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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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74話 破天荒な娘を持つ親の苦労

朝早くから第二王子のファルナと、元聖女のレーニアを王都へ帰還させる為に朝から話し合いをしている。


「黒竜への魔道具の取り付けは許されない行為だ。だが、第二王子を裁くと主犯が誰であるか判らないままとなる。黒竜も、主犯を捕まえたいらしいからな……どうしたもんか」


エルランドは頭を抱えた。


「自由にさせてみるのもいいのでは?王宮に黒竜が第二王子に怒りを向けた映像は送られていますが、ただそれだけ。

真相は王宮の者はまだ知らないでしょう。王妃の子であるため、今は誰も何も言えないし、聞くことも出来ない。だが、駐屯地に同行した者達は事実を知っています。きっと、誰かに話をするでしょう。噂は静かに広まります。黒竜に手をだし、スタンピードを起こさせた犯人ですから。ですが、やはり誰も何も言えない。疑いの視線で見られる第二王子とレーニア嬢は、針の筵の中で生活を送る事になるでしょうね」


面白そうですよね?と、普通に言ってのけるセドリックは、ファルナとレーニアを許すつもりはない。

黒竜がエリアナの胸に契約紋をつける結果となった二人を許さなかっただけだった。


本当の理由を知るエリアナは溜息を吐き、黒竜は昨日のクドクドとしつこい説教を思い出し苦笑いする。


「あの二人はアルーン国に全て丸投げしよう。フィーナは王宮に呼ばれ審問を受ける事があれば、全て話をしてくれて構わない。アードとエリアナの能力もその時は話す事を許可する」


「了解。とりあえず、こちらの陣営から同行者を付けた方が良いわね。何かあってはいけないし」


「選定はフィーナに任せる。昼にはここから出て行ってもらおう。それと、エリアナは森の浄化が全て完了したか確認してくれ。もし瘴気が残っていれば浄化も頼む」


王子の見送りに行かなくて済む。と、快く了承した。


第二王子が駐屯地を立つ時に、リリアーヌも一緒に同行したらしい。勿論ルーベンも。

リリアーヌはアルーン国の陛下との話し合いを直ぐにするらしいのと、ルーベンに怯える第二王子は大人しくなるので丁度いいらしい。


キャシーとダリル殿下は駐屯地に残りリリアーヌが戻るまで待つことになった。






エリアナがエルランド達とアルーン国へ向かう為に馬車で王都を離れる頃に、時間を戻してみる。


同じ時刻。王都のカーマイン子爵家に領地からやってきた馬車が到着する。


馬車の扉が開いた瞬間に当主であるギルベルトが飛び出してきた。


いきなりな当主の到着に使用人たちも大騒ぎとなった。

遅れて馬車からは妻のエリザが降りてきた。


邸からは、滞在中のコート伯爵夫妻がギルベルトとエリザを出迎えた。


「お久しぶりです、カール殿、エリザ夫人」

カールの隣で、メイリーが頭を下げていた。


メイリーに走り寄る人影があった。


「メイリーさん!」


エリザがメイリーの手を取り声をかける。だが、メイリーは頭を上げることはなかった。


肩を震わせながら、何度も謝罪の言葉を繰り返す。


「トリス侯爵家が三度の愚行をエリザ様に向けてしまいました。本当に……お詫びのしようもございません」


メイリーの足元にはポタポタと雫が落ちている。

エリザはメイリーを優しく包み込み、背をさすり続ける。


「良いのです。もう、気にしないでください」


エリザはメイリーを支えながら邸に入って行った。


邸に入りリビングに向かう廊下で、カールがギルベルトに問いかけた。


「ギルベルト殿は急いでいらしたが、何か急用でも?」


「あ!そうなのです!カール殿!王妃様や四代公爵夫人とのお茶会があったとは、どういう事なのですか?しかも、エリアナがまた暴走したと……」


カールはギルベルトの耳に届いたのかと、早い知らせに驚いた。


リビングに到着し、エリザはメイリーを座らせ夫のカールに託した。


お互い対面に座り、早々にギルベルトが口を開いた。


「パトリック殿から手紙を受け取りました。王妃様と四代公爵夫人の同席したお茶会があったと。詳しくは王都で聞かれよと」


細かく説明するのを面倒だと思ったパトリックは、要点だけを記して手紙を送っていた。


その手紙を読んだギルベルトとエリザは、大慌てで領地を出て来たのだった。


カールが説明をしようとすると、リビングの扉がノックされた。


執事が「お嬢様達がお戻りです」

そう告げると、執事の後ろから現れたのはアーネットとケイシーの二人だけ。


「エリアナはいないのかな?それに、セドリック殿は?」


ギルベルトが二人にそう問いかける。


「エリアナ様とセドリック様はアルーン国で発生したスタンピードの討伐に向かわれました。学園に宰相様と学園長がお見送りに出られ学園は騒然となりました。ギルドマスターがエリアナ様とセドリック様をお迎えに来られ、もう王都を出た頃だと……」


アーネットの説明に、ギルベルトとエリザは意識を失いかけた。


「ギルベルト殿!気をしっかり!」


カールとメイリーがそれぞれ夫妻を介抱し始めた。


カールはアーネットとケイシーに視線を向け、ソファーに座るように促す。


「どういう事なのか……王妃様のお茶会の話を聞こうと邸に来てみれば、娘はスタンピードに向かったなんて……」


執事が冷たいタオルをギルベルトとエリザに差し出し、温かい紅茶を淹れた。


ギルベルトとエリザはカールから王妃様のお茶会の話を聞かされた。

伯爵家へ王妃様からの謝罪の場を用意されていた事。

それはエリアナとセリーヌ夫人によるもので、メイリーの心の奥底に隠し続けたエリザへの思いを吐露する機会となった事。

メイリーは王妃様に不敬な話を伝えたが、四代公爵夫人の名の下に処罰は受けないと宣言された事。


エリザはメイリーの話を聞き、顔を青褪めたが次には泣き出しメイリーを抱きしめた。


「こんな私を慕ってくれていたのですか?社交界から蔑まれている私を……」


「エリザ様を下に見る者は価値を見誤った者ですわ。エリザ様ほど他者に優しく温かな女性を私は知りません」


二人はエリザが婚約破棄されて以来交流はなかった。でも、お互いを思い遣る気持ちは昔のままであった。


「スタンピードはセドリック様からエリアナ様への贈り物なのだそうです。エリアナ様は学園で騎士科・魔術科で生徒を指導しています。お休みの日も何かと忙しく、大好きな冒険をする事も出来ずにいたのです」


アーネットから学園での様子を聞き、またギルベルトとエリザは驚いていた。


「エリアナが教師のような事をしていると?」


「そうです。エリアナ様は魔術科では一学年から三学年、全ての指導をしています。教師すらエリアナ様からの師事を乞うくらい尊敬されています。騎士科も、半数の生徒を受け持ち指導しています」


ケイシーの説明に、ギルベルトもエリザもポカーンとしていた。


「私はエリアナ嬢に病を治して貰った。それに、我が伯爵家へ嫌がらせをするフィデラ夫人も排除出来た。全て、エリアナ嬢のおかげなのです。感謝してもし足りないくらいです」


カールがギルベルトに深くお礼を伝える。


「そ、そうですか……」


邸に来てから、親である自分達の知らぬところでエリアナは活躍していた事をきかされる。

だが、報告はして欲しかった。


娘の様子を他者から聞かされる親の立場は……。

そう思うと、少しだけ腹が立ってきた。

手紙を読み心配して来てみれば、スタンピードを贈り物だと聞かされ討伐に向かっていた。


死ぬかもしれないのだぞ?


それなのに、親に何一つ告げずに既に王都から出たと?


カールとメイリー、それにアーネットとケイシーもギルベルトの纏う魔力の変化に気が付いた。


「エリアナ……帰ってきたら説教だな」


ギルベルトは怒る事はない。

エリザもギルベルトが怒る場面を見た事が無かった。

優しい人が怒ると怖いと耳にするが、正しく目の前のギルベルトは恐ろしいくらい静かに怒っている。


コート伯爵一家はエリアナに大恩がある。

でも、親としてギルベルトの気持ちも痛いほど理解出来る。


エリアナが帰って来るまでギルベルトの怒りを少しでも逸らそう。

伯爵一家は一致団結してギルベルトに対処する事を誓い合った。


だが、伯爵一家の奮闘虚しく、またもやエリアナについての報告を受ける事になる。



伯爵夫妻はギルベルトの怒りの矛を収めて貰おうと、観劇や狩りに誘ったりと連れ出していた。


その日はハーマン公爵家にカーマイン子爵夫妻とコート伯爵夫妻がお茶会に呼ばれた。


ハーマン公爵家に到着すると、中庭へと案内され当主のパトリックと夫人のセリーヌが既に待っていた。


待たせた事を謝罪し、三組の夫婦はお茶会を始めた。


王妃様とのお茶会の話をする際、セリーヌがギルベルトとエリザに謝罪をした。


「あのお茶会を勧めたのは私です。エリアナちゃんは最初フィデラ夫人に会いたくないと拒否をしていたの。

会えば絶対に揉め事になるからと……。

それでもあの日エリアナちゃんがいなければ、フィデラ夫人をやり込められなかったと私は思います。ヴィオラ様のフィデラ夫人への処罰は甘いと四代公爵家は判断しました。それをヴィオラ様に解らせる為にはメイリー夫人の心内を晒して貰う必要があったのです。そして、フィデラ夫人は必ずエリザさんの娘であるエリアナちゃんに詰め寄ると確信していましたので……」


セリーヌ夫人が申し訳なさそうにエリザに視線を向ける。

フィデラ夫人の本性を晒すために、エリアナを餌にしたと言ったようなものだったからだ。


「エリザさん。スターチス様は今もエリザ様を好いています。婚約破棄しておきながら浮ついた思考に呆れますが、家の為だと勢いで婚約を破棄しフィデラ夫人と結婚しました。ですが、フィデラ夫人が寄り添えば寄り添う程、エリザさんとの日々が思い出されたみたいです」


セリーヌ夫人の言葉に驚いたかもしれないと全員が視線をエリザに向けると、物凄く渋い顔をしていた。


「気持ち悪い……」


エリザの呟きにギルベルトとカールはギョッとしていたが、セリーヌとメイリーだけは笑っていた。


「男は昔の女がいつまでも自分に好意があると勘違いをなさります。我が兄ながら、頭の中に花が咲いているようで、何とも情けない。女は切り替えが早いのです。過去は過去ですわ」


「そうですわね。それで、フィデラ夫人は離縁されます。そして、ヴィオラ様から正式に経緯を公表なさるそうです。少し先にはなりますが、議会でフィデラ夫人の処罰が決まります。フィデラ夫人は無断で王族の宮に侵入したのですから、厳しい処罰となりますわね。

ですからエリザさんの噂を流す人物は消え失せます。安心して下さいね」


エリザは自分の知らないところで、次々と名誉が回復されていく状況に、気持ちが追いつかない。

ギルベルトに視線をやると、にこやかに微笑み「良かったな」そう言葉をかけてくれた。


「後、エリアナちゃんがスタンピードに向かわれて不安でしょうから、状況をお伝えしようと思ってお呼びしたのです」


ギルベルトとエリザは娘の様子が知りたくて、セリーヌとパトリックへと視線を向ける。


「エリアナちゃんの活躍により、スタンピードの原因とされる黒竜を浄化し沈静化させたようです。そして、後から現れたアルーン国の第二王子と聖女を断罪したようよ。内容はまだ公表されませんのでお伝えできません。

ああ、それとエリアナちゃんの側にはアルーン国の王太子殿下もいらっしゃいます。そして、浄化された黒竜は守護竜としてエリアナちゃんの側にいるようですわ」


セリーヌ夫人から伝えられる膨大な情報量を、ギルベルトとエリザはかみ砕きながら必死に受け入れようとしている。


「もう無理だ……」


「ええ、無理ですわね……」


ギルベルトとエリザはエリアナの破天荒ぶりに白旗を揚げたのだった。


「エリアナちゃんはSSランクになったようよ。それになんと言っても、エリアナちゃんが帰って来たら黒竜にも会えますわね!一度間近で見てみたかったのです。楽しみですね」


ニコニコ笑顔のセリーヌを見てギルベルトとエリザは、がっくりと頭を垂れてしまった。


それからコート伯爵夫妻がギルベルト達を励まし、エリアナの功績を褒め讃えた。


エリアナの功績は誰が流したのか、スヴァルト王国を駆け巡った。


エリアナを英雄として讃え始める者が増え始める一方、それを認めない人々もまた増え始めた。


「子爵令嬢如きがいい気になるなよ。私は最高のパートナーを見つけたわ。セドリックなんて目じゃない最高の相手をね」


その声の人物はエイミー・コーエン男爵令嬢。


エイミーはエアハルトとの約束を反故にし、王都から姿を消した。

そして長期休暇が明けても姿を見せる事がなかった。





駐屯地では、エリアナの森の浄化を見守るセドリックがいた。

鑑定をかけながら、森を歩き瘴気を浄化している。

黒竜も見えるようで、エリアナと一緒に瘴気を探している。


セドリックはエイミーに付けていた密偵から、エイミーが王都から姿を消した事について報告を受けていた。


「頻繁に会っていた者の顔の確認は出来ていないのだな?」


密偵に確認をとる。


「はい。ですが異国の者である可能性は高いかと。時折使う言葉を間違っておりました。態と異国人と見せるのでなければ。ですが……」


「そうか……とりあえず、アーノルド殿下にエイミーの行動全てを報告してくれ。そして、イザベル嬢にも密偵を付けるように。今回の事は父上にも報告を。エイミーが何か企んでいる可能性が高い。それならば、狙われるのはリアだろう」


忌々しそうな顔でエイミーの名を口にするセドリック。


「リアは関わらないようにしているのに、なぜあの女は態々自ら関わってくるのだ」


セドリックの深い溜め息とともに囁かれた言葉に答えれる者はいない。


木に凭れながらセドリックはエリアナが浄化をする姿を眺めている。黒竜と一生懸命瘴気を浄化している。


これからどう対応すべきかを考えなければならない。


エリアナの幸せを、笑顔を守る為に自分が策を考えられるだけ練る事にした。


森はエリアナの浄化により澄んだ空気が流れている。

風が木の葉を草花を揺らし、癒しの音色を風が優しく届けていく。


セドリックは凭れた体を起こし、エリアナの側に歩んでいく。

エリアナを何者からも守る決意を固め、黒竜とじゃれ合うエリアナを優しく抱きしめた。


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