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モブな私は自由なはず‥‥なのに私の周りはいつもずっと騒がしい  作者: おかき
第二章 花を咲かせられるモブ令嬢

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15話 私を嘘つきだと言うのですね?

リドル宰相は建国祭の説明をすると、王城へ戻られた。

忙しいなか、態々公爵家まで説明をしに来てくれた。

エリアナはまだ目覚めていないと聞いていたけれど、ハーマン公爵家には陛下から直接リドル宰相が話をするように命じられていた。


「エリアナちゃんは国の重要人物扱いになっちゃったわね」


ニッコリ笑顔でエリアナに告げるけれど、エリアナにはその言葉は荷が重い……。


ガックリ項垂れるしかないエリアナの頭をセドリックがポンポンと手を置き慰める。


「リアが重要人物ならば好きなように改革出来ますよ?神殿の聖魔力の治療は高額な治療費を払う者しか受けられません。それに、 伯爵のように魔力を注いではいけない者にまで治療費のために魔力を注ぐ。

それに、エリアナは薬を広く民達に届けたいのでしょう?その事も、リアならなんとでも出来ます」


 初心忘れるべからず


エリアナは前世は薬剤師として働き、転生してからも薬をひろめたいと考えていた。


「忘れてたわ……虹色の花の時も思い出さなかった……」


前世の母や祖母を目標にして薬剤師となった。この世界でも薬草を探して薬を作った事もある。

神様から鑑定のギフトも授かったのに……薬作りが出来ていない事を思い出した。


「いつか、薬屋さんを開きたいかな……」


エリアナがポツリと呟いた言葉をセドリックが拾い上げる。


「リアは薬師として働き、私は会計をしましょう」


楽しげな笑顔のセドリックを見てエリアナも笑顔を向ける。


「今すぐ全てを解決しようとしていたから体が悲鳴をあげたのよね。一つ一つ解決するようにしなきゃいけないわ。そして、悩んだら誰かに相談するわ」


拳をグッと握り、決意表明をする。


「相談相手は私ですからね?」


笑い合う二人を見守っていたけれど、建国祭の予定の話をしなければならない。


「いちゃいちゃするのはそこまでよ。明日からの話をしましょう」


セリーヌ夫人が話をしようとするが、セドリックが止めた。


「母上、リアは目覚めたばかりで食事をしていません。何か口にしてからにして下さい」


「あっ!そうね。ごめんなさいね、エリアナちゃん」


全員でダイニングに向かう。

アーネット、ケイシー、メレニーにも来てもらい全員で移動する。

エリアナとセドリックはパン粥と軽食をとりながら話をする事になった。


建国祭は三日間にわたり開催される。


一日目

両陛下がテラスに立たれ、民達にお言葉を賜わる。一年間、無事に過ごした民達を労う言葉である。

その日、王城勤め以外の貴族は登城は禁止されている。

その一日だけは、民達が王城の中に入る事が許されているから。

全て開放されるわけではないけれど、王城を見学出来ると民達は沢山訪れる。


勿論、街では屋台が出たり舞台で色んな催しをしたりと、お祭りが開催されている。



二日目

王城の一番広い庭園で昼食会が開かれる。

国に貢献した者への報酬を与える場でもある。

沢山の貴族が集まるなか、リドル宰相が貢献者を紹介する。

その時にエリアナの事を公表する。


その夜は、貢献者を主役とした夜会が開催される。

エリアナが頑張らなければならないのはこの日となる。



三日目

各国の大使と伯爵家以上の家門が交流をする。

この日もエリアナは出席するが、二日目の様子次第となる。

転生者と知ったシーベル殿下が二日目でどう動くかで決めるそうだ。



パトリックが説明すると、アーネット達がキョトンとしていた。


「え?エリアナは転生者なの?」


メレニーがポカーンとしたまま口にした。


「隠してて、ごめんなさい。建国祭で公表される前に三人には私から話をしたかったの」


エリアナは申し訳なさそうな表情のまま、これまでの話を掻い摘んで話した。物語の話を抜いて。


「「「そうなのね……」」」


「でも、転生者だと言われた方が納得出来るわ。父の病を治してくれた事もそうだし、魔術もそうよ。転生者は国に利と知を与えし者。そう聞いてたけれど、あの二人を見ていて転生者の過去の話しが嘘じゃないかと思った事もあるわ。エリアナを知っているから、転生者って本物はこんなに素晴らしい人物なんだって今は思えるもの」


アーネットの言葉にケイシーとイレーネもブンブンと頷いて同意をしている。


「ありがとう。これから私のまわりは騒がしくなると思うの。でも、これからも三人とは友達でいたいから……」


話を終えると、アーネット達は建国祭の準備があるからと、エリアナの両親とともに子爵家へと帰って行った。

エリアナは建国祭が終わったら心配をかけている両親とゆっくり過ごす約束もした。


「今日は体を整えしましょう。明日、街にお祭りに行きたいのなら、今日一日を準備に使わないとね」


セリーヌ夫人からの提案はエリアナにとって嬉しい事だった。

建国祭のお祭りは冒険者は街の警護を担当する。一度も祭りを経験した事がなかった。

今日はゆっくり一緒に過ごしたかったセドリックだが、明日のお祭りを楽しみにはしゃぐエリアナを見ると自分の我儘を伝えるのを止めた。


「セドリックはマリーのお店でエリアナちゃんの衣装の確認をしなさい。昨日、仕上がったそうよ」


セドリックはセリーヌ夫人の言葉に機嫌が上がり、嬉々としてマリーのお店へと出かけて行った。


「単純なこと」


我が子の一喜一憂する姿に呆れながらも、満足するセリーヌ夫人。


「私も妻の事なら一喜一憂してしまうが?」


パトリックがセリーヌの腰を抱き、耳元で囁やいた。

長く夫婦として過ごしてはいるが、パトリックは妻を愛しセリーヌも夫を愛している。

二男のリチャードの婚約がなかなか決まらないが、次期当主として相応しい令嬢を迎えたい。

でも、そこに政略的な要素は必要ない。

権力を持ち過ぎるのも諸刃の剣となる。

リチャードには愛し愛される婚約者をと、本人にもきちんと伝えてある。



その日エリアナは一日中磨き上げられていた。


「エリアナ様、少しお痩せなりましたね」


侍女がマッサージをしながらエリアナの姿を見て眉を下げた。


「心配しないで大丈夫よ。これからは気をつけるから」


建国祭の街の話を聞いたり、他愛もない話をして一日は終わった。




黒竜を抱き眠っているエリアナを起こしに来たのはセドリックだった。

街に行く事が楽しみで起こしに来たそうだ。


(子供かっ!)


とは思うけれど、楽しみなのはエリアナも一緒なので急いで支度をして街へと出かける。

質素な服を着てもエリアナの容姿は目立つので、帽子を被り街を歩く。

セドリックと腕を組み、恋人同士のデートを楽しむ。

屋台の串肉を食べ、果実水で喉を潤す。

宝石の欠片で出来たピアスを買いお互いの色を選んで贈りあった。


婚約して二年にもなるのに、恋人同士のデートは初めてだった。


幸せそうにはしゃぐエリアナをセドリックも幸せそうに見ている。

影に隠れた護衛達は、ずっと甘い二人に苦笑いしている。


夜通しお祭りは続くけれど、明日のために早めに帰る事にする。


「楽しかったですか?」


セドリックが息を吐き馬車の座席にもたれたエリアナに問いかけた。


「楽しかった!いつもは警護するから民達しか見ていなかったの。お祭りを肌で感じた事がなかったの。お祭りって、こんなに楽しいものなのね!でも、人も多いから疲れたわ」


エリアナの心からの笑みはセドリックの胸を打ち抜いた。

馬車の中でエリアナはさらに疲れてしまうが、幸せな疲れなので良しとした。


エリアナは明日の支度もあるので、公爵家に滞在する事になっている。公爵家の侍女に身支度をお願いするからだ。

夕食ではエリアナがセリーヌ夫人にお祭りの楽しさを身ぶり手ぶりで伝えた。


「来年は皆で行きましょうね」


セリーヌ夫人と来年の建国祭の街歩きの約束を交わした。


程良く疲れた体はエリアナを眠りに就かせてくれた。




早朝、公爵家の邸は使用人達が忙しく動き回っている。


式典に出る準備に追われていた。

特にエリアナは今日の主役である。侍女達の気合の入り方は半端ない。


早朝から起きての身支度は、それだけで疲れてしまう。


「エリアナ様。お支度整いました」


侍女頭が姿見をエリアナの前に立てた。


髪をセドリックの色であるブルートパーズの宝石が輝く髪留めでハーフアップに結い上げている。

ドレスは黒のワンショルダードレスで、総レース仕上げ。

黒竜が守護する者として、黒のドレスで式典に出席する。

胸元の生地は胸より少し上で肩に回し、黒竜の紋を隠している。

イヤリングもネックレスもブルートパーズが輝いている。


昼の式典のため、以前セドリックが贈ってくれたレースのボレロを侍女が肩にかけてくれた。


黒竜の契約紋は子爵家と公爵家の一部の侍女しか知らされていない。勿論、侍女達には誓約魔法がかけられている。


支度を終え玄関ポーチで待つセドリックの元に向かう。

エリアナを見たセドリックの表情は緩みきっていた。


「綺麗です。リア」


セドリックはエリアナの頬に口付けを落とす。


「セドも格好良いです」


セドリックは白銀のスーツにピンクのカフスを着けていた。


公爵夫妻と一緒に王城に向かう。

賓客を迎える特別な門を使い、人に見られないように王城に入る。


広場には沢山の貴族が集まっていた。

遠い領地の当主達も、建国祭の日は王都に滞在する。


エリアナは王族が使う壇上の脇に控えていた。


目の前には両陛下とアーノルド殿下が立たれている。

アーノルド殿下の隣にはイザベルがいた。


(婚約者だからいるわよね)


ふとイザベルに視線をやると、イザベルもエリアナを見ていた。

睨まれるわけでもなく、ただエリアナを観察するように見ていた。


エリアナは視線を外さずじっと見返すと、イザベルは静かに視線を下げ前を向いた。


広間から王族の入場の声が聞こえた。

両陛下が歩みを進め壇上に現れると、盛大な拍手が聞こえる。


会場が静かになり、陛下の声だけが響いている。


式典が始まった。


エリアナの緊張は最高潮になり、震えが止まらなくなってしまう。


(秘密を公表したらどうなるのかしら?騒がしくなる毎日に、私は耐えれるの?あの大勢の前に出るなんて無理だわっ)


パニックになり始めたエリアナにセドリックが気が付き、エリアナをギュッと抱きしめ深い口付けをする。

息もできず、苦しむエリアナを無視してセドリックはエリアナを堪能した。

最後に力強く抱きしめ、エリアナを開放した。


睨むエリアナにセドリックがニコリと微笑んだ。


「緊張がほぐれましたか?」と……。


(ほぐれたけれども!場所を考えてよねっ!)


周りにいる護衛騎士にも、文官にも、侍女にも。みんなに見られたのだから、悪態をつきたくなるのは仕方がなかった。


公爵家から付き添う侍女頭に化粧を直され、エリアナはセドリックの脇を肘で軽く打った。


「緊張をほぐしてくれたのは感謝するけれど、方法を選んでよねっ」


小声で文句を言ってはみるけど、笑顔のままのセドリックに効果はあるはずがない。


会場の様子に意識を向けると、リドル宰相が貢献者の名前をあげていた。


詩人に天文学者、冒険者に商人……。沢山の職業の人が国に貢献したと陛下から感謝の言葉を賜わる。


「本日の貢献者として紹介すべき方をご紹介します」


リドル宰相の言葉にセドリックがエリアナをエスコートし、王族が並ぶ壇上にセドリックとエリアナが現れた。


王族と同じ場所から出て来た事実に、会場の貴族達は息を呑む。


「特別貢献者……」


国が後ろ盾となる特別貢献者が会場に紹介される。

ここ数十年、特別貢献者はいない。


エリアナを知る者は多く、美しい容姿に魅入る人も多くいた。

また、嫉妬心や敵対心を剥き出しにする者も多くいる。


陛下がセドリックからエリアナのエスコートを引き継ぎ一歩前に出た。


「知っている者も多くいるだろうが、エリアナ・カーマイン子爵令嬢だ。

隣国のスタンピードを鎮静化し、黒竜様から守護されしSSランクの冒険者である。

それと、今王都で頭角を現しておるエスポワール商会のオーナであり、開発担当者である」


陛下の商会に会場がざわつき始めた。

エスポワール商会から出される商品やお店は人気で、衣装はマリー夫人のお店マリアーネ店が取り扱っている。

飲食店は予約が取れないほどの人気店。

それを、貴族の若き令嬢が手がけていたとは誰も思っていなかった。


「それに、皆に伝える事がもう一つある。

エリアナ嬢は転生者である。その知識を使いエスポワール商会を運営している」


その一言で会場中が静寂に包まれた。


陛下の隣で凛として背筋を伸ばす美しき令嬢が、転生者……。


思考が止まるなか、一人の令嬢が声を上げた。


「陛下、本当に転生者なのでしょうか。私も転生者ですが、なぜ今更転生者と名乗りをするのですか?イザベル様と私が転生者と知りつつ、声を上げなかったのはどうしてです?」


エイミーがシーベル殿下を連れて歩み出ると陛下にそう申し上げた。


エイミーの言葉を聞いた貴族達も、今更である事はそうかもしれないと考え始める。


「カーマイン子爵令嬢は、本当に転生者なのですか?カーマイン子爵令嬢は学園では噂が絶えない人ですので……」


その先に続く言葉は、信用ならない。

そう言いたいのだろう。


(カーマイン子爵令嬢と言ったわよね?エリアナではなく、態と家名を出した……。この女は何度も私を、子爵家を貶めようとするのだから、やってもよいわよね)


エリアナの表情がすっと消えた。


「私が転生者だと嘘の申告をしている。そう言いたいのですか?」


冷たい視線をエイミーに向けると同時に冷たい魔力が会場を覆う。


(たかが竜人の王子と婚約したからと、なめた行動をするからよ)


エリアナの激昂を察した者達は、大きなため息を吐いた。


「「馬鹿女はなんて事をしてくれたんだ」」


エリアナの変化に気が付いた者は、エリアナの怒りを止める事は出来ないと諦めた。

ただ、被害が出ない事を祈るだけだった。


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