表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/56

48話 魔術科への恩返し

今日から暫く魔術科がメインの授業となる。


長期休暇明けから始まるダンジョン攻略の為に、各教科での生徒の実力を測りダンジョンを攻略する為に各々の実力を上げるのだ。


魔術科が終われば、騎士科でも同様の授業が行われる。


エリアナとケイシーが魔術科の教室の扉を開けた瞬間、二人は教室の中に引き込まれた。


「エリアナ様!お願いします。私達の指導をして頂きたいのです!」


そう声をかけてきたのは、マーヤだった。

双子の兄のグランと並んで頭を下げてきた。

驚いて教室の中に視線を向ける。

そこで目にしたのは、魔術科の一学年全員が頭を下げている光景だった。


エリアナは衝撃な光景に固まってしまった。

教室の窓枠に腰掛け、苦笑いをする担任のヨリ先生がいた。


「全員頭を上げろ。エリアナ君が驚いて固まっているぞ!」


窓枠から腰を上げ、ヨリ先生がエリアナに近付いた。

「エリアナ君ー。戻って来いー。」

冗談交じりで声をかけると、エリアナはハッと我に返り周りを見渡した。


「驚き過ぎて思考が止まりました。」

エリアナはホッと息を吐くと、小さくコホンと咳払いをした。


「私は指導する立場にはないのですよ?」

クラスの皆にそう答えるが、

「騎士科ではエリアナ様が半数近くを指導していると、確かな情報を得ています。騎士科で指導しているなら、魔術科でも指導してくれても良いのではないのですか?」


騎士科の話を出され、エリアナがウッとなる。


クラスの皆は、お願いポーズでエリアナに懇願してくる。


隣に立つケイシーが、

「エリアナ、諦めたら?私も指導して欲しいもの。」

ケイシーにまで言われたら断れない。


エリアナは諦めて了承した。


クラスの皆は大はしゃぎだ。


そこに教室の扉が、バーンと大きな音で明け放たれた。

そこに仁王立ちするのは、やはりヴィラ先生だった。


「いつもいつも……煩いんだよっ!ヨリ先生も注意しろっ!」

ヴィラ先生の声が響き渡る……。


ヨリ先生がヴィラ先生に近付きながら、

「まぁまぁ生徒達が騒ぐのも仕方ないのですよ?エリアナ君が指導してくれるとなり、全員大喜びするのは仕方ない事なのです。」


仕方ない。を、繰り返しヴィラ先生を落ち着かせようとした。


が……。


ヴィラ先生が目を見開き、エリアナを見た。

「それは狡すぎる!エリアナ君の指導なら、私も受けたいくらいだ!

よし!二学年合同にしよう!

贔屓は駄目だな。三学年にも声をかけてくる。」


ヴィラ先生の言葉に、ヨリ先生が大慌てで走り去ろうとするヴィラ先生の首根っこを掴んだ。


「良い訳ないでしょうがっ!エリアナ君は生徒の一人です。全学年の指導など駄目に決まっているでしょう!」


ヨリ先生がヴィラ先生を説得するが、二学年の生徒が扉から顔を出し小さく声をかけてきた。


「合同授業を希望します。カーマイン嬢の指導を受けたいです。」


ジーッとエリアナを見つめながら、ポツリと呟いていた。


その生徒の一言で、様子を見に来た二学年の数人も同じ事を口にする。


エリアナはどうして良いのやら、途方に暮れていた。


「エリアナ嬢。私も指導を受けたい。お願い出来るだろうか。」

堂々と口にする人物は、一人しかいない。

アーネスト殿下だった。


殿下の登場に一学年のクラスは小さく黄色い声が聞こえる。


「はぁー。ヨリ先生が許可されるなら、指導役を受けます。」

エリアナは諦めて、ヨリ先生に丸投げした。


丸投げされたヨリ先生はピシリと固まった。

アーネスト殿下からの要望を断るべきだが、断れる訳もなくヨリ先生も諦めた。


「二学年合同の授業にしましょう。」

溜息混じりでそう伝えた。


二学年の生徒がゾロゾロと教室に入って来た。

セドリックが通りすがりにエリアナの頭をポンポンする。

それを見た女性陣から悲鳴のような声が上がった。


エリアナの前をアーネスト殿下と側近の四人が通り過ぎる。


殿下は先に座るセドリックの隣に腰掛けると、側近達はその後ろに並び座る。


30人くらいの生徒の指導をする事になるエリアナは、大きな大きな溜め息を一度吐くと気を取り直し教壇に向かう。


一番興奮しているのは、ヴィラ先生で間違いなかった……。


ヨリ先生がエリアナを教壇へと促す。


エリアナは一段高い教壇に立つと、

「おはようございます……。エリアナ・カーマインです。」

とりあえず、名を名乗り挨拶をする。


一段高い教壇からの光景は異様としか言いようがなかった。

キラキラした生徒達の羨望の眼差しと、ギラついたヴィラ先生の視線。


腹に力を込めて、エリアナが話を始める。

フェリクスに指導していた頃を思い出しながら……。


「魔術と魔法の違いは知っているものとして、端折ります。

魔術は魔力の少ない者が大きな魔法を行使する際も使われます。少ない魔力をいかに効率良く正確に素早く行使出来るか。それが鍵となります。」


エリアナの話に全員頷く。


黒板に円を描き、魔術紋を描く。

「魔力消費を最小限にするため、必要なもの排除したいものを対角線に描き合わせます。そして、細かく記す事でより高度な魔術を使用出来るのです。」


エリアナの説明を皆真剣に聞いている。

(いやいや。習ってますよね?!)

エリアナは皆に突っ込みたいが、我慢する。


生徒達は憧れるエリアナから説明して貰えるだけで嬉しいのだ。

授業で習っていようがどうでも良かった。


「一学年の皆には、針に魔力を通す事を教えました。あれからどうなったのかしら?」

エリアナの問いに答えたのは、マーヤだった。

「教室の端から端の距離は全員クリアーしてます。」

手をあげ答えた。


「その訓練なら、二学年も全員出来るぞ?」

ヴィラ先生がエリアナの目の前で答えた。


「え?」キョトンとするエリアナを放置し


「エリアナ君の指導を聞いた生徒が皆に教えたからな。」

ヴィラ先生が指さす方に視線を向けると、最初にエリアナの指導をお願いした彼だった。


「エリアナ君。一つ良いかな?」

ヴィラ先生がエリアナに問いかけた。


「気になるのが、腰に着けてるマジックポーチなんだ。それ、手作りだよね?」

エリアナはヴィラ先生の言葉に、自分の腰に着けてるマジックポーチに手をあてた。


「そうですが、良く解りましたね。」

エリアナは別に隠していた訳ではなかったのだが。

「え?!作れるの?」

教室中がざわざわし始めた。


「マジックポーチは作れますよ?私も教えて貰い、着けていますから。」

アーネスト殿下が立ち上がり、自分の腰にあるマジックポーチを見せた。


教室中が大騒ぎになる。


「エリアナ様!私達も作りたいです!欲しいです!」

皆の圧にエリアナが押される。

「解りました!ですが、布がありませんから今日は無理ですよ?」


そう伝えたのだが、殿下の側近であるマチアスが手をあげた。


「淑女科に沢山の布があります。取ってきますので少し待ってて頂けますか?」

そう言うと、他の側近三人も立ち上がる。


側近の行動を不思議そうにする殿下に、

「私達もマジックポーチは欲しいのですよ?殿下はいつの間にか持っていますしね?」

マチアスがジト目を殿下に向けた。

殿下は苦笑いをし、手を振る。

側近が離れる事を許可したのだ。


教壇のエリアナは呆然としている。

色々と展開が早い。


「布が届くまでマジックポーチに必要な魔術があれば教えてくれるか?」

ヨリ先生が呆然としたままのエリアナに近付き、声をかけた。


エリアナは溜め息を小さく吐く。

「解りました。」

エリアナは黒板に必要な紋を描いた。


自身の名前を魔力を練りながら紋に刻み込む事から始まる。

他者が使えないようにする為に必要となる。

空間を広げる為の紋。

中の空間は、自分の魔力に適した大きさにする事。

着用時に魔力を自動的に吸い取る紋。

魔力で中を満たさなければ、空間が持たない。


セドリックから贈られたマジックバッグには、内側に魔石が嵌め込まれている。

半永久的な魔石を嵌め込む為、マジックバッグは高額になる。

容量で魔石も変わるので、更に高額になるのだ。


マジックポーチは魔石を使わず、魔術紋を布に直接刻むので布と糸代で済む。


「なぁー。これ、売れるよな?」

ヴィラ先生がヨリ先生にポツリと囁くが、

「ヴィラ先生。マジックポーチは長期休暇明けから我が商会から売りに出されます。お金儲けは他でして下さいね。」


ヴィラ先生とヨリ先生が振り向くと、セドリックがニンマリ笑顔で指摘した。


ヴィラ先生がガックリと肩を落とす。


「魔法クラブばかり支援金が行くから、魔術クラブも何とか資金を調達したかっのだがな……。」


ヴィラ先生の溜め息とともに愚痴を耳にしたエリアナがヴィラ先生に問いかけた。


「平等に資金は分配されないのですか?」


エリアナの問いに苦笑いをしながらヴィラ先生が答えた。


「魔術は人気がないしね。重宝されないんだよ。」


エリアナは魔法も好きだが、魔術の方が面白く思っていた。


「魔術紋や魔力操作が難しいのですから、魔力をぶっ放すだけの魔法より魔術が尊重されるべきな気がしますが……。

まぁ、どちらも大事なんですけどね。」


エリアナの言葉に、ヴィラ先生が泣きそうな顔をする。


「エリアナ君は両方行使出来るから、長所や短所が見える。魔術は地味だ陰湿だと、馬鹿にされる。私は悔しいんだよ……。」


そう話すヴィラ先生をヨリ先生が肩を叩いて励ましている。


エリアナは教室を見回すと、生徒一人一人をしっかり見ていく。


エリアナが記した魔術紋をノートに書き写し、紋を試しにと空中で展開したりと、皆一生懸命に取り組んでいる。


殿下もセドリックと一緒に魔術紋を展開し見せ合っている……。

多分、どちらが美しい紋を描けたかを言い合っている。


その光景を眺めながら、エリアナが口を開く。


「ヨリ先生。私は魔術をもっと広げたい。そして、魔術は素晴らしいのだと魔術の地位を上げたい……。」


ヴィラ先生はエリアナの言葉が嬉しくて、涙をポロリと流した。

「ダンジョン攻略では、魔法科より魔術科が先に踏破出来るように尽力します。」


エリアナはそう誓った。


騎士科も領地経営科も、今は何とか穏やかに過ごしている。


魔術科は最初からエリアナを受け入れ、認めてくれた唯一のクラスメイトだ。


エリアナは恩返しを兼ねて、三学年全員の指導を受け入れた。

お昼の休憩後からは、三学年合同での授業を開始する。


最初は喜ぶ生徒だったが、厳しいエリアナ先生に怯える事になる。


今はとりあえず、布を待つ事にする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ