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モブな私は自由なはず‥‥うるさいですわよ!ヒロインども!!  作者: おかき


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50話 エリザを慕う人

魔術科の授業を終え、馬車の中のエリアナは既に夢の中。


「子爵家には伯爵夫妻が到着されています。伯爵も元気に回復し、お二人に会える事を楽しみにしているようですよ。」


小さな声で、セドリックはアーネットとケイシーに二人の両親の報告をする。

ケイシーは純粋無垢なため、

「お父様は元気になられたのですね!早く会いたいですわ。ね!お姉さま。」


姉アーネットに笑顔で話しかける。

が……。

アーネットは苦笑いしか出来ない。

子爵家に到着したばかりの両親の状況を、学園にいるセドリックがいつ知るのか……。

セドリックの学園での様子を思い出しても解らなかった。


アーネットには「それ」が恐ろしく感じるのに、ケイシーは何も気が付かない。

アーネットはセドリックの裏を知りたくないが、察してしまうため疲れてしまう。


(世の中知らない方が幸せよね……。)


両親に会える事を単純に喜べる妹を、羨ましく思うアーネットだった。


子爵家が近くなり、セドリックがエリアナを起こす。

「リア?大丈夫ですか?玄関に伯爵夫妻が出迎えているのが見えます。」

セドリックの声かけに、エリアナは疲れた思考を叩き起こす。


「ずっと寝てたのね。ごめんなさい。」

エリアナは伯爵夫妻と対面出来るように身形を整える。


子爵家の玄関には、久し振りに顔を見る伯爵夫妻が出迎えてくれていた。

セドリックが先に馬車から降り、エリアナを先に手を添え降ろす。アーネットとケイシーを降ろすと、姉妹二人は走って夫妻に抱きついた。


二人は何も言葉を発する事なく、ただ肩を震わせている。


伯爵夫妻は娘達を抱きしめると、体を離しエリアナへと顔を向けた。


「エリアナ嬢。セドリック殿。お久し振りです。その節は大変お世話になりました。」

当主のカールがエリアナとセドリックに頭を下げる。寄り添う夫人のメイリーも同様に頭を下げた。

アーネットとケイシーも涙を拭い、頭を下げた。


「頭を下げないで下さい!!」

エリアナは慌てて、伯爵夫妻の前に来る。


「お元気そうで安心しました。

今日から暫くは離れにご家族で一緒に過ごして下さい。両親は領地にいる為、不在となり申し訳ありません。

二日後、学園がお休みの日にセリーヌ公爵夫人とのお茶会があります。その時までゆっくりご家族で過ごして下さい。」


エリアナは事前にアーネットに「離れで過ごしたらどうか」と、提案をしていた。

数日前から準備をし家族で過ごせるように整えていた。

食事も別にするように提案をした。

伯爵夫妻も娘達とゆっくり話がしたいだろうと、エリアナが配慮したのだ。


夫妻はエリアナの心配りに感謝し、言葉に甘える事にした。


エリアナとセドリックは、本邸で二人で過ごす事になる。

子爵家は使用人の数が少ない。

爵位が上である伯爵家を存分に饗して欲しいと、使用人達には離れをメインに動いて貰っている。


エリアナは伯爵一家への心配りのつもりだが、セドリックはこれ幸いとエリアナの身支度から食事まで何から何までやりたがった。


エリアナは呆れつつも、セドリックが嬉々として動くのでされるがままで過ごしている。


翌日の学園も魔術科で一日学ぶ。

平原へと向かいエリアナ先生の指導が始まる。

二人一組となり、一人は魔術で攻撃する。もう一人は魔術でシールドを張る。

最初はゆっくり様子を見つつ、次第に動きを早くしていく。

午前中はその訓練をし、魔術攻撃も強めて行く。

午後からはシールドを張りつつ、魔術攻撃をする。

お互い、実戦として練習し合う。

素早く魔術を展開出来るように体に馴染ませるのだ。


「素早くシールドを張ると同事に攻撃もする。紋を幾つも出せるようになれば、ダンジョン攻略も魔法魔術大会も上位に行ける可能性があります。

毎日紋を描き、体に馴染ませて下さい。」


エリアナ先生の言葉で、一日が終わった。


明日は学園がお休みの日だ。




朝から離れが慌ただしい。

早い時間からセリーヌ公爵夫人のお茶会が始まるのだ。

本来お茶会は殆どが午後開催される。

朝からゆっくり支度をするのだが、今日は慌ただしく支度をしている。


エリアナは今日は長い一日になるだろうと、覚悟半分に諦め半分でセドリックに身支度を手伝ってもらう。


今日は「ある場所 ある人」との秘密のお茶会である。

エリアナも普段の装いとは違い、令嬢の姿で現れた。


少し着飾るだけでエリアナは、とんでもない美女に変わる。

伯爵一家はエリアナの姿に見惚れていた。

セドリックは自分が手ずから着飾った美しいエリアナを見て、大変満足している。


今日はハーマン公爵家から大きな二頭引きの馬車を出してもらっている。

子爵家の馬車では全員乗れないのと、「ある場所」に行くに公爵家の馬車の方が都合が良かったのだ。


カーマイン子爵家が「ある場所」に向かう事を知られない方が良いと、セリーヌ夫人が提案してくれた。


 公爵家に向かう道と違う事に伯爵夫妻が気が付いた。

エリアナに視線を向け何かを問うている。

エリアナは小さく頷くのみで夫妻の視線の問いに答えた。


夫妻はエリアナを信頼しているので、娘達には気が付かれないよう平静を保つ。

夫妻は道順から「ある場所」が何処かを何となくだが察したからだ。


馬車は大門をくぐり、また暫く走る。

すると、白亜の邸が見えてきた。


玄関の前に馬車が止まると、そこには王宮侍女が控えていた。

一人の侍女が無言で頭を下げ、全員を邸の中に入るよう動作で頷す。

伯爵夫妻は顔面蒼白な様子で動けずにいる。


そうこの白亜の邸は、王妃様の私的な邸だからだ。


セドリックが前に立ち、中へと入る。

エリアナは夫妻を見やり、一度頷くとセドリックの後ろを歩き始めた。


夫妻も動揺を隠し娘達を連れ、エリアナ達の後ろを歩く。

アーネットとケイシーは両親の様子や周りの雰囲気にどうして良いか解らずただ両親の後を追う。


邸の中を通り抜けると、中庭に出て来た。


セドリックとエリアナが並び立つその前方に伯爵夫妻が視線をやると、そこには王妃様とセリーヌ夫人。

だけではない……。

四大公爵夫人がいたのだ。


伯爵夫妻は膝がガクガク震え、顔色も悪い。

王妃様がこの場にいる事に震えている訳ではない……。


四大公爵夫人が揃っている。

この光景が恐ろしいのだ。


四大公爵夫人はどの催しの場にも、一人か二人しか参加せず絶対に同席はしない。

三人、四人が揃う事は、決してない……。


四大公爵家は王家を排除出来る立場にある。四家が揃えば何かしらを疑われる為、四大公爵家を揃って視界に入れる事は先ずないのだ。


夫妻が震える中、アーネットとケイシーは四大公爵家の存在は認識しているが、夫人達の顔を認識してはいない。

両親が震える姿を見て、この場に恐怖心しかなかった。


前方のお茶会の席から一人の夫人が立ち上がり、こちらに向かって来る。


伯爵夫妻の前で立ち止まると、ふわりと笑顔を向けられた。


「コート伯爵。メイリー夫人。それにご息女のアーネット様にケイシー様。

ようこそおこし下さいました。」


左手をお茶会の席の方に差し出し、席に向かうように促す。

セドリックとエリアナは夫人の隣に並び、伯爵夫妻を席に向かう為に避けて立つ。


夫妻は震える足を運び、テーブルへと近付いた。粗相がないように、ゆっくりと……。


テーブルに近付くと、王妃様と夫人三人が立ち上がり夫妻と娘達を迎えてくれた。


大きな円卓テーブルには沢山のお菓子が並べられている。

全員が席に座り、王宮侍女の淹れる紅茶が出された。


良い香りが漂うが、夫妻の顔色は悪いままだ。


王妃様を挟むように、夫人が一人ずつ左右に座る。

先程夫妻を迎えてくれた夫人は、王妃様の隣に座っていた。

エリアナは夫人の隣に、セドリックはエリアナの隣に座り、残る二人の公爵夫人は伯爵一家を挟む形で座っている。


「さて。先に話を進めなければ、伯爵夫妻の顔色が悪いままとなります。

この場に呼ばれた事は悪い意味を成していないと、説明しなければなりません。」

エリアナの隣の夫人がそう話を始めた。


「伯爵夫妻は私達をご存知でしょうが、ご息女様やエリアナちゃんは夫人達を知らないでしょう?先ずは、自己紹介からしますわね。」

柔らかな声色の夫人ではあるが、身に纏う空気は高位な立場である事を感じる。


「私はセドリックの母であり、ハーマン公爵のセリーヌと申します。」

セリーヌ夫人は、視線のみを下げ挨拶をする。


王妃様の隣に座るもう一人の夫人はアーカート公爵家レイチェル夫人。

そして、伯爵一家を挟む夫人はヨルダン公爵家のパメラ夫人とアクトン公爵家のマーガレット夫人。


アーネットとケイシーは、家名を聞く度に顔色を悪くする。

話には聞いていた四大公爵夫人が揃っているのだ。


アーネットとケイシーの体の震えが止まらない。

夫人達は苦笑いで、姉妹を見つめる。


「私は王妃のヴィオラ。今日集まって貰ったのには、私の不手際で夫妻のご息女にいらぬ負担を追わせた事を謝罪したかったのです。またメイリー夫人には兄のスターチス殿の無責任な行動をする原因の一つとなった私は、夫人にも謝罪をしたかったのです。」


王妃様は少しだけ潤んだ瞳で伯爵一家にお詫びを伝える。


メイリー夫人は兄の愚行のきっかけの一つである王妃様に不快な思いを抱えていた。

でも、相手は王妃。口にも態度にも出さず、胸の奥底にしまい込んでいたのだ。


メイリー夫人が口を開かずにいる様子を見て、セリーヌ夫人が声をかけた。


「メイリー夫人。貴女様が思う事を。抱えていた思いを話して下さい。この場は謝罪と蟠りを解く場として設けたのです。何を言葉にしようと咎は受けません。私達四大公爵家が約束致します。」


セリーヌ夫人がメイリー夫人にそう伝える。

夫であるカールは妻が実家のトリス侯爵家に対し、思う事がある事に気が付いている。だが、妻が話したがらない以上、聞く事は無かった。


「メイリー。胸のうちを話してごらん?」

カールが妻に小さく声をかけた。


「私は……。私は、兄の婚約者であったエリザ様が大好きでした。」


メイリーが俯きながら、震える声で話し始めた。


「歳下の私を妹のように可愛がってくれ、沢山の知識を教えて下さいました。姉と慕い兄と結婚する日を楽しみに過ごして来ました。

エリザ様が姉のミリー様のやらかしに、毎日謝罪をして回り奮闘する姿を私はずっと見てきました。

あの夜会の後も、私はエリザ様に罪は無いと思っています。

何故なら、エリザ様のご両親は早い段階でミリー様を除籍する事を決めていたのです。エリザ様の為に、我がトリス家にそう報告に来られた事を覚えています。」


メイリー夫人は当時を思い出し、悔しさが蘇ったのだろう。

視線をあげて話を始めた。


「除籍の話を止めたのは、トリス侯爵家なのです!

除籍される者を出す家であってはならないと、両親と兄がエリザ様や侯爵夫妻にそう伝え除籍する事を止めたのです!

なのに……。」

メイリー夫人は涙を流すが、拭う事なく話し続ける。


「あの時ミリー様を除籍していば、あの夜会の出来事も無かったはず……。

エリザ様達は必死に家門を守る為に奮闘されていました。

なのに、蓋を開ければ全ての責任を取らされていました。トリス侯爵家は自分達の不手際を隠し、エリザ様に全てを押し付けたのです。

王妃様もそうです。

エリザ様達の辛い立場も、奮闘される姿を知らないのに家門の恥になる。そう兄に助言した。兄はその言葉を聞いて愚行を犯した。

私はトリス侯爵家を許せなかった。

でも、夫が病に倒れ娘達を預ける先はトリス侯爵家しかなかった。

兄も私への謝罪の気持ちもあり、娘達を快く受け入れてくれた。

なのに結果は娘達が虐げられる生活を送るだけでした。」


メイリー夫人が一呼吸する。


「フィデラ夫人が少し前、我が家に来ました。娘達がある事ない事話して回り、トリス侯爵家を貶めている。責任をとれ。

そう伝えに訪れました。

それはそれは大暴れで、ご息女のアーリン様と一緒になり娘達に手をあげようとしました。ですので、我が家の護衛に無理矢理トリス家へと送り返しましたが……。何度も我が家に来るので、それは大変でしたわ。フィデラ夫人が何故そこまで荒れるのか。領地に引き籠もる私達には理解出来ませんでした。ですが、ギルベルト子爵から文が届き、荒れる理由を知りました。」


メイリー夫人は王妃様を感情の無い視線で見つめる。


「私や大好きなエリザ様を傷付ける人はトリス家。そして、王妃様です。

私は、トリス家にも王妃様にも不快な感情しか持てない。私やエリザ様を不幸にする人を好きになるには無理があります。

この気持ちも考えも、コート伯爵家には関係ありません。お咎めは私一人に。」


全てを話し終えたメイリー夫人は、凛とした姿で王妃様を見つめる。


エリアナは始めて母を思ってくれる人の話を聞いた。

(母は誰も彼も見捨てられていた訳じゃなかったのね……。こんなにも、母を慕って思ってくれる人がいたなんて……。)


エリアナは呆然としたまま、涙を流していた。

大好きな母の味方がいた。


それだけで嬉しくて涙が止まらない。

早く母に教えてあげたかった。


でも、メイリー夫人は王妃様に厳しい言葉を伝えた。


見つめ合うメイリー夫人と王妃様をエリアナはじっと見つめていた。


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