルト王国へと帰路につく。



王都に戻ると、街はスタンピードに参戦したエリアナ達を大歓迎で出迎えてくれた。


冒険者ギルドはお祭り騒ぎらしい。


馬車が冒険者ギルドの前に到着すると、大歓声が上がった。


エルランドが先頭で降りて、次にヤヌスとメルにルアンとレイナが降りてきた。

ヤヌスとルアンはSランク冒険者となり、冒険者仲間から沢山の祝福を受けていた。


エルランド達が馬車と向かい合うようにギルドの入口に立っている。


セドリックが馬車から降り立つと、辺りは静かになった。

セドリックが馬車の扉に手を差し出すと、細い手が乗せられエリアナがゆっくりと降りてきた。


エリアナは、今日も今日とてセドリックが厳選した衣装を着用している。

はっきり言って、戦闘向きの衣装ではない!

前回のチャイナドレス風ではあるが、スリットが後ろにある。

蹴りをしたならば、確実に破けてしまう。

エリアナの猛抗議も虚しく、色気しかない衣装で皆の前に出る事になった……。


(恥ずかしいけれど、SSランクになったからには失望されるわけには行かない)


腹に力を入れ、堂々と立ち振る舞う。

エリアナが皆の前に姿を現すと、全員が息を呑む。


タイトな衣装に高く結い上げた髪がサラサラと風で流れる。

凛とした姿は騎士のようであるが、その妖艶さを晒す姿に皆の視線は釘付けとなった。


静寂の中パタパタ……と、エリアナの背後から音がする。


エリアナが振り向き両手を伸ばすと、その先には小さな翼をパタパタさせる黒竜がいた。


各国には浄化をしたエリアナを黒竜がとても気に入り、守護竜としてエリアナの側にいる。


そう伝えられていた。


黒竜を目の前にするまで、半信半疑でいたのだ。


エリアナの胸に黒竜が張り付くと、エリアナは抱きかかえセドリックにエスコートされエルランド達と冒険者ギルドの中へと入って行った。


ギルドの周辺は、地震でも起きたかのようにビリビリと歓声で揺れていた。


エルランドやヤヌス達の英姿颯爽を目の当たりにし、エリアナとセドリックの美麗なカップルを直視し大興奮状態だった。


しかも妖精姫が黒竜を抱いている。


絵画でも見るかのような光景に、興奮が収まらずにいた。



スタンピードに参戦した七人は沢山の祝典や夜会にお茶会と、忙しく過ごす事になった。


その前にエリアナは両親に泣きながら怒られてしまった。


「冒険者となり子爵家を支えてくれた事は感謝している。だが、先に話をしてくれ。相談をしてくれ。王都に戻って来たものの娘がスタンピードに参戦したなど……。親の心配する気持ちも考えてくれ」


ギルベルトとエリザに泣かれてしまったのだった。


長期休暇はもう少しで終わってしまう。


エリアナはセドリックを誘い、冒険者稼業に精を出す事にした。

黒竜はお留守番。黒竜がいると、魔物がいなくなるから。



バタバタした長期休暇も終わり、新学期が始まる。


アーネットとケイシーは二期からは寮に入る事になった。

二期からは生徒会の仕事が忙しくなるので、別々の行動も増えてしまう。


エリアナは淋しく思うが、セドリックは通学の馬車でエリアナと二人きりになれる事に喜んでいた。


馬車の中ではセドリックがエリアナを膝に乗せ、会話をしながら髪を梳いたりと、エリアナへの溺愛行動が加速していた。


恥ずかしがるエリアナは、セドリックの大好物である。

馬車の中ではいちゃいちゃが続いている。


黒竜は?


黒竜は学園にエリアナが通う間は邸でお留守番である。


学園に到着し学園へと足を踏み入れる。


今日の授業は魔術科から始まる。

二期の授業の中心はそれぞれの科で異なるが、二期は魔術科と魔法科は大変忙しくなる。


二期が始まり二十日後に、魔術・魔法対戦が行われる。

対戦は魔術科、魔法科、それぞれ二人一組でペアを組みトーナメント制で優勝を決める。


魔術・魔法対戦が終わると、ダンジョンに潜る事になる。

ダンジョンの授業は強制ではないが、ほぼ全ての生徒が参加をする。

三学年はダンジョンの試験を受けていたが、ダンジョンの強さが変化したため再度潜る事になる。


エリアナは二期を心待ちにしていた。

魔術科の立ち位置をのし上げようと考えている。

魔法科には負けたくなかった。

魔術科の生徒の苦しい立場をなんとかしてあげたい。そして、魔術は魔法の下ではないのだと。

魔術も魔法も同等に凄いものであると伝えたい。


そう思いを胸に抱え、魔術科の教室の扉を前に呼吸を整えそっと開いた。


(もしかしたら……。と、思っていましたよ?)


一学年の教室には、二学年・三学年全員が揃っていた。

扉を開けた瞬間、大歓声と拍手でエリアナを迎えてくれた。


「誰もいないと思ったら、こちらにいたのですね」


エリアナの背後には、先ほど別れたセドリックが立っていた。


セドリックに背中を支えられ、教室へと足を踏み入れる。


教壇の横にはヨリ先生とヴィラ先生とサイ先生が並んでいる。

ヨリ先生に手招きされエリアナは教壇に向かう。セドリックはアーノルド殿下に呼ばれそちらに向かう。


「おはよう、エリアナ君。そして、スタンピードの制圧の成功、おめでとう」


「ありがとうございます。そして、おはようございます」


ヨリ先生にお礼を伝える。


「皆、エリアナ君と授業をする事を楽しみにしていたんだ」


と、ヨリ先生が何故全学年の生徒がいるのかを教えてくれた。


エリアナを見送りに来ていた学園長と宰相から、生徒達は厳しい言葉を頂いたらしい。

魔術科の生徒は学園長の話を聞きながら、頭に思い浮かぶ人物がいた。それが、エリアナであった。


自身を高め家族と領民を守り、国に尽くす。

そんなエリアナに少しでも近付きたいと、魔術科の生徒はヨリ先生達を交え話し合いをした。


長期休暇中は、冒険者ギルドに行ったり訓練場に集まり魔術を放ったり新しい魔術を考えてみたり……。


全員が魔法科との対戦に向け、努力をしていたと。


そう教えてくれた。


「同じ学園に通うエリアナ君はスタンピードに参戦するくらいの実力を持っている。エリアナ君の元々の才能もあるけれど、私達に教えてくれた毎日欠かさない訓練と新しい魔術を組み合わせ考える努力を、私達は知っている。

ならば、自分達ももっと上に行けるのではないか。

そう生徒達は考え、長期休暇ずっと頑張っていたんだよ」


エリアナは込み上げる思いを必死に飲み込む。

涙をためながら、ヨリ先生をじっと見つめる。


「エリアナ君のおかげだよ。魔術科の生徒は何かしら抱えている者も多く、後ろ向きな生徒が多い。だが、前向きに思考を切り替え魔術を行使する事を誇りに思ってくれた。私達教師が伝えたかった事だが、私達より同じ生徒のエリアナ君の言葉と行動で皆に伝わった。ありがとう、エリアナ君」


(ずるい……。こんな言葉を貰ったら泣くに決まっているじゃない……)


ヨリ先生と見つめ合いながら、エリアナはポロポロと涙を流してしまう。


「良かったですね、リア。そして、可愛い泣き顔を見せてはいけません」


と、向かい合うヨリ先生からクルリと反転させられ、セドリックの胸の中に顔を隠された。

セドリックの胸で泣こうとしたエリアナだが。


「待って!」


エリアナはセドリックの胸を押しやり、ヨリ先生に詰め寄った。


「先生!お願い!今すぐ訓練場の扉を開けて下さい。早く!」


ヨリ先生の腕を掴み教室のもう一つの扉を急いで解放させる。


エリアナは走って訓練場の中に向かう。


先生も生徒もエリアナの後を追い、訓練場へと向かう。



「リア?どうし……」


セドリックが声をかけようとすると、とてつもない魔力の塊が向かって来るのが解った。


エリアナが見上げる先を全員で見ていると、黒い魔力の塊が振って来る。その黒い塊はエリアナの胸の中に飛び込んで来た。


「どうしたの?」


エリアナの優しい声に視線を向けると、そこにいたのは黒竜だった。


【エリアナが泣いていた。何かあったかと心配になった】


「私が泣いた事も解るの?」


黒竜は撫でられながら、コクリと頷いた。


「心配してくれてありがとう。嬉し泣きだから大丈夫よ」


【そうか、なら良い】


エリアナは黒竜の心配してくれた気持ちが嬉しくて、ギュッと抱きしめた。


「リア、皆が固まってますよ」


エリアナはハッとなり、辺りを見渡すと全員が黒竜を見て確かに固まっていた。


「スタンピードで浄化をした黒竜よ。とっても優しい竜だから大丈夫」


エリアナは黒竜の両脇に手を入れ抱え上げ、皆に黒竜を向けて説明をする。


「可愛い……」


一人の生徒の言葉をきっかけに、エリアナと黒竜の周りには生徒が集まってきた。


黒竜は驚いてエリアナの手から離れ、パタパタと小さな翼を動かし宙に浮いている。


生徒全員の視線を受け、黒竜は動揺していた。

ワタワタし始めたが、結局エリアナの胸に飛び込み隠れる事を選んだ。


「エリアナ君を心配して飛んで来るのなら、最初から学園に一緒に来る方が良いのかもしれませんね。学園長に話をしてきましょう」


ヨリ先生が黒竜とエリアナを見ながら、学園長へ話をしてみると教室へと戻って行った。


「あ!エリアナ君は、このまま魔術の指導をお願いしますね」


迷惑をかけてしまったからには、ヨリ先生に従うしかない……。


エリアナは了承して、何から始めようか考える。


「黒竜の事は、昼食の時に話をしましょう。時間が勿体ないから、早速始めますよ!」


エリアナは黒竜を背中に背負い、生徒達に指示を始めた。


「自分で描ける最小の紋を浮かべて、最大の防御を紋に刻んで下さい。そして、そのまま維持して下さい」


エリアナの指示で、生徒達は目の前に自分の出来る一番小さな紋を描き円の中に防御紋を展開する。


エリアナは魔力感知と鑑定を使い、素早く生徒一人一人の実力を見ていく。


アーノルド殿下や側近達は元々の魔力量が多いので、出来るのは当然であった。


「はい!解除して下さい」


エリアナの声で紋を消す。


「それにしても、皆さん凄い!紋に流す魔力操作も洗練されていましたし、何より紋を描く正確さは素晴らしいです!」


エリアナは大興奮で全員を褒めた。


鑑定の結果、全員が冒険者としてはBランク以上で魔術師として一人立ち出来るAランクの魔力操作を扱える事が解ったからだった。


でも、今は教えない。

魔法科との対戦を終えるまで、皆の実力の凄さを話さないと決めた。


今の位置で満足してもらっては困るからだ。もっと高みを目指して貰い、魔法科との対戦では上位を全て魔術科の名前を連ねさせる事が目標だからだ。


「属性毎に分かれて下さい。そして、その中で攻撃と防御の得意な方に分かれて下さいね」


エリアナの指示で各属性に分かれて行く。

皆で話し合いながら、防御と攻撃に分かれているようだ。


「リアはこれから何をするのですか?」


セドリックがエリアナに問いかけた。


「ん?対戦に向けてペアを作るのよ。実力と相性を見て組み合わせようかなって」


「そうなのですね。ペアになり、お互いの息を合わせるためですね」


セドリックはエリアナの提案を感心していた。


「セドは私とペアだからね」


エリアナはニコニコ笑顔でセドに告げるが……。


「私とリアは大会に出れませんよ?」


セドリックの言葉にエリアナは笑顔のまま固まった。


「SSランクやSランクが出ては意味がありません」


「嘘でしょー!!」


エリアナは絶叫と共に草原に手をつき蹲ってしまった。


黒竜はエリアナの背中に座り、状況を理解出来ずにキョロキョロしている。


エリアナは四つん這いになり何やら叫んでいる。黒竜を背中に乗せて悲しんでいても、その姿はかなりおかしい……。


セドリックは笑いを堪えるのに必死でエリアナに声をかけれない。


生徒達はエリアナの絶叫に気が付き振り向くと、エリアナがおかしな体勢で叫んでいる。


誰も声をかけないため、暫くエリアナは奇妙な姿を晒す事になった。


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