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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき


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47話 ヒロイン達の日常は?

さてさて。

エリアナがそれなりに学園生活を過ごす中、ヒロインのエイミーや元側近達が学園でどう過ごしているのか。


それを間近で観察し、報告書に纏めるトニー・マーク・ジルの三人は溜め息を吐きながら殿下に渡す書類を作り上げている。




  入学式の次の日の貴族科


貴族科はお互いの家門の関わりを深める為に、週の始めの朝の二時間は三学年合同での授業がある。

教師はいるにはいるのだが、互いの領地の話や特産品の話をしたり領地改革や色んな議論をし合う場の為、教師は座って生徒の様子を伺うだけだ。


この合同教室は貴族科の三学年全ての生徒を入れるので、とても広い。

席も段になっていて、前の席から後ろに向けて階段状になっている。


教室に入った平民の三人が先ず目にしたのは、一番下の席で泣いている令嬢とそれを慰める令息達。

教室ではその様子を興味深げに見る者が多くいた。

ただ、教室の後ろには関わり合いたくないと完全にその光景を無視する令嬢令息もいる。

その後ろの集団は二学年や三学年の生徒がほとんどだった。

下の騒ぎに便乗しているのは、一学年か二学年三学年の下位貴族のように思う。



自分達三人は平民である。

はっきり言うならば、貴族のいざこざに関わりたくないし知りたくもない。

三人が考える事は同じ。


後ろの席に座り、あの光景を完全に無視する令息達の近くに座った。

三人は教科書を広げ関わらない体を示す。


だが…いくら三人が聞きたくない!

知りたくない!


そう思っても、騒がしいその集団の会話は嫌でも耳に入ってしまう。


「あの子爵家の女が殿下を誑かしたのか。殿下がこちらに来ないのは、その理由しかないだろう?」


(((あれは……騎士団長子息のパトリック様か。)))


「イザベル嬢もあの女のせいで、殿下から謹慎を受けたと聞きます。誑かした上に、婚約者のイザベル嬢を排除するなど……。神を恐れぬ所業ですね。」


(((神官長子息のカール様か……。神がいるなら、この騒ぎを鎮めて欲しいよ……。)))


「最近は殿下と会う事すら出来ていないな。父に聞いても、私達が王城に上がる事を拒まれる理由を教えて貰えない。

側近として殿下の側にいなければならないのに。だ……。

それにエイミーがこんなに泣いているのに、殿下にお伝えする事も簡単に出来ないとは……。やはりエイミーが言うように、エリアナ嬢のせいなのだろうか……。」


(((何だと!!何でエリアナ様の名前が出るんだよ!!あいつは……確か、魔法師団長子息の……エアハルト様か?)))


「セドリック様を味方にしてアーノルド殿下も誑かすなんて、騙されてる殿下が可哀想よね。」グスッ


ポツリと何かをエイミーが口にしたが、その言葉は三人の耳に届かなかった。

エイミーの声が聞こえた者は、エリアナの悪い噂話で盛り上がっている……。


三人は貴族科を選んだのは良いが周りは貴族だらけ……。

当主や次期当主の為に知識を身に着けたいと選んだが、選択を間違ったと直ぐに後悔した。


「なぁー。貴族科を選んだのは失敗だったな。当主様の役に立ちたくて選んだけど……。」

ジルが小さな声でマークとトニーに伝えた。

マークとトニーも同じ様に思っていたので、小さく頷いた。

「科目変更しよう。」


三人がひそひそ相談をしていると、ジルの肩を誰かがポンポンと軽く叩いた。


振り向くと、紫色のネクタイをしている彼は三学年の男子生徒だ。

相手が誰かは解らないが、貴族であるのは確かなので三人は席を立つと頭を下げた。


肩を叩いた令息が慌てて声をかけた。


「私は先輩だけど、頭を下げないでくれ。

君達は特待枠の三人だよね?凄く優秀な特待生が入学したと聞いてさ。興味があったから声をかけようとしたら、科目変更って聞こえたから慌てて接触したんだ。」

優しい笑みで、平民である三人に声をかけてくれた。


「授業が始まったら声をかけるから、科目変更の事はまだ決定事項にしないでね!」


令息はジルの肩を再度ポンポンとすると、席に戻って行った。

その令息を目で追っていると、令息の周りの生徒達と目が合った。

三人は慌てて会釈をした。


すると、あちらはヒラヒラと笑顔で手を振ってくれた。

三人は席に座り、下の騒ぎをチラリと見る。

まだ騒いでるようだ……。


早く教師が来てくれるのを三人は祈った。



少し遅れてようやく教師が入って来た。


「今日から合同授業を監督するヴェラニーだ。生徒同士の自己紹介は行わない。それぞれで行うように。

何か質問や問題があれば、聞きに来るように。」


そう話を終えると、教師は窓辺の椅子に座り足を組むと教室を観察するように見回した。


トニー達は知り合いがいない為、どう動こうか話し合おうとしたが……。


ジルの肩に手が置かれた。


「さっき声をかけたでしょう?良かったら、一緒に話をしないかい?」


先程声をかけてくれた三学年の生徒が自分達を誘ってくれた。


三人は心臓がバクバクしている。

(((明らかに高位貴族の集団だよな!大丈夫なのかよ……。俺達……。)))


心の中は不安でいっぱいだ。

だが、怯えたり嫌がる態度は失礼になる。

三人は無理矢理に平然とした態度をとるしかなかった……。


声をかけてくれた三学年の男子生徒の後を付いていくと、先程手を振ってくれた人達の席に来た。


「例の特待生の三人だよ。例の騒ぎで、科目変更しようとしていたからさ。さっき声をかけたんだ。」


二人いる男子生徒も、やはり紫色のネクタイだ。

「そうだよねー。あの劇を見たら嫌にるよね。」

三学年にしては少し幼い顔立ちの生徒がそう口にする。


「君達は貴族の事を学びたくて選択したんだろ?あんなくだらない物を見たら、時間の無駄にしか思えないよね。それに、身分を考えたりしたら関わる事を避けたいだろうし……。」

そう口にしたのは、銀縁の眼鏡をかけ見るからに優秀な雰囲気を纏う生徒だ。


「三人も席に座って、最初はお互いの自己紹介から始めようか。」

声をかけてくれた生徒が座るように促した。

六人がそれぞれ向かい合う形で椅子を並べる。


「私達にこの特待生を引き留める使命が与えられた。科目変更されないように、貴族科の魅力を伝えないとならないね!」

そう軽く冗談を言って場を和ませてくれる。


「よし!使命を遂行するか。」


この三学年の三人との出会いが、トニー達の貴族科での居場所を安全なものにした事をまだ知る事はない。


それを知るのは、殿下に報告書を渡す中で彼等の名前を記した時になる。

殿下とこの三人を繋ぐ橋渡し役にもなるトニー達は、更に忙しい学園生活を送る事になるのだった。



先に先輩方がそれぞれ自己紹介をする。


幼い顔立ちの生徒は

ファルク・ロイド伯爵令息


眼鏡の賢い雰囲気の生徒は

ジェイク・リーデル侯爵令息


最後は声をかけてくれた生徒

ソル・ダーグス侯爵令息


高位貴族のオンパレードに、三人はピシリと固まった。


トニー達は三人の家柄を聞いて、体を強張らせる。

(((関わるには爵位が高過ぎるだろうっ!!)))

緊張で固まるトニー達を三学年の生徒は苦笑いで見ていた。


「緊張するな。は、無理があるよね。

徐々に慣れてくれたら良いからさ。」

トニー達にそれぞれが優しく伝えてくれる。


「それにしても、ヴェラニー先生が出てくるなんてやっぱり例のアレが原因だよな……。」

幼い顔立ちのファルクが話を振る。


「アレが原因しかない。ヴェラニー先生以外、アレ達が騒いだ時に抑え込める爵位を持つ者は学園長しかいないからな。

アレのいる学年の担任もヴェラニー先生に変更されるだろうな。」

銀縁眼鏡のジェイクがそう答える。


トニー達三人は話が見えないが、邪魔にならないように聞き手に回る。


「アレが騒がしいのは毎回だが、今朝は煩いにも程がある。ヴェラニー先生が遅れて来るのもあり得ない事だしね……。

何かある。そう考えた方が良いのかもしれない。」

垂れ目の優しい顔と声色のソルが何やら考えながら話をする。


「ヴェラニー先生が動く事が起きない事を祈ろうか!」

そうソルが言うと、二人が頷いた。


トニー達は話が解らない為、先輩方の会話のやり取りを眺めるしかなかった。

それに気がついた三人は、トニー達を手招きする。

トニー達は上半身を前に出し、顔を恐る恐る近付けた。

男子六人が顔を寄せ合う様は端から見れば滑稽に違いない。


「ヴェラニー先生を君達は知らないだろう?あの先生の家は四大公爵家のヨルダン家なんだ。あの騒ぎの生徒達に対抗出来る家柄になる。」

眼鏡のジェイクが教えてくれる。


「殿下の婚約者は公爵家だ。イザベル嬢は謹慎前はアレと一緒にいたが、謹慎後の行動次第でヴェラニー先生が出る事になる。

四大公爵 対 四大公爵になるから、貴族科は荒れるかもしれないね……。」


(((俺達平民が聞いて良い会話なのかっ?!)))

三人は、手に汗をかきながらも動揺を必死に隠した。

それはきちんと先輩方にも伝わっていた。


高位貴族に対し、不作法を出さないように気を配る特待生に感心していた。


「さて。有意義な時間を過ごしたいから、君達が知りたい事があれば答えるよ。そして、知っておいた方が良い事を私達が教えよう。

私達は平民の生活を知りたいのだ。興味本位ではない。領地の民の暮らしを知る為に必要だし、知る事で民達に何が出来るのか考える事が出来る。

君達の生活を私達に教えて貰いたい。」


ソルが、トニー達に接触してきた一番の理由を伝えた。


領民の為にと、平民である自分達に頼み事をする貴族もいるんだな……。

三人は貴族の中にも心優しい人も多くいる事を知った。


その日は、平民の暮らしを語って終わった。

その都度、貴族と平民についてお互い議論をし合う仲にまでなった。



※※※


ジルの報告書を書く手が止まる。


「報告書を書く時に、いつも思い出す事がある。」

ジルが報告書を眺めながらポツリと呟いた。

「「俺も」」

トニーとマークも声を揃えて返事を返した。


「「「入学式の次の日だよなー。」」」


三人は台詞が揃い、笑い出した。


「先輩方の話と殿下の話が繋がるとは思わなかったよ。」

三人は殿下や側近達との会話も思い出す、


「エアハルト様が殿下に会えないって言ってた事は、側近が入れ替えられていた為だし。魔法師団長が理由を話さないのは、フェリクス様の事があるからだろうし……。」


ジルの話す事をトニーもマークも思い出す。


「絶対に平民が関わって良い事じゃないよなー……。」


三人は大きな溜め息を吐くと、報告書を仕上げる為に黙々とペンを走らせる。


(((明日からイザベル様が復学される。貴族科はどうなって行くのか……。)))


平和に過ごしたい三人だが、それは暫く叶いそうになかった。


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