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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき
第二章 花を咲かせられるモブ令嬢

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23話 鑑定の儀への不安

「皆に学園から手紙が届きましたよ」


セドリックが沢山の手紙の束を抱えて帰ってきた。

黒竜も手紙を抱えてお手伝いをしている。


先日書いた手紙の返事をセドリックが王宮に取りに行ってくれていた。


「沢山あるわね」


アーネットとケイシーにイレーネと、手紙を分けて読み始めた。


エリアナは一つ不思議な手紙?を見つけた。手紙と言うより、書類に近い分厚い封筒があった。

手を伸ばし差出人を確認すると、騎士科のタチアナの名前が記されていた。


封筒を開けると、十枚くらいの書面が出てきた。便箋ではないことに驚いたがエリアナはとりあえず目を通した。


姉のダリアによるエリアナへの魔法攻撃について、長い謝罪が記されていた。


(タチアナが悪いわけではないのに……)


姉のダリアも両親である子爵夫妻も、軽く考えているらしく「ダリアは悪くない」と話しているらしい。

それに、タチアナとエリアナが同じクラスで親しいのだから許して貰えると、甘い考えでいることも書かれていた。


いつかエリアナに対して不敬を働くかもしれない。気をつけて欲しい。

そう記されていた。


そして、婚約者であるグランとダンジョン攻略を成し遂げたと。


「タチアナがダンジョン攻略したみたいよ」


エリアナが皆に教えると、騎士科から参加した全員がダンジョン攻略を成し遂げていたと教えてもらう。


「今日、最後の一組が攻略出来たら、魔術科の一学年が最初の攻略クラスになるわ」


ケイシーもエリアナも在籍するクラスの偉業を喜んだ。


「それにしても、タチアナ様はどうなさるのかしら?姉のダリア様が謹慎中ですし、エリアナへ攻撃を企んだんでしょう?子爵家、大変なんじゃないのかしら。とりあえずの謹慎なわけで、きちんとした処罰は別にあるのよね?」


メレニーがタチアナを心配してエリアナへ話を振った。


「ダリア様もご両親も現状を理解なさっていないみたい。ダリア様は正義感で動いただけで、自分は悪くないと思っているみたいね」


三人はエリアナの話を聞いて黙ってしまう。心配なのは何も罪もないタチアナの事。

家族だからと振り回されるタチアナが不憫すぎる。


「タチアナを見ていると、お母様と重なってしまうのよね……」


お母様とは、エリザの事。

姉の不敬により没落して伯爵家の養子となったエリザ。


「家族って大切ではあるけれど、心が通わないと厄介ね……」


しんみりとなってしまった事に気が付いたエリアナが、話題を変えた。


「キャシーとダリル殿下が学園に通っているそうよ。私の話を聞いてキャシーが学園で暴れたらしいけど」


エリアナはキャシーから手紙が届いていた事を伝え、クスクス笑う。


「キャシー様とは学園で一度会ったくらいで面識がないので、どんな方なのかは分かりませんが。エリアナの事で怒る人ならきっと良い人なのでしょうね」


イレーネの話に、キャシーを知らないのだと気が付いた。


「正義感が強いけれど、優しい女性かな。きっと皆も好きになるはずよ?」


エリアナの言葉に、黙っていたセドリックが爆弾発言をする。


「初めてキャシー嬢に会った時は、キャシー嬢はいらないって言い放ったのは誰でしたかね?リリアーヌ様にもキャシー嬢にも喧嘩を売ってた人は誰でしょうか?」


「なっ!?」


エリアナが忘れていた過去の話を蒸し返したセドリックをジト目で睨む。


アーネット達は話を聞きたいと騒ぎ始めた。

エリアナを囲みあれこれ聞き出す三人と、話を逸らしたいエリアナとの戦いが始まった。


セドリックはソファーに座り仲良くはしゃぐ四人を眺めていた。

別邸に閉じ込められて6日になる。

セドリックは態と嫌な話をエリアナに振ったのだ。アーネット達が食いつくだろう話題を提供し、気晴らしになればと考えたからだった。


「そろそろ学園に通うか、カーマイン子爵家の邸に帰りたいですね……」


【なぜ学園にも行けず、邸にも帰れぬのだ?エリアナを害した王子は捕まったのであろう?】


「父に聞いても、もう暫く我慢しろと。王城もなにやらピリついていていますから。何かがあったのでしょうね」


【神に聞いてみるか?そう言えば、神はどこに行ったのか知っておるか?】


黒竜の言葉に最近神様を見かけていない事に気が付いた。

いたりいなかったりなので、いつも気にしてはいない。


「いつも黒竜の側にいるでしょう?黒竜を隠すために。って!神様がいないのに、黒竜は大丈夫なのですか?魔力で見付かってしまうのでは?」


セドリックが慌てて黒竜を抱き寄せた。


【神が言っておったが、この邸の結界は魔力を通さないらしい。魔力感知で探せぬようになっておる】


黒竜の話を聞き、セドリックはホッと胸をなで下ろした。


【お主もエリアナも優しいな。エリアナの周りの人間は皆優しい魔力で満ちておる】


黒竜は抱きかかえられたまま、エリアナとはしゃぐ三人を見ながら呟いた。


「あんな風に友達と笑い合う事を本当は望んでいるのです。私もエリアナも……。いつか何者にも邪魔をされず穏やかな領地での生活を手に入れてみせます」


【我もそれを望む。エリアナがただ笑い幸せに過ごす傍らにいたいものだ】


男同士、好いた女性の幸せのために頑張る事で話がついた。



エリアナはアーネット達からの質問攻めに合い、疲労困憊となっていた。

神様のお気に入り以外の秘密を公表したので、三人に話す事は沢山あった。


ソファーでぐったりするエリアナと、話を聞いて盛り上がる三人を眺めていると部屋の扉がノックされた。


「どうぞ」


セドリックが返事をすると、入って来たのはハーマン公爵のパトリックだった。


アーネットとケイシーにイレーネは直ぐに立ち上がり礼をとった。


「そのままで構わない。お邪魔するよ」


パトリックはセドリックの座るソファーの対面に腰を下ろした。


「セドリック、明日神殿で鑑定の儀が行われる事になった。支度のために、今日は公爵家に戻るように。それから、エリアナさんは明日は王城に行ってもらう。陛下から話があるそうだ」


エリアナは鑑定の言葉を聞いて、ビクッと肩を揺らした。


(神殿が動き出したのね……聖教様は大丈夫なのかしら)


少し顔色を悪くするエリアナを見て、イレーネが背中を撫でた。


「大丈夫よ。エリアナ」


「そうよ。神殿なんて敵じゃないわよ!」


イレーネとアーネットが慰めてくれるが、不安が消える事はなかった。


「大丈夫。明日の鑑定の儀は四代公爵家も参列する。セドリックを神殿に引き込ませる事は出来ない。必ずエリアナさんの元に戻るように動くから」


パトリックがエリアナにそう告げると、セドリックに再度邸に帰るように伝えていた。


セドリックは不安だろうエリアナの側から離れたくはなかった。

エリアナもセドリックが自分を案じてくれている事に気が付いている。


「セド、大丈夫よ。黒竜も皆もいるから、安心して公爵家に帰って。そして、必ず戻って来てね?」


セドリックがエリアナに視線を向けると、泣くのを我慢して言葉を紡ぐ姿が視界に入る。今すぐにでも慰め、構い倒したい気持ちをセドリックは必死に抑え込んだ。


「商会からパフェの道具と材料を持って来ました。厨房にあるので、いつでも使えますよ」


エリアナの気晴らしになればとセドリックが伝えると、エリアナはバッと立ち上がりイレーネへ声をかけた。


「イレーネ!パフェを作るわよ!」


イレーネを引っ張り立たせると部屋から急いで出て行った。

残されたアーネットケイシーは慌ててエリアナを追いかけた。


【少しばかり薄情ではないか?】


黒竜の言葉にセドリックが首を降る。


「きっとエリアナは不安で泣いています」


セドリックはエリアナが出て行った扉を眺め黒竜に伝えた。


【そうか……ならば、我はエリアナ側におろう】


黒竜はパタパタと飛ぶとエリアナを追いかけ部屋から出て行った。


一人残されたセドリックは、拳を握り怒りの表情を浮かべる。


「腐りきった神殿を潰してやる」


怒りを抑える事なく、セドリックは公爵家へと帰って行った。




イレーネを引き連れ厨房に向かうエリアナの足が止まった。

頬には次々と涙が伝う。


イレーネは何も言わずエリアナをギュッと抱きしめた。


「怖い……セドが帰って来なかったらどうしよう。神殿から出れなくなったら?婚約がなくなったりしないわよね?」


エリアナからは不安な気持ちが次々と溢れ出てくる。


「大丈夫よ!四代公爵家も味方になってくれているでしょう?それに、セドリック様がエリアナを一人にさせるわけないじゃない!」


「でも……何があるかっわか……分からないっ」


不安を拭いきれず涙が止まらない。


パタパタと羽ばたく音が近付くと、エリアナの顔の前に黒竜が止まる。


【大丈夫だ。エリアナ。もしセドリックが捕まったならば、我が神殿を潰そう。我は世界の頂点の竜なのだからな。何をしようと咎められぬ。だから、大丈夫だ】


イレーネがエリアナから離れると、黒竜がエリアナの胸に抱きついた。

黒竜の優しい魔力が契約紋に注がれる。


エリアナは涙を流したまま黒竜をギュッと抱きしめた。


「全てを終わらせたい。いつまで続くの?」


その答えを知る者はいない。

騒がしい日々の終わりを全員が望んでいても、終わらせる術が今は見つからない。


誤字報告ありがとうございます

毎話投稿する度に、今回は大丈夫と思っているのですが……

報告には助けられてばかりです

ありがとうございます❀


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