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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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60話 あなたは誰?

エリアナは漆黒の闇の中を歩いていた。

歩いても歩いても辿り着かない闇の中を、ひたすら歩き続けていた……。


したも何かに引き寄せられるように、自分の意志とは関係なく足が勝手に動いていく。


前に進んだその時、エリアナは何かの壁に顔からぶつかってしまった。


「ぶっ……いったぁー。っ壁?」


涙がにじむも鼻を押さえ痛みを堪えた。


漆黒の闇の中では目の前にある壁に気がつくはずもない。


エリアナが壁を触るとヒンヤリとしていた。

(ん?ザラザラしている?)


エリアナは壁に手をあてつつ前に抜ける道を探すが、見当たらない。


探し疲れたエリアナは壁を背もたれにし、膝を抱えて座り込む。


「きっとセドは心配しているわね……」


以前長い眠りについた時、目覚めた私を見て泣いていた……。


エリアナは膝を強く抱え込むとスカートに顔を埋めた。眠くもないのに、勝手に意識が落ちていく……。



   貴女にセドリック様は似合わない。


   やらかし女の娘。


   色目を使った卑しい女。


   貧乏令嬢……。


過去の自分を傷付た言葉が何度も繰り返される。


   私は何もしていないわ!


   私は自由でいたい!


必死に反論しても繰り返される言葉は消えてくれない……。


   もう嫌だ……。


   消えたい……。


膝を抱えたままのエリアナの姿が闇に包まれ消えようとしていた。


『…アナ……エリアナっ!!』


エリアナは自分を呼ぶ声に膝から顔をあげた。


『エリアナ!!ごめんね。遅くなったね』


(この声……知ってる……)


闇に包まれた思考は、記憶も消そうとしていた。


『エリアナ・カーマイン子爵令嬢!貴女は貴女を大切にする人を泣かせたいのですか?貴女が消えたらセドリックも死んでしまうよ!』


(セドリック……)


『そうだよ。セドリックだよ!婚約者でしょ?エリアナが消えたら、ヒロインに盗られちゃうよ?良いの?』


(ヒロイン……)


『エイミー・コーエン男爵令嬢。恋ダンのヒロインだよ』


「駄目よ!セドリックは渡さない!」


エイミーの名前に意識を覚醒させたエリアナは、闇の中をキョロキョロ見渡した。


「神様よね?どこにいるの?」


『ごめん。そこには行けないんだ。スタンピードが起こった。そこから出すから、急いで森の奥に行って!』


神様の神力に包まれようとしたが、闇から悲痛な声がした気がした。


「神様、待って!」


エリアナが耳を澄ますと、呻き声が僅かに聞こえる。


声を頼りに壁に手をあて、探し歩く。


だんだんとその声は大きくなり、はっきりと聞こえた。


【痛い……苦しい……】


【嫌だ……】


その見えない何者かは、泣きながら声を漏らしているようだった。


「どうしたの?怪我をしているの?」


【お前…は誰だ……】


苦しげな声で問われたエリアナは自分の名前を伝えた。


「私の名前はエリアナ。エリアナ・カーマインよ。Sランクの冒険者で、スタンピードを抑える為に来たの。

あなたは誰?」


【そうか……我を抑えに来てくれた…のか】


(もしかしたら黒竜?この漆黒の闇をつくっているのも黒竜かしら……。)


「もしかして、あなたは黒竜?アスティ辺境領のダンジョンにいた黒竜なのかしら?」


【……そうだ】


「なぜこんな場所にいるの?ダンジョンからどうやって出たの?」


【……っ】



(苦しくて答えれないのね。この闇を作り出したのが黒竜なら苦しみが元凶となっている可能性が高い)


「苦しくて話せないのよね。どうしたら苦しみから解放できるの?私で出来る事なら、やってみるわ」


【足の……枷っ……うがぁっ】


黒竜の苦痛の悲鳴とともに闇が大きく揺れた。


闇が波打ち、エリアナの脳も揺らす。


『エリアナ。時間がないよ。今の黒竜の魔力の爆発で魔物の強さが跳ね上がったよ!急がないと全滅するよ!』


神様がエリアナに森の状況を説明する。

森ではSランクの魔物が活性化していた。エルランドを先頭に高ランクが戦うも、数も強さも尋常ではないため苦戦を強いられていた。


神様は説明しながらもエリアナに説明をして、漆黒の闇から強制的に意識を引き上げた。


『エリアナは僕のお気に入りだ。思いつくまま動けばいい。僕は見てるし手を貸すからね』


眠りに落ちていたエリアナの瞼がゆっくりと開くと、視線を動かして辺りを確認する。

見慣れたテントと、セドリックの残り香。その香りで、セドリックが自分の側にずっといてくれたことが理解できる。


エリアナは体を起こし脇に置かれたレイピアに手を伸ばすと、スッと立ち上がりレイピアを腰に差した。


「神様いる?」

『繋がってるよ!早くスタンピードに参加して黒竜の側に行ってあげてね。魔物の討伐はその後だからね!』


「……」

『ねっ!』


エリアナは小さくうなずくと、テントを出ようとした。


壁ではなく柔らかい何かにぶつかった。体幹を鍛えているエリアナが体勢を崩す事はないが、相手が倒れた。

視線を下げるとキャシーが目を見開いてエリアナの名前を呼んだ。


『キャシーはね、ずっとエリアナとセドリックのお世話をしていたよ?全て終わったらお礼を言わなきゃね』


エリアナはキャシーに声を掛けると邪魔な髪を纏め、森へと走り出す。


森に向かう途中で、ダリル殿下と側近達が魔物と対峙する姿も目にする。森の奥に行けない者たちが次々に現れる魔物を殲滅していく。


今までで一番の魔物の出現にエリアナは恐れるどころか心が弾んでいた。


(魔物への黒竜の影響を早く消さないと、魔石が濁ってしまうわ)


エリアナは上質な魔石を手に入れて姉の持参金の足しにしようと考えていた。

領地の資金にもなるから、領民にも何か必要な物を補填できる。

いつもお姉様と私を優先するお母様に、新しいドレスを仕立てることができる……。


森の奥へと走りながら、そんな事を考えていた。


『はぁー。エリアナ。魔石のことは後だよ』


「うっ……ごめん」


お姉様やお母様への手土産は後だ。


森の奥に行くに連れ、瘴気が濃くなる。

旅の間に襲われた悪寒も体調の異変も全く感じない。

前方に数種類のギガントモンスターが見えるが、高ランクの冒険者が戦っている。

あちこちに現れる魔物はやはり真っ黒く変貌したSランクの魔物。


エリアナがもう直ぐ瘴気の中心に到着する時に、三度目の魔力の爆発が起きた。


エリアナは衝撃波に吹き飛ばされないように木々の間に隠れた。

大きく揺れる木々は今にも折れそうだった。

風が止み再び先を急ごうとすると前方に全貌を現した黒竜を視界にとらえた。


エリアナは魔術を展開し、足場を作り空中へと駆け上がると空から黒竜の元に急いで走り寄る。


黒竜は真っ黒な息を吐きながら、足元で黒竜に剣を向ける冒険者達を眺めていた。


(攻撃しないの?)


黒竜の瞳に光輝く涙を見つけたエリアナは、側まで来ると黒竜に声をかける。


黒竜の足元からは叫ぶ声が聞こえるが、エリアナは無視した。


「黒竜さん。さっき振りだけど、解るかしら?エリアナよ」


黒竜に声をかけると黒竜はゆっくりと顔をエリアナに向けた。


(やはり黒竜は必死に何かに抗っているのね。)


『エリアナ。黒竜の左足の枷を外さないとこのスタンピードはおさまらない』


エリアナはピョンピョンと階段を降りるように足場を作り黒竜の足元に降りてきた。


「エリアナ!危ない!」

エルランドの声が聞こえ、振り向くと

「エルランドさん。黒竜に攻撃しないで下さい。大丈夫です」


そう告げると、エリアナは黒竜の足に着けられた大きな枷を観察し始めた。


(従属の魔術具?それに魔力放出の術式が組み込まれているわね。)


枷の真ん中にはめ込まれた大きな魔石には、着けられた者の魔力を外に放出される術式が組み込まれていた。


『エリアナ。その魔石に全力で浄化魔法を注いだら、その枷は外れるから』


エリアナは魔石に目一杯浄化魔法を注入していく。

辺りは真っ白に輝き始め、周りの冒険者達は目を細めながらもエリアナの行動を見つめる。


真っ黒の魔石がだんだんと白く輝き始めた。

次の瞬間、魔石が弾けて粉々になると黒竜の姿が霧となって行く。

大きな枷だけが、ドスン、と音を立て地面に落ちた。


「え?」


エリアナは姿が消えた黒竜のいた場所を呆然と眺めた。


(助けられなかったの……?)


『エリアナ!上!』


神様の声に空を見上げると、何かが落ちてきているのを見て咄嗟に落下地点に走り込みその何かを抱きとめた。


「………」


エリアナは腕の中にいる可愛らしい黒い竜に意識を持っていかれた。


「リア!!」


自分を呼ぶ愛しい人の声に直ぐ様反応し、顔をあげるとエリアナの視界はセドリックの胸で塞がれてしまった。


「リア!大丈夫か?」

「心配かけて、ごめんなさい。神様が助けてくれたの。」


エリアナの言葉に、セドリックはギュッと抱きしめる腕を強くした。


「セド、ごめん少し離れてくれる?」


いきなりな冷たい言葉に、セドリックは驚きゆっくりとエリアナを離していく。


エリアナの腕の中にいる物を視界に入れると、セドリックが固まってしまった。


「これは……。黒竜かな」

「多分……」


二人は沈黙していると、離れた場所からエルランドが声を張り上げた。


「抱き合うのは後だ!エリアナには聞きたいことがあるが、それも後にする!残る魔物の殲滅を優先しろっ!」


と、再会を喜ぶ事は後にした。


エリアナは黒竜を抱いたまま残る魔物の殲滅を開始した。


エリアナは魔法も魔術も楽しそうに、思う存分にぶっ放していた。

氷魔法で冒険者達が対峙する魔物の動きを止めたり、怪我をしているの冒険者達にシールドを張り魔物から守ったり……。

SSランクのエルランドよりも活躍してみせた。

セドリックもエリアナの側で魔物の討伐を行う。

息の合った二人はどんどん魔物を殲滅して行った。


辺りを見渡すと、魔物の姿も気配も無くなっていた。


「スタンピードは終ったー!任務完了。駐屯地に戻れ!」


エルランドの声に大歓声があがる。

冒険者達はやりきり晴れ晴れとした顔をしている。

皆で黒い魔石を回収し、駐屯地へと戻って行った。


「エリアナ、良く頑張っ……たな……」


エルランドがエリアナの側に駆け寄り声をかけるが、エリアナが抱きかかえる物を見て、口を開けたまま何か言葉を出そうとしていた。


エルランドも戦うエリアナを見て、黒い何かを抱いているのは見たが戦闘中であったため後回しにしていた。


「黒竜か?」

「多分?」

「多分って…。はぁー。」

「駐屯地には今は連れて行けないな。」


エリアナとエルランドはじっと腕に眠る黒い竜を見つめていた。


『大丈夫だよ?黒竜は本当はとても優しい竜なんだ。足枷を調べたら答えは出る。それに、エリアナは黒竜に会っている。

大丈夫。エリアナが何とかしてくれるよ!』


「え?私?」


エリアナが神様に問いかけるが、返事がない……。


(まさかの丸投げですか……)


「神様が言うなら大丈夫なのか?」


エルランドにも神様の声が聞こえたために、黒竜をどうしたものかと考える。


「神様が大丈夫だと言うなら連れて行くしかないだろうな。エリアナ、頑張って皆を納得させてくれ!」


エルランドはエリアナの背中をバシッと叩き、とりあえず駐屯地へと三人と一匹で帰る事にした。


黒竜に着けられていた足枷をマジックバッグに仕舞い駐屯地で調べて貰う事になった。


(私の周りの人って、私に丸投げする人が多い気がするのは気の所為かしら?)


エリアナはブツブツ文句を言うが、腕に眠る可愛らしい黒竜をどうすれば良いかを考えていた。



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